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ハイエルフの人間学入門  作者: みし
第一章 エルフの王国
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エルフの王国42 南の砦 二日目の巻5

 変な騎士が追い出された後の空間に静寂が訪れます。

 静寂の中で立体図を見ながら明日の復旧計画の検討が続けられます。資材・食糧の分配、職人の手配、それから都への伝令などを王女が順番に差配していきます。それを私が紙で書き留めていきます。エレシアちゃんの方を見ると眠たげな顔をしています。

「エレシアちゃんは、今日は怪我人を沢山見ていましたし疲れているでしょう。そろそろお休みになられたらいかがですか?」

「い……いえ、フレナ様、私もやります」

「寝不足で明日の作業に支障がでたらどうするのでしょうか、明日もしなければならないことが沢山あるのですけど……」

「し……支障が出ないようにします……」

 エレシアちゃんがじっとこっちを見ています。

「賢者殿、エレシアの好きにやらせてやれ。あまり過保護にするのもなんじゃな」

「無理は行けませんよ、エレシアちゃん。疲れたらすぐに休むのです」

 エレシアちゃんは眠い目をこすりつつ、話を聞いています。明日の作業の振り分けが一段落すると地震の発生源の調査についての話です。先程話したように空を飛べば一瞬でたどり付ける距離なのですが、その場合でも数人で行動するしか無いという事です。そもそも調査に割ける人員が数人です。時間があれば空飛ぶ魔法具を用意できるのですが今回はそれほど時間がありません。

「調査に向かうのは私とエレシアちゃん、清掃係から二人でよろしいでしょうか?私の飛行魔法で一度に運べるのは四人程度なので……」

「フ……フレナ様、それで良いと思います」

「まぁ、そうするしかないじゃろ……こちらも一人でも手が欲しいところだが地震の原因も突き止めねばならぬ。賢者殿とエレシアが不在なのはかなり手痛いのじゃが、まぁそもそも砦の住民ではないゆえあまり頼る訳にもいかぬな……それで、こちらから出せるのはこの二人じゃな」

 王女が指図すると二人の清掃係が飛び降りてきます。

「賢者殿、この二人は右のエイニアと左のユリニアじゃ。清掃係一桁番台の手練れぞよ」

 清掃係の一桁番台と言うものが何か知りませんが清掃係の中ではかなり強い様です。

「右のエイニアだ。よろしくな」

「左のユリニアです。よろしくお願いします」

 一見するとどちらも武闘派メイドさんにしか見えません。右のエイニアは亜麻色の髪を短く切りそろえ短いスカートを穿き太ももに短剣を四・五本差しています。左のユリニアは栗色の髪を両横縛りにし長めのスカートを穿き拳に皮のバンドを巻き付けています。清掃係らしく必要な曲線がありません。如何に動きやすさ重視としても服に必要な曲線を排除するのは感心できません。仮にデザインし直す場合には微妙な曲線を沢山入れ込んだ……思考が本題がそれそうなので強引に戻しました。

 しかし右のエイニアとか左のユリニアとかややこすぎて名前を覚えるのが面倒すぎます。

「それでは右のと左ので呼べば良いですね」

「賢者様それは雑」「いい加減すぎます」

 二人から抗議を受けましたが、ややこしい名前を付けてる方が問題だと思います。

「賢者殿、二人の腕を見なくてよいのか?」

「じゃあやろうぜ」「お手合わせお願いします」

「上の階に訓練部屋があったな。そこで一度手合わせするといいぞ」

「いくぜ」「分かりました」

 右と左が天井に飛び上がり。ふわっと居なくなります。

 いつの間にか二人と戦う段取りになっていました。あまりに速い展開にエレシアちゃんが啞然としてみています。

「フ……フレナ様頑張って……」

 エレシアちゃんが私の耳元でささやきます。ここでささやくのは別の言葉な気がします。頑張ってと言われたら頑張らないと行けなくなります。

 私は困惑したまま塔の階段を昇ります。仕方が無いので理気術がどういうモノか知る機会だと割り切ることにします。

 この部屋より上の階には清掃係が控える部屋がいくつかあり、そこには訓練するための部屋もあるそうです。今その中に連れられてきました。中は大きく塔一階を丸々使い、中央に広い円形のマットが引かれて四方が灯りで灯されています。壁にはイロイロな武器がぶら下げてあります。部屋は広いですがそれほど高くなく軽く跳躍するだけで天井につきそうな感じです。

