死のカウントダウン‼︎死痕印‼︎
美呼の腕に三十の文字が浮き出て来た。兵治はその詳細を教えてくれた。
「死痕印……悪魔達の決闘などに用いられる言わば指切りげんまんみたいなもんだ。相手の体に数字を刻み、その数字が零になる前に来なければ約束を守らなければ……そいつは死ぬ……」
すると焦りの表情を見せる雅斗が兵治の裾を掴み掛かる。
「つまり美呼は30日以内に死ぬって事なのか⁉︎」
「落ち着け影山‼︎絶対死ぬとは限らない‼︎約束を守る……そこの部分を注目しろ。何かしらの条件を満たせば、この死痕印は消える……」
「その条件は何だ‼︎」
「僕に分かるか‼︎そんな事‼︎」
「私は大丈夫だから……雅斗……」
美呼が微笑みながら言う。だが雅斗には無理矢理作っている笑顔だとすぐに分かった。美呼は辛そうな時でも笑って誤魔化す癖がある。
「絶対に俺が助けてやる‼︎絶対に……」
雅斗は拳を握りしめ、決意した……美呼を助けると……
ーーーーーーーーーーーー
次の日……美呼は学校に行くと言った。雅斗は止めたが、美呼は行くと言う。
道中もいつも通りに笑顔で喋ってくるが、どこかしら暗い顔のようにも見えた。
教室に到着してもいつも通りに、友達と会話を始めた。
清政は教室にいるが兵治の姿はなかった。清政は雅斗に聞く。
「兵治の奴見てないか?」
「いや……俺も見てない……だが昨日、調べ物が出来たと言っていたが……」
「何か死痕印の解決法でも探しているのか……」
「ロジは昨日から何も喋らなくなるし……」
(2人共いるか……僕だ……)
「だ、誰だ⁉︎」
いきなり2人の頭に話しかけて来た。そして聞きなれた声に一人称が僕の所で雅斗は気づいた。
「兵治なのか……?」
(あぁ……僕だ。屋上に来てくれないか)
「また屋上かよ……」
「行くぞ清政‼︎屋上に‼︎」
「へいへい」
雅斗は全速力で屋上へ向かい、清政も嫌々屋上へと向かう。
屋上に到着すると、黒いロングコートを着た目の下にクマが出来た兵治が立っていた。雅斗はすぐさま聞いた。
「どうしたんだ⁉︎そのクマは⁉︎」
「へへ……寝ずに調べ物しててね……今……とっても眠いのよ……」
笑って誤魔化す兵治だが、体がフラフラと揺れている。そして前のめりに崩れ去った。雅斗は地面に落ちる前に兵治を体で受け止めた。
「大丈夫か兵治⁉︎」
「あぁ……美呼ちゃんの苦しさにしてみればくれくらい……」
「一体何をしてたんだ……」
兵治は何とか立ち上がり、語り始めた。
「僕は昨夜からずっと本を漁っていた。死痕印の事が書いてある書物が全く見つからなかった……」
「何も出来ないのか……」
「僕達祓魔師は、自分の魔力内ならある程度の呪いや呪文を消せる……だけど骸骨騎士は僕らの予想を遥かに超える魔力を持っている。奴は魔帝十隴死団だ。この世界にその力を超える祓魔師は、まず存在しない……」
「くっ……」
すると兵治、唾をゴクリと飲み込む。清政も静かに真剣な表情で聞いている。
「だが可能性はある……」
「何だ⁉︎」
「ま、魔界に行くしか……ない……」
「魔界……だと⁉︎」
魔界と聞いた瞬間、予想外の答えに雅斗と清政は驚きの表情になる。
そして清政は兵治に聞き返す。
「魔界って言ったって骸骨騎士みたいな不気味な奴らがうじゃうじゃいるって事なのかよ⁉︎」
「あぁ……そして美呼ちゃんも直接連れて行かないといけない」
雅斗が慌てて聞く。
「どうやって行ってどうやって直してもらうんだ⁉︎」
「魔界には祓魔師の長に頼んで魔界に転送してもらう。そして魔界に行き、魔扇老師に頼むしかない……」
「魔扇老師?」
「魔界で最長年の悪魔だ……そいつに解けない呪文はないと言われている……だがこれも伝説上の存在で、会えるかどうかも分かんない……」
「……」
「それに魔界は悪魔が大量にいる。ハエみたいに小さい奴から100m超える超巨大な奴までいる。姿もさまざまだ。人型の悪魔や獣型、グロテスクな見た目やバラバラだ。理性がある悪魔、理性がなく破壊の限りを尽くす悪魔。話しているとキリがない色んな悪魔がいる……それでも行くのか」
雅斗は下を向き、考えに耽る。魔界に行く……それは今まで見てきた色んな悪魔達より強いのがいっぱいいる。ロジに聞けば分かるが、ロジが出てこない……まるで居ないみたいに……
だけど美呼の為、雅斗は決意した。
「俺は行くぞ……魔界に……」
「⁉︎」
その言葉に清政も兵治も開いた口が塞がらないほど驚いた。兵治は恐る恐る聞く。
