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真夜中に待つ者⑶

 

 その日の夜、家で美呼は雅斗に由美と連絡が着いた事を報告した。


「何とかよっちゃんに連絡を入れたわ。これが今の住所よ」


 住所の書かれた紙を渡された。


「ありがとう美呼」

「1つ聞いていい?」

「何だ?」

「よっちゃんに話を聞いてどうするの?」

「幽霊が見える俺を通して、猫に合わせてあげるんだよ」

「本当に?」


 顔を近づけて聞く美呼。だが雅斗は優しく言う。


「本当だよ……」

「……」


 そう言うと雅斗は部屋へと戻って行った。美呼は心配そうに階段を上って行く雅斗の背中を見るだけだった。


 ーーーーーーーーーーーー


 そして次の日……土曜日なので雅斗は美呼に貰った住所を頼りに、由美の家にたどり着いた。そしてチャイムを鳴らした。


「はぁ〜い!!今行きます!!」


 慌ただしく階段を降り、ドアを開けたのは雅斗と同じくらいの歳の女の子だった。そして雅斗が口を開く。


「あんたが香村由美(かむらよしみ)か?」

「は、はい?まさか君が美呼ちゃんが言ってた雅斗君?」

「あぁそうだ。早速だが話がある……」

「分かりました……家に入って下さい」


 沈んだような表情の由美に家の中に入れられる雅斗。そしてリビングのソファーに座らされる。


「美呼ちゃんはいらっしゃらないの?」

「美呼は部活でいないんだ」

「あぁ……」

「話の事だが、みーちゃんの事を覚えているか?」

「みーちゃん?……みーちゃんがどうしたの……?」

「今から話す事を信じてもらえるか分からないが、聞いてくれるか」


 雅斗は神妙な面持ちで昨日の出来事を話した。みーちゃんに会った事、戦った事、過去の話など……すると由美はまだ信じておらず、疑問に思いながら言う。


「雅斗君は幽霊が見えるって噂は昔から聞いていたけど……本当なの……?」

「これを見ても分からないか」


 雅斗はズボンを捲りあげ、怪我した足の部分を見せた。普通の猫とは思えない引っ掻かれた跡だった。


「それは⁉︎」

「みーちゃんにやられた。だけどみーちゃんの意志ではなく、悪魔に取り憑かれているんだ」


 だんだん由美の声が震え始めた。


「悪魔?取り憑かれた?貴方は何を言っているの⁉︎」

「そのまんまの事を言ってるだけだ。みーちゃんは醜鬼という悪魔に取り憑かれているんだ……」


 由美は下を向き、語り始めた。


「私はもうみーちゃんの事を忘れたいのよ……思い出したくないの……あんな辛い思いはしたくないの……」

「俺もだ……思い出したくない事はあった。前、信頼していた先生が事故で亡くなった……」

「えっ……」

「友達がいなかった俺にいつも優しく接してくれた……俺が嫌と言っても先生は諦めずに何度も俺に接してくれた。段々話していく内に先生の良さに気づいた。だけど気づいた時には、先生は亡くなった。俺は魂が抜けたように生きていた。だけど、とある事でその悲しみを乗り越えた。悲しみに向き合わないと、人に進む事は出来ない」


 すると由美は俯きながらゆっくりと昔の事を話始めた。


「私は忘れたかった……みーちゃんの事を……あの家にいると思い出すの……だから違う場所に入れば思いだなくて済むと思っていたの……でも思いだしちゃう……あの時の衝撃、あの時の悲しみを……」

「そこで君にお願いがあるんだ……今日の夜中、前の家に来てくれないか……」

「え……」

「みーちゃんに合わせてあげたいんだ……」

「みーちゃんに会える……そんなの無理よ……もういないんだから……」

「俺を信じてくれ……そこでみーちゃんは君の帰りをずっと待っているんだ」

「私の帰りを……」

「あぁ……君がみーちゃんに別れを告げてくれ……そうしたらみーちゃんに取り憑かれた悪魔ごと……倒す……」


 そして雅斗は立ち上がり、部屋から出ようとする。すると由美が雅斗の手を掴み止める。


「本当に……そこに行けば、会えるの……」

「君が俺を信じるなら……あの家に来てくれ……死者の魂はこの世に残ってはいけないんだ……」


 そう言うと雅斗は、由美の家を出て行った。由美は部屋の椅子に座り込み、下を俯いて考えた。


「……みーちゃん……」


 ーーーーーーーーーーーー


 帰り道、ロジは雅斗に話しかけた。


(おいおい、あんな感じでいいのか?あいつ本当に来るのか?)

