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祓魔師の少年

  目を開けるとそこは病院のベッドの上で横たわっていた雅斗。包帯とかは巻かれておらず、体に痛みなどは感じない。部屋には誰もおらず、静かな部屋だ。

  窓から見える空は雲1つない青空が広がる。雅斗は学校での事を思い出そうとする。


「俺は……うっ……」


  思い出そうとすると頭痛が襲い掛かってくる。唯一の記憶は悪魔の口から放出したエネルギー攻撃が当たる直前までは記憶にあるが、それ以上が思い出せない。


(ようやくお目覚めか小僧?遅かったじゃねぇか)


  悪霊が待ってたと言わんばかりの様子で話しかけて来た。


「どれくらい寝てたんだ……」

(ざっと2日ほどだな)

「そんなにもか……って⁉︎宮下先生は?あの悪魔は?」

(悪魔は俺がお前の意識を乗っ取り倒した。そして宮下という男も悪魔と共に消えた)

「……」


  そして雅斗が悪霊が戦った時の話を聞いて分かった事は、悪魔の攻撃が当たる直前に雅斗の意識を乗っ取り、悪霊の意識として雅斗の身体を動かしていた。左手も悪霊の能力で作り出した力である。そして悪魔の死体を粒子状にして吸収した理由は、力を吸収しパワーアップする為らしい。そして意識を乗っ取るのは悪霊自体にも大きな負担がある。


「なるほど……結局と俺自身は負けたって訳か。それに2度助けてもらって……」

(ふっ……期待した俺が馬鹿だった)


  悪魔の力を手に入れて生き返ったが、負けて悪霊の意識で勝った。悔しい思いでいっぱいだ。そう思った雅斗だが特に気にかけていた事は


「自分の手で美呼も宮下先生も助けれなかったのが、1番悔しい」

  (悪魔は霊体に憑依する事が出来る。1度憑依されたら、悪魔自ら離れない限り、憑依されたままとなる)

「くっ……」

(奴は、宮下という奴に憑依した時、奴の記憶に干渉したはず。それでお前とあの女との記憶を見たんだろう。それで変装し、お前に近づき、そして殺す……悪魔ならそうゆう事する事が多い)

「俺がちゃんとしていれば……」


  悔しい……先生は自分が殺したのも同然だ。その罪悪感で今にも胸が張り裂けそうな気分だ。

 


「そういえば、美呼はどうなったんだ……」

(あの女か?あいつなら無事だ)

「よかった。俺は、美呼の家で住まわせて貰ってるんだ……俺が小学生の頃、親が2人とも急に居なくなってな、それでいつも遊んでくれてた美呼が親に頼んで住まわせて貰ってるんだ。だから、絶対に守らなきゃいけないんだ。俺に生きる場所を与えてくれた美呼とその家族を……」

(俺にはよく分からんな)

「悪霊には多分分からんだろうな」

(ちっ……うるせぇよ)


  この時、悪霊は思った。人間って変な生物だな、と……

  暗く虚ろな表情の雅斗はただ窓を眺めるだけだった。そんな雅斗をみた悪霊は


「お前、強くなりたいか……」


 ボソッと小声で言った。








  その頃美呼は、私服で病院へと向かおうと支度をしていた。その時、部屋のテレビでは


「先日起きた高校爆発事件のニュースです。当時先生達は職員室で全員気絶しており、生徒達も同じく職員室で気絶しておりました。そした爆発地点と思われる場所で血まみれで気絶した男子生徒と女子生徒が発見されました。警察は何者かの爆発テロではないか調べている模様」


  今回の出来事は全国的ニュースで流れた。幸いにも実名などは公表されなかった。

  着替えを終えて、テレビの電源を消し、外へと出る。そして病院へと向かう。繁華街の道を歩く中、美呼は下を向きながら、暗い顔をしている。何か考えているようだ。


(あの時の雅斗、とても怖かった……)


  美呼は学校で見た雅斗の姿が忘れられない。悪魔の左手、赤い目、黒い刀、そしてあの恐ろしい顔……まるで悪魔のような笑っていた顔が脳裏に焼き付いている。

  考えごとをして歩いていた為、前方は全く見えてなかった。すると人にぶつかってしまった。少しよろけてしまった。


「ご、ごめんなさい!」

「いや、僕は大丈夫だ。君は大丈夫か?」


  その人物は黒いロングコートを着て、背も雅斗と同じくらいだ。顔も高校生くらいの風貌だ。


「私は全然大丈夫です。よそ見してたもので……本当にすみません!」


  美呼は頭を深く下げて立ち去ろうとした瞬間


「ちょっと聞きたい事がある」

「はい?」

「先日にこの付近の学校で起こった謎の爆発事件の事だが、何か知らないか?」


  まさか、私の事を知っている?と不安に思う美呼。もし知っていると答えたら、何されるか分からないし、ちょっと怪しそうな格好なので、ここは嘘でやり過ごそうと美呼は思った。


「私は何も……」

「そうか……ありがとう」


  軽くお礼したロングコートの少年。美呼は再び歩き出した時、ロングコートの男は、後ろを向いたまま言い放つ。


「君は悪魔を信じるか」

「⁉︎」


  ゆっくりと語りかける男。美呼は慌てて振り向いたが、男は居なくなっていた。音もなく姿を消したのであった。

  そしてロングコートの男は高い空の上で青く光っている魔法陣の上に立ち、コートを風に靡かせて遠くを見つめる。


(あの女、何か知っていたな……)


  美呼とぶつかった瞬間、魔術で美呼の記憶を一瞬だけ覗いた。その中で悪魔を倒した雅斗の姿が見えた。血まみれで悪魔のように笑っている姿。


(こいつが、あの大きな魔力を解放した人間か……この残忍な姿、悪に満ちた顔、こいつが犯人に違いない!)


  その姿を脳裏に焼き付け、雅斗を悪魔と確信し、ロングコートの少年はニヤリと笑い、どこかへとジャンプして新たに出現した魔法陣の中へと吸い込まれるように消えていった。

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