 それから複数の気配を下から感じました……正確には気配を完全に遮断していると言うべきでしょうか。他の清掃係達が下から様子を見ているかも知れません。

 円形のマットの中央で私と二人の清掃係が並び立ちます。円形のマットの周囲は結界が張り巡らされており内部の衝撃を吸収する仕組みになっているようです。

 訓練場の中央を中心として手前に私、奥にユリニアとエイニアが対峙します。手前右側に左のユリニア。左側に右のエイニアが立っています。

 このくだりを書いていうちにどちらが右か左かよく分からなくなってきましたが、その辺りはあまり気にしなくても良いかと思います。

「妾がこの手合わせの判定しよう」

 王女様とエレシアちゃんもいつの間にか部屋の中にやってきてマットの外側に立っています。

「じゃあ、いくぞ」「手合わせよろしくお願いします」

 ユリニアとエイニアが挨拶します。エイニアが若干前方に立ち、ユリニアが少し引き気味に立っています。ユリニアは冒険者ギルドで言うところの拳闘士に相当し、エイニアは恐らく斥候(スカウト)ではないかと予測を立ててみます。ユリニアは素手による近接攻撃、エイニアは飛び道具による中距離攻撃及び奇襲攻撃が得意だと思われます。

 まずエイニアが威嚇を行いその隙にユイニアが接近。ユイニアと格闘している間にエイニアが背後に周り奇襲する。このような連携プレーで攻撃を仕掛けてくるのでは無いでしょうか。それならとこちらもあらかじめ作戦を立てておくことにします。

 右が左で左で右で……いちいち考えていたら面倒になってきたので両方一度に倒してしまえば問題ないでしょう。

 その前に少し踊らせておかないといけません。理気術がどういうモノか把握しなければなりません……と言う訳で相手が理気術を使う前に倒してしまっては行けないことだけは注意しないと行けないと確認しておきます。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「フ……フレナ様、武器はどうしますか?」

「賢者殿は素手で戦われるのか?魔法剣士だからして剣をつかうかと思っていたぞ」

 別に素手でも良いのですが……取りあえず格好を付けておく必要は有りそうな感じです。壁を見回し、その辺に掲げてある適当な剣をつかみました。

「……この剣、やたら重くありませんか?」

 握った剣は、重量のバランスがかなり悪い剣で、両手で持たないと上手く持ち上げられません。持ち上げたとしても重心の位置がおかしく上手く使いこなせるしません。そもそもこれは巨人用の剣でしょうか……最悪杖か盾代わりにはなりそうなので取りあえずこの剣を使うことにしました。

「賢者殿は、その大剣を使いこなすと言うのか。先代が使えこなせなかったと言う伝説な両手剣を……」

 それを見て王女が驚いています。

 そのまま剣を戻すと何か格好付かない気がしてきたのでこのまま戦うことにします。それはともかく、巨人の剣が訓練場に置いてあるのか問い詰めてみたいです。

 それからルールについて取り決められました。手合わせの時間はろうそくが燃え尽きるまで、先に参ったと言わせるか戦闘不能と判定させた方が勝ち。ろうそくが燃え尽きるまでに決着が付かなければ清掃係の勝ち。私と清掃係は一対二で戦う。直接的な魔法攻撃の禁止、殺傷力の高い攻撃の禁止と言った事が事前に決められました。

「このルール、私に不利ではないでしょうか?」

「賢者殿は強すぎるからこれぐらいはハンデにしてくれないと勝負にならないと思うがどうじゃ。それに訓練場の結界は妾が維持しておるゆえ普段の手合わせでは十分じゃが賢者殿に本気を出されては破壊されてしまいかねないのでな……結界を壊す規模の攻撃は一律禁止にさせてもらうぞ」

「まぁ、それはそうですけど……」

 確かに全力を出さずも簡単に破壊できそうな結界なので、結界も壊さない様に戦わないと行けないようです。元素魔法を使うとこの結界を壊しかねないので元素魔法の出番は今回はなさそうです。最悪最後の手段としては使えるでしょうが結界の強度を確認しながら威力を調節するに時間が不足しています。すぐ対応できるのは付与魔術と剣術を組み合わせによて戦うことしかなさそうです。

 それでは大剣を抱えて戦闘準備を始めることにします。しかし流石にこの剣は重すぎてキツいです。飛行魔法を応用して大剣を浮かせてみました。魔法がかかると剣がふわっと浮きます……。とは言いましても剣が浮いただけで動かしづらいのは全く変わっていせん。浮いた剣を担いで訓練場の中央まで進み。二人の前に立ちはだかります。

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