「それはあの子が過去を振り払う覚悟があるかだ……悲しみの過去を無理矢理閉じ込めずに、直接向き合い乗り越えられるかだ……そして別れの挨拶をしてもらう……」

(お前って本当に変な奴だよな……)

「うるせぇ」


 ーーーーーーーーーーーー


 夜中、雅斗はあの空き家に再び来た。周りを確認するが由美の姿は見えなかった。


「やっぱり来ないよな……残念だ……」


 すると背後より冷んやりと風を感じた。その瞬間背後より何か急激な速度で迫って来るのを察知した。


「……っ⁉︎」


 そして刀を瞬時に出したと同時に悪魔猫の姿が目の前に現れ、振りかざした爪の攻撃を刀を横にして受け止めた。


「今度は……そう簡単にはいかんぞ!!」

(今回はちゃんと防御出来たな)

「あいつらの……おかげだ!」


 雅斗は力強く弾き返し、飛ばされた猫は一回転し屋根の上へとジャンプした。


「さぁ……来い!!」


 悪魔猫は、ふっ……と魔力と姿を消した。すると雅斗は刀を下ろし、目を瞑り冷静に待ち構えた。そして背後より悪魔猫が現れ爪を振りかざした瞬間……


「そこだっ!!」


 爪の攻撃を華麗振り向きながら避け、攻撃して隙が出来た腹部分を一撃切り裂いた。悪魔猫は倒れ、苦しそうにしかめっ面になり、切り傷から血がポタポタと垂れている。


「グ……グルル……」


 だが悪魔猫は立ち上がり、雅斗を睨んだのちに再び姿と魔力を消す。雅斗は再び目を瞑る。そして接近して来るの察知し、姿を現した悪魔猫の攻撃を避けて再び腹部分を一撃切り裂いた。傷口は更に広がり、痛みにのたうち回る。


「何度やっても無駄だ!!お前の攻撃はもう見切ったんだ。大人しく俺に斬られて成仏しろ!!」

(大人しく成仏してくたら良いんだけどな)

「どうゆう事だ?……⁉︎」


 悪魔猫は正面から雅斗に飛びつき、何度も何度も爪を振りかざす。雅斗も後ずさりしながら、攻撃を確実に受け止めて防御する。


「まだ戦う余力があるのか」

「グルルル……グシャアァ!!!」


 悪魔猫は空を見上げ、大きく鳴き叫んだ。それと同時に、悪魔の身体が徐々に大きく変化し始めた。雅斗もこれには驚きをかくせない顔をする。


「な、何だ……大きくなってやがる……」

(ちっ……魔力が莫大に増えてやがる。お前も魔力を上げろ!!下手に攻撃を食らったらひとたまりもない!)

「分かった!!はあぁぁぁ!!!」


 両手拳に力をいれ、魔力を上昇させる。

 そして悪魔猫は全長8mほどの巨大な身体を変貌を遂げた。


「バカでかくなりやがって……」


 雅斗は刀を握りしめ、相手の出方を待つ。


「さぁ……どう来る……」


 悪魔猫はまた姿と魔力を消した。雅斗は辺りを見回し、魔力を探知する。


「ちっ……また姿を消したか……」

(……上だっ!!!)

「何っ⁉︎」


 突如巨大な爪が現れ、振り下げられた。横に構えた刀で爪を支えるように防御するが、足元のコンクリートは凹み、雅斗の前身を支える力も徐々に減っていく。そして悪魔猫の全体が見えた。


「ぐっ……!!な、何だ……魔力が全く感じない……」

(奴はお前が攻撃を完全に読んだから、身体の一部だけを姿を現し攻撃した。そうすれば体内の魔力を察知し辛くなる)


 更に爪の押す力が増す。コンクリートの凹みが更に広がっていく。


(魔箋剛冥刀(ませんごうめいとう)を使え!!)

「うおぉぉぉ!!!魔箋剛冥刀!!!」


 支えている刀が闇のオーラに包まれ、パワーアップして雅斗は徐々に押し返していく。


「グシャアァァァ!!」

「はあぁぁ!!」


 すかさず悪魔猫はもう片方の爪で雅斗の正面を突く。雅斗は振り下ろされた爪を全力を出して上にはじき返し、突いた爪を紙一重に避ける。


「はぁ……はぁ……」

「みーちゃん⁉︎」

「⁉︎」


 顔を後ろに向けると電柱の陰に由美がいた。だが今の悪魔猫となったみーちゃんを見て怯えている。


「お前……来たのか⁉︎」

(前を見ろっ!!)

