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副リーダーの復讐⑵

 

 夜……日も沈み河川敷の電灯もつき始め、あたり一面は真っ暗の闇に包まれた。


 清政は暴走族時代に着ていた傷や血のついた特攻服を身につけ、腕を組みながら険しい顔で柳を待つ。


 背中には天下無双の文字が赤く描かれている。清政の背中からはとてつもない威圧感を放っている。


 そして土手の向こうから大きなエンジンが響き渡る。そして大勢の特攻服を着た柳らがバイクに乗ってゾロゾロと現れた。全員手にはバットを持っており、どこか暗い雰囲気が漂う。


「来たか……」


 手ぶらの柳が清政の前に出て、清政と柳を柳の部下達が囲みこむ。そして柳はニヤリと笑う。


「元総長〜いよいよ決着の時ですねぇ〜」

「さぁ‼︎早く決めようぜ‼︎決闘でな‼︎」


 柳は構えて小刻みにジャンプし、右手でクイクイっと手で挑発する。


「いつでもどうぞ総長……」

「俺は無性に腹が立ってんだ‼︎速攻でケリをつけてやるぜ‼︎」


 清政は拳を上げ、柳に向かって特攻する。だが柳は不敵な笑みを浮かべる。


「うぉぉぉらぁぁ‼︎」


 清政のパンチは柳の顔面に向かった。だが柳がそっと右手を前に出すと、パンチはまるでガラスにぶつかったように右手の前で止まった。


「な、何⁉︎」

「ふっ……」


 今度は柳が左手を前に出すと、清政は急に腹に衝撃が加わり、後ろに何回転もしながら吹き飛んだ。だが清政は腹を抑えながら立ち上がり、柳を睨みつける。


「総長〜またおんなじミスですか〜忘れん坊ですね〜」

「やはり……これが悪魔の力ってやつなのか……柳、何したんだ‼︎」


 すると柳はゆっくりと近づきながら話し始める。


「あんたに復讐を誓ったんですよ〜あんなに恥かかせやがって……その為には何だってするさ……変な声に従って力を手に入れた訳ですよ……さぁ総長の怒球弾で俺と勝負してくれや‼︎」

「ちっ……分かった……俺の怒球弾でお前を倒す」


 清政は右手を構えてすぐさま怒球弾を放つ。


「怒球弾‼︎」


 怒球弾は柳の胸部分にモロに当たり、後ろに吹き飛び、倒れた。


「ぐっ……」

「おいおい使えって言ったのはお前だぜ。もう少し粘ってみせろや‼︎」

「ふざけるな‼︎」


 柳は右手を前に突き出した。だが清政は軽々と高くジャンプし、さっきの衝撃波のような技を避けた。


「怒球弾‼︎」


 再び怒球弾を放ち、柳を吹き飛ばした。柳が起き上ると目の前には清政が見下すように見ていた。


「くっ……」

「負けを認めろ。悪魔の力を手に入れても俺には勝てない」

「本当にそうですかね……」


 柳が右手を握りしめると、右手を黒いオーラが包み込む。すると2人を囲んでいる部下達の清政の背後いた2人が突如清政の肩を掴んで来た。


「な、何をする⁉︎お前ら‼︎」


 清政が振り払おうとするが力強く抑えられ、一切表情を変えず話す気配ない。


(何だこいつら……一片の曇りもないような瞳……まるで子供に弄ばれた操り人形のようだ……)

「総長好かれてますねぇ〜」

「お前最初からまともに戦う気が……」

「当たり前ですよ〜オラっ‼︎」


 近づいて来た柳に黒いオーラを纏った右手で腹部を思いっきり殴られた。普通の殴りとは思えないほどの力が腹に一点集中する。清政の口からは血が吐き出された。


「ほらほら‼︎そんな程度ですか⁉︎総長‼︎」


 何回も何回も殴られ、無抵抗の清政が立っている地面には血が何滴も垂れ落ちている。

 そして10回ほど殴った時、ボロボロの顔になった清政の頭がガクッと下がった。


「おやおやおや?もう終わりですか?総長」


 すると清政は顔を上げ、ニヤリと笑い柳に言い放った。


「蚊に刺される方がまだ痛いぜ……こんな殴り……」

「俺をおちょくってるのか‼︎」


 柳の強く握りしめた拳のフルスイングが清政の顔面に直撃、再び清政の頭はガクッと下がった。


「おい、もう離せ」


 柳が言うと清政の肩を掴んでいた2人が手を離し、清政はそのまま地面に力尽きるように倒れた。


「後はお前らの好きにしろ」


 柳は下がり、部下達10人が倒れた清政を囲む。無表情の部下達は、髪を掴み上げ清政の顔を殴り、蹴り、バットで背中を殴る。

 無抵抗の清政は声も上げず、そのまま殴られ続けるだけだった。意識が朦朧としてる中、清政は思った。


(あぁ……孤独ってこんなにも辛いなんて……元仲間にボコボコにやられてかっこ悪いよな……いつもボコボコにする側だったけど、される側ってこんなにも惨めなんだな……影山……兵治……)


