100年物の悪魔⑵
静寂に包まれた暗闇の森の中、復活した悪魔弧凛魔と祓魔師の兵治の勝負が始まった。
先制を取るように兵治が攻撃仕掛ける。刀を出し攻撃を掛けたが、弧凛魔は軽々と避け、バク転をする様に一回転して刀で反撃を仕掛けた。
「ちっ……!」
兵治はギリギリに避けて何メートルか後ろに引いたが服に線状の切り傷がついた。
孤凛魔は綺麗に着地し、余裕そうに微笑んでいる。
「ふっ……避けましたか……なら、これはどうでしょう!」
腰を低くし、高速でこちらにまっすぐ向かって来た。兵治は態勢を整え、すぐさま技を唱えた。
「くっ……架蝉旋風陣!!」
魔方陣から放たれる無数の剣、だが直進する弧凛魔は握っている刀2本で全ての剣を弾き飛ばした。
そしてそのまま兵治の元へと回転しながら斬りかかる。兵治はただ防御するので精一杯だった。
「ちっ……‼︎」
「さぁ!こんなものですか!祓魔師というのは!!」
回転斬りに苦戦を強いられ、後ろに引いていく兵治。すると弧凛魔が1度宙返りしながら後ろに下がる。そして勢いよくまっすぐに兵治に接近し、刀を弾き飛ばした。
「なっ‼︎」
「ふっふっふ……チェックメイト……」
2本の刀を兵治の首元に近づけ、不敵に笑う弧凛魔。すると兵治はニヤリと嘲笑う。
「それはどうかな……」
「何‼︎」
弧凛魔はそのまま兵治を切り裂いた。だがそれは影となり、消え去った。
そして後ろより刀を降りかかる兵治がいた。
「こっちだぁ!!」
「なぬっ‼︎」
すぐさま防御に移る弧凛魔。刀2本で攻撃を防御し、鍔迫り合いが起きる。
「僕だってな、厳しい修行を受けてきた‼︎悪魔を倒すためのな‼︎」
「ふっ……なら早く私を倒してみなさい‼︎」
「くっ‼︎」
弧凛魔は力一杯兵治跳ね飛ばした。兵治は上手く地面に着地したが、弧凛魔は軽くしゃがみ込み体をひねり始めた。
雅斗も軽く警告する。
「あの態勢……あの技が来るぞ‼︎気をつけろ!」
だが警告を無視するかの様に兵治は弧凛魔へと斬りかかる。すると捻り戻すように高速で回転を始めた。そこから無数の斬撃が目の前の兵治に襲いかかる。
「しまっ……‼︎」
「風錢梁破!!!」
兵治の顔や足や手全体に切り傷が刻まれた。そのまま兵治は地面に仰向けに倒れた。
「ぐっ……‼︎」
弧凛魔は嘲笑うかのように兵治を見下す。
「あらあら……綺麗なお顔が台無しに……ふっふっふ……」
「ふっふっふ……」
いきなり兵治が弧凛魔の真似をして笑い始める。
「綺麗な顔が台無しになるとは、どっちかな……」
「⁉︎」
弧凛魔の背後から急に無数の魔法陣が生まれ、その中から無数の剣が弧凛魔を襲う。
「ちっ‼︎」
宙返りするように避けたが、流石の弧凛魔も全て避ける事が出来ず、顔にかすり傷が出来た。そして
「ちっ……私の顔に……」
「前より綺麗の顔になったんじゃないのか……」
「……油断した私の失敗でしたね……」
雅斗とロジも戦いを見ながら言う。
「あいつワザと攻撃を食らったのか……」
(弧凛魔の性格を素早く感知し、そこから1番攻撃を当てやすい方法を編み出したんだ)
「ふっ……面白い奴だぜ……」
弧凛魔は片足を浮かし、もう片方の足をつま先だけで立った。そして小刻みにゆっくりとジャンプを始めた。
「何をする気だ……」
「見せてあげましょう……水鏡斬壊凛を……」
すると森の中の雰囲気が変わりつつある……音が無くなり、聞こえるのは一滴の水が水の上に落ちる音だけが響き渡る。
「この技は……⁉︎」
地面を見るとさっきまで土や草が生い茂っていたはずなのに、周り一面が靴の辺りまで水が流れている。
「これぞ水鏡斬壊凛……そして……」
すると兵治の背後の水面から弧凛魔が2体現れた。
「弧凛魔の奴……2体も増えやがった……」
(3対1か……ふっ……あのガキどうやってこの状況を突破出来るか楽しみだぜ)
「この虚像達を倒せますかな‼︎行きますよ‼︎」
そして2体の弧凛魔と本物の弧凛魔が一斉に兵治を囲むように攻撃を開始した。3方向からの攻撃に兵治は防戦一方になる。
「くっ……」
防御する中で、3人の弧凛魔が声を合わせて兵治を挑発する。
「さぁ‼︎さぁ‼︎いつまで耐え切れるかしら‼︎」
「(この作り出された虚像共に何かしらの弱点があるはずだ……それを発見すれば……)……架蝉烈風陣‼︎」
「同じ手は喰らいませんよ‼︎」
兵治の周りから魔法陣が現れ、無数の剣が弧凛魔を襲撃する。だが作り出された弧凛魔2体は水面に沈み架蝉旋風陣を回避し、弧凛魔本体も華麗に避けて水面に着地した。
「ほっほっほ……残念。我が虚像には攻撃は当たらん‼︎」