「⁉︎」


 由美に関心を持ってかれて悪魔猫に気をそらしていた雅斗は、不意打ちの如く腹に一撃爪を引っ掻かれた。


「ぐわっ!!!」

「雅斗君⁉︎」


 腹に爪跡がくっきり残り、雅斗は由美の目の前まで吹き飛び、倒れた。


「だ、大丈夫⁉︎」


 雅斗は傷を抑え膝をつきながら立ち上がる。そして由美に背中を向けた状態で語る。


「うっ……俺は大丈夫だ……それより、あれがお前の猫だ……分かるか」


 赤い首輪を見て由美は確信した。


「やっぱり……あれがみーちゃんなの……」

「あぁ……昼言った通り、悪魔に取り憑かれている。本当はみーちゃんに最後の別れを言わせてあげたかった……」

「……」


 すると痺れを切らした悪魔猫が雅斗めがけて飛び掛かって来た。雅斗はすぐさま由美に警告する。


「後ろにさがれ!!」


 だが由美は雅斗の前に立ち、両手を広げた。


「お前何を⁉︎」

「みーちゃん!!私よ!!由美よ!!」


 由美は攻撃が当たると覚悟して目を瞑るが、悪魔猫は寸前で攻撃を中断した。


「攻撃が止まった……だと……」

(こんな事始めて見たぞ……人間の言葉があの取り憑かれた猫に通じたのか……)

「みーちゃん!あれほど人に攻撃しちゃダメって言ったでしょ!!」


 すると悪魔猫のしっぽが下がり、後ろに下がっていく。だが由美はゆっくりと前へと歩きだす。


「雅斗君が言った事が私を前に進ませてくれた。死者の魂はこの世に残ってはいけない……みーちゃんがこの世に残れば私は一生後悔する。ならこの世から居なくなって再び新たな命に生まれ変わればいい……だから!!」

(刀を構えろ!!フルパワーで行くぞ!!)

「はあぁぁぁ!!!」


 再び刀に力を入れ、刀にオーラが包み込まれる。

 由美はみーちゃんとの思い出を振り返りながら近づいて行く。暴れん坊で周りの人に噛むついたり引っ掻いたりしたが由美には懐いた。家に知らない人が来たらしっぽを太くして威嚇して困らせた。でも由美が時間を掛けて躾けたからみーちゃんは引っ掻かく事が減り、噛み付いたりしなくなった。そんなみーちゃんが由美は大好きだった。みーちゃんも由美の事が大好きだった。


「ただいま……みーちゃん」


 由美の声に悪魔猫の動きが完全に止まった。


(やるなら今しかない!!行け!!)

「うおぉぉぉ!!!!」


 雅斗が刀を強く握りしめ、素早く走り由美を飛び越えるようにジャンプした。そして


「魔箋剛冥刀!!葬凛斬(そうりんざん)!!!」


 一瞬で3回の攻撃を喰らわせ、悪魔猫が倒れると同時に雅斗は着地した。すると悪魔猫の身体が徐々に消え始めて来た。


「みーちゃん!!」

「俺にはこれしか出来なかった……でも最後に君に合わせる事が出来て良かった……」

「雅斗君……ありがとう……最後に合わせてくれて……」


 そしてみーちゃんは完全に消えた。


(何だったんだ……あの時何故攻撃が止まった……)


ロジにとっては初めての出来事だった。悪魔に取り憑かれたら体の意識を戻す事は出来ない。だがみーちゃんは自分の意志で攻撃を中断した。それがまだ理解出来なかった。



 ーーーーーーーーーーーー


 だがこの光景を遠くのマンションの屋上から見てる人物がいた。


「あれれ?僕の出番なかったか?」


 それは兵治だった。雅斗がいる通りでもう1人雅斗を見てる人物がいた。


「あれは?美呼ちゃん?」


 兵治が発見したのは美呼だった。美呼は電柱に隠れて見ていたのだ。


「やっぱり……雅斗……」


 心の何処かで何か疑問に思う美呼。やはり隠し事していた雅斗。あの悪魔の力を使っていた。だがその裏で旧友由美を助けていた。複雑な感情に心を痛める美呼だった……


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