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祓魔師の少年(3)

「さぁ……お前の中の悪魔を洗い出してやる」


 少年は刀を構え、こちらを余裕の表情で見ている。突然現れ、いきなり攻撃して来た少年に雅斗は驚きを隠せない顔をしている。


「だ、誰だ⁉︎お前!」


  雅斗の訴えに、少年は刀をゆっくりと下ろし再び口を開く。


「この付近の学校で先日、大きな魔力を感じた。そして今、その魔力と同じ力を感じた。更にその手!それは悪魔だ!何よりの証拠!ここ最近の騒動はお前が原因だ!!」

「何を言ってんだ……」

「僕は祓魔師。悪魔を退治する者さ」

「いや、ちょっと……」

「さぁ……覚悟しろ!!」


  少年は雅斗の話を一切聞かず、雅斗へと刀を向け、猛スピードで立ち向かってくる。そんな少年に雅斗は困惑する。


「話を聞け!」

(あいつに何を言っても無駄だ!倒すしかなき!刀を出せ!)

「分かった!」


  雅斗は悪魔の手を戻し、右手から刀を作り出し、両手で力強く握る。。


「行くぞ!」


  雅斗の声に少年も刀を力強く握る。そして今、2人の力がぶつかる。




  場所は変わり、港の廃工場の中。錆びたドラム缶が山のように積まれており、鉄骨が無造作に転がっており、ガラスも破られており、中はスプレー缶で落書きされた跡がそこら中にある。聞こえてくる音は、鳥達の鳴き声と船の汽笛が響き渡る。そこにロングコートの少年と一緒にいた女性が1人、石像のように無表情で棒立ちしている。

  するとドラム缶の中から突如、三つ目の四足歩行の悪魔獣が雄叫びをあげ、棒立ちの女に飛びかかる。


「グシャァァァァ!!!」


  飛びかかる魔獣に対し、女は冷静に右手を魔獣目掛けかざす。だが魔獣は飛びかかるの辞めず、女の手に当たろうとした瞬間、ガラスに思いっきり当たるような鈍い音と共に、そこにガラスがあるかのように女の手の先に魔獣がぶつかり、ずり落ちる。そして地面に落ちた魔獣目掛けて再び右手を傾ける。すると倒れた魔獣の囲むように魔法陣が現れた。


消霊天陣(しょうれいてんじん)


  顔色を一切変えずに呪文を唱え、握り潰すように手を閉じた。すると魔法陣に囲まれた魔獣は頭から徐々に普通のサラリーマンに戻った。


「ちっ……雑魚か」


  そして魔獣は完全に消え、魔法陣も消え去った。そして何事なかったかのようにサラリーマンを肩に抱き、廃工場から立ち去った。そして青空を見てボソッと言い放つ。


「あっちに私が行けばよかったな……」



  場所は戻り、山の上の公園。2人は歯をくいしばり、刀と刀の鍔迫り合いを繰り広げている。刀が擦れる音が公園に響く。雅斗の方が優勢で押している。だが少年は雅斗の刀を一度振り払い、後ろへと大きく一歩下がる。そして再び飛びかかる様に両手で刀を振り下ろす。雅斗も対抗する様に刀を振り上げ、ぶつけ合う。


「話を聞け!」

「悪魔の話なんぞ聞くか!!」

「クソったれが!」


  2人はお互いの刀を何度も何度もぶつけ合い、その度に刀が吹き飛ばされそうな程の力が身体全体にのし掛かる。だが2人の少年は、ひたすら耐え刀を離さずにぶつけ合う。そして何度かのぶつけ合いの末、2人は1度一定の距離をとった。雅斗は息が上がっており、汗を多少流れている。少年は未だに平気そうな顔をしている。


(バテるの早すぎだろ)

「これでも……病人なんだぞ……」


  病人でもあり、先ほどの修行で体力が無いのもあり体力の減りが早い雅斗。


  「ふっ……中々やるじゃないか。だが」


  左手に力を込め始める少年。そして左手を地面に勢いよく、叩きつける。


「何をする気だ……」

(下を見ろ!)


  悪霊の声を元に下を見ると、魔法陣が貼られていた。


「何⁉︎」

(この魔法陣から出ろ!)


