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悪魔となった少年

 

  チリや砂が舞い散り、悪魔の正面は全く見えず、1m先も見えない状態だ。


「手こずらせやがって」


  息切れしている声で喋る悪魔。美呼のいる教室へ行こう後ろを向き歩き出す。


「おい……誰が美呼の元へ行って良いって言ったか?」

「何?あの攻撃をまともに食らったはず……」


  煙の向こうからは出て来たのは、左手が突き出ている。その左手全体は黒い鱗の様なもので覆われ、腕はライオンの様な鋭い爪が生えている。それは赤く輝いた目をした雅斗とその右手だった。無表情でいる姿はどこか先程とは違う雰囲気を醸し出している…


「悪魔の手……それに巨大な魔力を感じる……」


  始めて見た悪魔の焦った顔、そしてジリジリ1歩、2歩と悪魔に近づく俺。さっきまで両手で持っていた刀は、右手のみで握られており、黒いオーラが刀全体を包んでいる。3歩目を踏もうとした瞬間、悪魔の視界から俺は消えた。


「⁉︎」


  消えたのもつかの間、目の前に俺が現れ、右手で握った刀を先程とは比べ物にならないスピードで右斜めに斬り上げだ。まさに一瞬の出来事だ。攻撃はかなり奥まで届き、おびただしい量の血が腹から吹き出て、悪魔は口から血が吐いた。


「グワッ……な……」


  吹き出した血は俺の服や身体にも飛び散る。俺は一切表情を変えず、悪魔の手となった左手を今斬った悪魔の腹目掛けて、猛スピードで攻撃を仕掛ける。

  悪魔は恐れをなした顔で、すぐさま厚い右手の甲で俺の攻撃を本能的に防御しようとする。だが俺のライオンの様な左爪が、悪魔の右手を甲で肉を強く握った音と共に貫いた。


「っーーーー!!!!」


  悪魔は声にならない声で嘆き、悲痛な痛みを歯を思いっきり噛み締め、必死に堪える。俺は痛みを堪える悪魔をよそに、左腕をゆっくりと回転させながら抜いた。手からは血は流れ落ち、地面は血の海と化す。悪魔は更に悲痛な顔を上げる反面、快感に満ちたような微笑みを上げ、右手を天に掲げる。


「きええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


  俺の声とは思えない激しく悪霊の声が混ざった轟音の叫び声を上げながら、悪魔の右手首へ目掛けて目にも見えない速さで剣を振り落とす。肉を切り裂くように手首を斬り落とし、地面に落ちた。悪魔の右腕から更に血が出てきた。


「く……そ……これでも……喰らえ!」


  痛みに必死に耐える悪魔、少しでも抵抗をしようと左手から衝撃波を出す為手を突き出したと同時に俺の左手が、悪魔の左手を握った。衝撃波は発生しなかった。そして必死に離そうと努力しようするが一切離せず、あまりの痛さに膝をついた。その時、俺の顔が目の前に見えたようだ。

  その顔は、まさに悪魔のような微笑みを浮かべ、両端の歯が針のように尖っていた。悪魔は背筋が凍るような感覚が襲い、身体が震え始める。それを見た俺は、そのままの表情で左手の力を入れ始めた。


「や……やめろ……」

「うおおおぉぉぉ!!!」


  悪魔の弱々しくなる声に耳を一切傾けず、段々握る力が強くなる俺の左手。そして……


「はぁぁぁ!!!!」


  俺は気合いと共に体の全部の力を左手に集中し、握られた悪魔の左手はリンゴのように粉砕した。風船が破裂した音が響き渡り、肉片が飛び散った。


「ーーーーっ!!!」


  悪魔は仰け反り、数メートル後ろへと引き下り、膝をつく。もう戦意もなくなり、自分の無くなった手をただ呆然と見つめるしかなかった。俺の制服は白い部分を探す方が困難なくらい真っ赤に染り、快感に満たされた様な笑みを浮かべている。

  呆然と下を向いている悪魔、すると人影が見えた。その瞬間左手で髪を掴まれ、俺の顔まで引っ張った。そして──


「お前が言ってた絶望ってこうゆう事だよな……じわじわとゆっくりと死に向っている。低級悪魔が調子に乗るんじゃねぇよ」

「ひっ……お前、何者だ!」


  段々雅斗の声から悪霊の声へと変わり、刀を悪魔の首元まで持っていく。


「俺は……悪魔喰らいだ」

「や、やめ……」


  声は完全に悪霊の声となり、おもむろに剣振りかざし、悪魔の首を豆腐を切る様に音もなく左に一振りで斬った。首筋に1つの赤い線が描かれ、首がゆっくりと地面へとボールを地面に落とした様に転がり落ち、身体はゆっくりと地面へと倒れた。首からは噴水の様に血が吹き出て来た。血は俺の顔に掛かり、廊下に飛び散った。先程の戦いの血もあり廊下5・6メートル付近は血の海と化した。

  美呼の意識が少し戻り、微かに目を開いて廊下を見ると真っ赤な血に染まった俺と首がなくボロボロになった悪魔の姿が目に焼き付いた。


「ま……雅斗……」


  そのまま美呼は1粒の涙が流れ落ち、再び意識を失った。

  俺は悪魔の死体に、左手を翳した。すると死体、首、斬った手などは黒い粒子状になり、左手への手の甲の中に吸収されて行き、死体は消えて無くなった。

  そして静かな風の音だけが破壊された廊下に響き渡り、先程の戦いの激しさを物語る。血まみれの廊下、無造作に散らかっている椅子と机、粉々に割れた窓ガラス、外側の壁が破壊された廊下。全てほんの数分に起きた出来事である。

  俺は急に魂が抜けた様に膝をついて、仰向けとなり意識を失った。それと同時に、左手は元どおりの人間の手に戻り、剣も消滅した。それから1時間もしない内に、無数のパトカーや救急車などがサイレンを鳴らし学校に到着した。



  場所は変わりとある街の繁華街──黒いロングコートで身に纏った2人の男女が、歩いている。女の方はショートヘアーで男の方より5センチほど背が低い。男の方は跳ねた髪の毛でロングコートのポケットに手を突っ込んでいる。

  すると、とある方向を見て女が言い放った。


「今、人間の体内から大きな魔力を感じた……」

「そしてすぐ消えた……」


  男の方も同調して落ち着いて語る。歩くの止めて女が男の耳元で囁く。


「私はこっちを済ませてから向かうから、あなたは今の大きな魔力の方へ行きなさい」

「分かったよ姉さん。悪魔は僕ら祓魔師(ふつまし)が退治する」

「そうね」


  そう言うと歩道から5階もあるビルの屋上まで一気にジャンプし、ビルとビルの間を縦横無尽に素早く飛び交い、魔力が感知した場所へと向かう。


 雅斗はその頃病院へと搬送されていた。

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