 部下の1人が清政の背中をバットで叩こうとした瞬間、背後から一撃切られ気絶するように倒れた。

 髪を掴み上げていた部下も背後から一撃切られ気絶した。


「情け無い格好だな。立ち上がれ‼︎」

「僕達が助けてあげようか?」


 ムカつく喋り方、そして刀を持つ2人……清政が力を振り絞って顔を上げると


「雅斗⁉︎兵治⁉︎なんでお前らが⁉︎」


 雅斗と兵治が立っていた。


「僕達は魔力を感じる事が出来るって言ったよね。最初僕達は見守ろうとしたけど、違反を起こした相手には違反で返さないとね」

「俺はロジが戦いたいって言うから戦うだけだ」

(俺そんな事言ったか?)

「うるさい」


 清政は立ち上がり、柳の方へと歩き始める。だが部下達は清政を再び囲み始めようとする。


「こいつらは僕達が相手をする。清政、君は決着をつけろ‼︎」

「清政、言ったよな……俺がケジメをつける……邪魔はするなって……邪魔はさせないし、手出しもさせない……こいつらからな‼︎」


 兵治と雅斗は刀を構えて、バットを構えた部下達に特攻した。清政は振り向かずに柳の元へとおぼつかない歩きで向かう。

 

「これで一対一の勝負が出来るな……柳‼︎」

「くっ……」(もうこいつには体力はい……やるなら今だ)


 右手を突き出し、清政は吹き飛ばした。だが清政は立ち上がり、柳の元へと歩く。


「まだだ‼︎喰らえ‼︎」


 再び右手を突き出し、清政を吹き飛ばした。また清政は立ち上がり、歩き始める。


「ひぃ〜‼︎ば、化け物か⁉︎」


 何回も右手を突き出し、吹き飛ばそうとするが、清政は歯を食いしばり吹き飛ばされずに耐えながら前を歩く。

 そして柳の目の前に着いた。


「し、死ね‼︎」


 怯える様子の柳は慌てて右手を突き出した。だが清政はその右手を掴み、握りしめた。


「ぐわぁぁぁ‼︎」

「覚悟はいいか……柳……お前みたいな卑怯な奴はな……お仕置きが必要なんだよ……」


 清政は右手を握りしめて、エネルギーを溜める?

 柳は必死に抵抗して左手で攻撃するが清政は微動だにしない。


「た、助けてくれ‼︎おい、お前達‼︎俺を……」


 柳が部下の方を見ると、雅斗と兵治が全員倒していた。


「口ほどにもない奴らめ」

「こっちはもう片付いたよ、後は君が決着をつけるんだ」


 清政の右手には十分なエネルギーが溜まった。


「あぁ……感謝するぜお前ら……」

「や、辞めてくれ総長‼︎」

「喰らえ‼︎俺の特大蒼穹怒球弾をぉぉぉ‼︎‼︎」


 清政は心の中で思った。


(俺には怒球弾がある……だが雅斗や兵治みたいに悪魔の能力があるわけでない……俺には新しい仲間がいる……特別な存在じゃなくてもいい……俺は俺だ‼︎)


 そして清政は柳の顎をアッパーで殴り込み、蒼穹怒球弾と共に上空へとジェット機のように高速で飛んで行った。

 するとさっきまで雅斗らと戦った部下達が全員起き、頭を抑えている。


「俺達一体なにを……」

「何で清政さんがここに……」

「身体中が痛ぇ……」


 雅斗と兵治が疲れ果てた清政の元に近づく。


「大丈夫か……もうクタクタじゃないのか?」

「ちっ……余計なお世話だ‼︎」

「僕達が来なかったら……どうなってたかな」

「……お前らがいなかったら俺は……ありが……」


 喋っている最中に空から清政の目の前に空に飛ばされた柳が落ち、地面にめり込んで来た。

 柳は顔がボロボロになって地面に中から出て来た。そして清政の顔を見た瞬間、奇声をあげた。


「きゃぁぁぁぁぁ‼︎命だけはぁぁぁ‼︎」


 蒼穹怒球弾を食らったばっかりなのに、両手を上げて元気そうに走って逃げて行った。


「ふっ……はは‼︎はははは‼︎」


 清政は笑いながら倒れた。兵治も微笑みながら話しかける。


「さっき何て言おうとしたのかな〜?」


 雅斗も焦らしてくる。


「ありが……って聞こえたけどなぁ」

「あ、アリが居たって言ったんだよ‼︎」


 兵治と雅斗は、清政の肩を持ち上げ歩き始める。


「はいはい……アリが居たんだね〜」

「本当にいたんだよ‼︎アリが‼︎」


 雅斗達に肩を持たられる中、清政は空を見上げる。


(じいちゃん……俺は前の族も良かったが、今も悪くねぇ……2人共ありがとな……)


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