  魔法陣から飛び去るように出ると、少年が急速に接近して左手を構えたまま、こちらに向けてジャンプして来た。


「喰らえ!!魔法陣の力を!」


  左手を突き出す少年、雅斗は刀を持ったみ右手で防御の構えをとった。少年の左手は雅斗の右手首に軽く触れ、2人は地面に着地下を。すると雅斗の右手の肘から魔法陣がはめられた。


「魔法陣が俺の腕に⁉︎」

戦錠轟陣(せんじょうごうじん)


  少年は指をパチンと鳴らし、呪文を唱えると、雅斗の右手が急に石像のように動かなくなり、使い物にならなくなった。


「う、腕が!!」

(奴の能力か……左手はまだ動かせるか)

「あぁ……なんとかな」


  そこに刀をしまった少年がゆっくり近づく。


「俺が解除しない限り、その魔法陣は取れず、手を動かす事は出来ない」

「だから、俺は何もしてないって言ってるだろ!」


  今度は右手を翳し、右手から赤色の小さな魔法陣が現れた。


「さぁ……覚悟しろ。お前の中の悪魔を消してやる!」

(何とかしろ!もし、俺がお前の中から消えたらお前は死ぬんだぞ!!)

「はぁ⁉︎ふざけんじゃねぇぞ!!」


  雅斗は左手から刀を出そうとするが、なぜか出て来ない。雅斗の顔からは焦りが見えて来た。


「で、出ない!」

(落ち着け!落ち着いてだせ!)

「もう遅い!!」


  少年は雅斗の腹目掛けて、右手を突き出す。雅斗は素早く左に一回転し、左手だけで立ち上がり、森へと走って逃げて行った。


「無駄なことを……」


  少年も素早く走って雅斗を追いかけた。入り組んだ森の中、草を踏む音が聞こえる中、右手を抑えながら逃げる雅斗。大きな緑の木の下で、一旦座り込む。


(落ち着いて、刀を出すんだ。今の状態じゃ悪魔の手を出してる時間はない!)

「分かった……」


  1度深呼吸して、左手の先に力を込める。すると木の上から葉っぱが何枚か落ちて来た。上を覗くと少年が音も無く、木の上から急速で雅斗へ刀を振りかざす。


「や、やば……」


  危険を感じた雅斗、当たる直前に雅斗の目が赤く光り、左手から刀を即座に出して少年の攻撃を受け流した。その直後少年に向けて一撃、刀を振りあげた。あまりの素早さに少年は対応出来ず、攻撃は刀に当たり、少年の刀は別の木に突き刺さり、少年自身も攻撃で身体が吹き飛ばされ、その木に身体を勢いよくぶつかり身体全体にダメージを負った。


「くっ……何が、起きた。今の一瞬で……」


  今の攻撃で、少年にかなりのダメージを与えた。自分の心臓部分を抑え、痛みを耐えている。雅斗は一瞬だけだが悪霊が意識を乗っ取り少年に反撃したが、それだけでもかなりの体力を使ってしまい、倒れてしまった。


(一瞬だけでも……こんなに体力を使うとは……)

「助かったが、動ける力がもうない……」


  倒れる雅斗を見るなり、少年は片膝に手を置きながら立ち上がり、倒れた雅斗の目の前に立つ。そして左手の肘と両足の膝に魔法陣を張る。抵抗したいが体力が殆どなく、ただ魔法陣を張られるのを見てるだけだった。


「ここまですればもう動けないだろう!」

「……もう動けねぇよ……」


  少年は軽い笑みをあげ、再び右手を突き出し、手の先から赤い魔法陣が出て来た。


(ちっ……ここまでか……)


  雅斗も潔く諦めて、目を瞑る。


「悪魔よ消え去れ!!」


  少年が魔法陣を雅斗の腹目掛けて、突き出した瞬間、何故か急に手を止め周りを見始めた。


「⁉︎……何だ。無数の魔力が感じる……」


  森の奥から、赤く輝く目が360度、どの方向からも確認できる。そしてざわざわと風の音と共に話声が聞こえてくる。その異変に雅斗も気づき始める。


「この気配は一体……」

(低級悪魔達が先日の事件を嗅ぎ周り、ここら辺に来たって事か)

「低級悪魔?」

(群れで行動する奴も多いが、俺が倒したのはそいつらの親玉って事か)


  森の奥に潜む悪魔達は、どれも牙が生えており、獣のような姿をしている。少年は刀を持ち、悪魔達へ大声で宣告する。


「こいつらの仲間か。邪魔をするなら貴様から成敗してくれる……来い!」


  そして潜んでいた無数の悪魔達が一斉に奇声をあげながら、少年へ飛び掛かる。その数約30体ほど、だが全体的に小型で1mもない、狼型の魔獣だ。


「貴様全員、封印してやる」


  低い声で力強く言い、飛び掛かる悪魔達に立ち向かう。

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