「本当に行く気……なのか……」
「あぁ……俺は行く……今まで俺を支えてくれた美呼の為だ‼︎今度は俺が助ける番だ……」
すると兵治は腕を組み深く悩む。
「……そこまで言うなら僕も行くよ……君1人じゃ美呼ちゃんも大変だろうしね」
兵治は美呼が雅斗を心配してる所を目撃していた。その時の顔が忘れられないのだ。どこか寂しそうな顔を……
そして清政が頭を抱えて、しゃがみこみ唸りながら悩む。
「うわぁ〜どうすればいいんだ⁉︎骸骨騎士みたいなのがいるって事なのかぁ〜」
「無理には来いとは言わない」
雅斗の言葉に更に頭を抱える清政。そして清政は腰を上げ、自分の両頬を1度叩いた。
「よ、よし……決めた‼︎お、俺も行くぜ‼︎お、お前2人じゃ不安だしな‼︎地獄だろうが、魔界だろうが、とことん付き合ってやる‼︎」
清政の顔からは大量の汗と震えた声で明らかにビビっているのが2人には分かった。
そして雅斗が軽く微笑む。
「ふっ……ありがとよ。そうと決まれば……」
その瞬間、屋上のドアが開いた。そこには美呼が悲しい目で見ていた。
「美呼⁉︎」
「雅斗……腕の数字が……」
3人はすぐさま美呼の元へと駆けつけた。
「これは……⁉︎」
美呼が右腕の制服を捲ると、三十の数字が二十九に減っていた。兵治が推測する。
「昨日から丁度1日が経ったんだ……」
そして雅斗は美呼の両肩を掴み、真剣な表情で美呼の目をしっかりと見ながら言った。
「美呼……よーく聞いてほしい事がある……」
「な、何……」
「俺達3人と一緒に魔界に行ってほしいんだ……」
「えっ……ま、魔界?どうゆう事⁉︎」
ーーーーーーーーーーーー
雅斗達は美呼に丁寧に魔界の事や悪魔の事を教えた。そして兵治と清政の事もついでに言った。
色々言いすぎて、美呼は頭の中で整理している。
「兵治君も清政君も変わった力を持っていたって訳?」
「まっ……まぁそうゆう事だな」
軽く照れながら答える清政。美呼は1度空気を吸う。そして3人に言う。
「魔界に私は行くわ」
「いいのか⁉︎本当に?」
「清政君も兵治君もいるんだし、それに雅斗もいる。絶対大丈夫よ‼︎」
あっさりと言う美呼にも驚いたが、本当の笑顔で言う美呼に雅斗はほっとした。
ーーーーーーーーーーーー
この会話を人知れず聞いている者がいた。暗闇の中会話をしている雅斗達が映し出された水晶を持つ骸骨の手が見える。それは骸骨騎士だった。
無残にも切り刻まれた大量の悪魔の死骸の山の上で馬に乗り、見ていたのだ。
「ふっ……魔界に来るか……面白い事をする人間よ……」
すると暗闇の死骸の山中から、1体の瀕死状態の悪魔が手を挙げた。
「た、助けてくれ……」
「我が休んでいる所を奇襲した分際で何を申すか……まぁよい、貴様にチャンスをやろう」
「え……本当か……」
「あぁ……それはだな……」
そう言いながら水晶を持っていない右手にオーラを纏い、悪魔をその場から消えた。
ーーーーーーーーーーーー
そして雅斗達は美呼に魔界に行くことを聞く。
「ありがとう美呼……今からでも行くか?」
「え?学校は……?」
「それより命だっ‼︎早く行こう‼︎」
美呼の手を握った瞬間、兵治と雅斗は何かを感じた。
「今のは……」
「魔力⁉︎それも近くに……‼︎」
雅斗と兵治が上を見上げると、学校上の上空に円状の穴が開いた。穴から黒いオーラが放出されており、雅斗達は警戒する。
「美呼……一旦ドアまで下がってくれ……」
「えっ?な、何⁉︎」
そして穴から、ゆっくり屋上に降り立って来たのは
上半身裸で、足には黒い装飾を身につけ、筋肉質な身体を全身黒色の毛で身を包み、背中に白い大きな翼を広げている。そして顔も肉食動物の如く鋭い目と牙を見せ、頭には鋭利なツノが2本付いており、髪の毛にドレッドヘアーのような長く太い毛が垂れており、腰にまで達している。
「お前らを殺す……」
「うっ……何だこいつ……」
「俺は……マァティス……お前らを殺せと命令された」
口から黒い息を吐く悪魔、鋭利な爪が生えた手を握りしめ、雅斗を睨みつける。
そこに余裕ある顔の清政が悪魔の前に出る。
「何しに来たか分かんねぇけど、俺が相手してやろうか悪魔さんよ‼︎ビビって端でこそこそ見ているより身体で感じてやるさ‼︎悪魔って奴の力を‼︎」
「いや……俺が行く……」
清政の前に刀を出し、悪魔の前に立つ雅斗。
「ちょっ⁉︎俺が……」
「ロジの奴がいなくても俺は戦う‼︎美呼を救う為に‼︎」