「くっ……⁉︎」
突如背後より弧凛魔の虚像が2体現れ、体ごと振り向いた兵治の身体を斬りつけた。
「ぐわっ‼︎」
「兵治‼︎」
兵治は血を吹き出し、水面に倒れた。そして意識が段々と遠くなった。
「ほぉ〜ほっほ‼︎やはり私には勝てませんね‼︎貴方ごときじゃ‼︎」
薄れゆく意識の中、兵治の頭には先代の祓魔師の事を考えていた
(うっ……すみません……先代……祓魔師の名に汚名を着せてしまい……)
(そんな事はないぞ少年よ……)
(この声は……先代……)
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真っ暗な空間に立っている兵治。そこに5人の神主の服を着た老人が兵治を囲んでいる。
(先代……)
ふると1人の先代が兵治の前に立つ。
「我が神沼一族の血が流れているなら、これくらいでへこたれるな!)」
「神沼一族……貴方は?我がひいおじい様⁉︎」
「お前はまだ若い……それにまだ戦う力もある」
「でも……」
「力だけに頼るな……周りをよく見て戦え……」
「は、はい‼︎」
そして優しい表情で兵治に語りかける。
「お前は私の孫だ……絶対に活路を見出せる……頑張れよ……」
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その頃、倒れた兵治を見て雅斗は戦う準備をする。
「ほぉ〜ほっほ‼︎情けない、情けなさ過ぎる‼︎」
「うっ……兵治が倒れた……俺がやるしかないか」
(ふん……維持を張るからだ)
弧凛魔は雅斗の方を向き、刀を向ける。
「次は悪魔の貴方……行きますよ……」
その時兵治の手がピクリと動いた。そして刀を拾い膝をつきながら立ち上がった。
「まだ僕は……死んでないぞ‼︎」
「あら?まだ生きてたの?死に損ない」
「死に損なったせいで……大切な事を教えてもらったぜ……」
「死ねぇ‼︎」
再び兵治の後ろから弧凛魔の虚像2体が襲いかかって来た。だが素早く避け、木の枝に乗った。
(力に頼らず、周りを見ろ……)
森の中を見渡す……水面、木、夜……兵治の頭の中で考える。
「あの技を使う‼︎」
木から降り水面に立つ、そして虚像達は兵治を囲む。だが兵治はニヤリと笑う。
「影山、飛びっきりの技を使うから注意しろよ……」
「勝算があるのか?」
「さぁな……」
弧凛魔は虚像に命令をする。
「行きなさい‼︎虚像達よ‼︎」
「ぬっ‼︎」
魔法陣の中に入り、何処かへ隠れた。
「何処へ隠れた⁉︎」
「俺はここだ‼︎」
夜空に浮かぶ魔法陣から兵治が現れ、弧凛魔の後ろから右手を水面につけた。
「雷毫桑陣‼︎」
右手の魔法陣から雷が放たれ、水面全体に伝わり、弧凛魔と虚像2体に直撃した。
「ぎゃぁぁぁぁ‼︎‼︎」
身体中が焦げ、身体から黒い煙が上がって来る弧凛魔。虚像達も消え去った。
「くっ……こんな事が……」
「まだだっーーーー‼︎」
更に兵治は正面から突進するように弧凛魔を斬りつけ、弧凛魔は膝をついた。
「ぐはっ‼︎」
「トドメだ‼︎洸潾殊陣‼︎」
弧凛魔の頭上より魔法陣が現れた。
「さぁ……これで終わりだ‼︎あの世で一生後悔するがいい‼︎祓魔師を舐めんな‼︎」
弧凛魔は魔法陣より放たれた光によって姿が徐々に消え始めた。
「ふ、祓魔師め……だが我が魔族は簡単には潰えない‼︎いつかまた……」
そして魔法陣が消え、弧凛魔は消え去った。
その瞬間兵治は魂か抜けるように倒れた。すぐさま雅斗が木の上から飛び降り、よって来た。
「大丈夫か⁉︎」
「あぁ……大丈夫……」
雅斗の肩を借り、立ち上がる。そして夜空を見上げる。
「影山……この現世に悪魔ってどんだけいると思う……」
「さぁな、僕には皆目検討もつかねぇ」
「何百年何千年経っても悪魔はいる……ひぃじい様は何十年も戦い続けた……でも悪魔は根絶出来なかった……そして今度は悪魔と契約を結んだ奴が隣にいる……人生何あるか本当にわかんないな……」
「ふっ……学校とここで別人のように振る舞う奴もいるしな……」
すると兵治が雅斗の顔を見てお願いする。
「そ、そうだな……所でちょっとお願いがあるんだが……」
「何だ?」
「今度は俺を家まで運んでくれないか……力使い切っちゃって……魔法陣が出せなくて……」
雅斗はニコッと笑い言う。
「ちっ……しょうがねぇ……何処だ?お前の家は」
「場所はーー」
雅斗と兵治の会話を聞いてロジは思った。
(少し前まで殺し合いしてたのに、兵治って奴も清政って奴も……本当に分かんねえな人間って……)
そして雅斗は兵治を背負いながら帰った……




