真夜中に待つ者⑵
雅斗は登校してる最中に美呼に空き家の事を聞いた。
「空き家の事?昨日、先生が言ってた話ねぇ……それがどうしたの?」
「美呼だけにしか言えないんだけど、昨日そこに行ったんだ」
「えぇ〜!!行ったの⁉︎」
「そこで赤い首輪をした黒猫の幽霊を見たんだ……」
赤い首輪の黒猫。それを聞いた美呼は、ある事を思い出した。
「赤い首輪の黒猫……あっ!思い出した!」
「な、何だ⁉︎」
雅斗が顔を近づけて来てびっくりする美呼。
「顔近いよ!雅斗!」
「す、すまん……」
「その猫……確かよっちゃんの家の猫よ、きっと」
「よっちゃん?」
「よっちゃんは中学2年生の時に、事件があった引越したんだ……」
美呼は、その詳細を語った。
今から2年前、5丁目に香村由美という美呼と同級生がいた。その家にはミーちゃんという赤い首輪が特徴の黒猫がいた。その猫は元は捨て猫であり、捨てられていた所を小学2年生の由美に拾われた。拾われたミーちゃんは由美には懐くが他の人に一切懐かない凶暴な猫だった。
だが中学2年のある日、旅行で家を空けた時に事件は起きた。家に人がいない事を知っていた泥棒が空き巣に入った。そして由美が家に帰ってくると窓ガラスが割れており、ミーちゃんは玄関前で倒れていた。幸いにも何も盗まれていなかった。だがミーちゃんは大怪我を負い、その傷で亡くなった。その後由美はすぐに転校した……
美呼の話を聞いて、雅斗は言った。
「つまりミーちゃんは、泥棒に勇敢に挑んだって事か……」
「そうらしいわね……」
「そこで美呼にお願いがある……」
「えっ何?」
「その由美ちゃんに聞きたいんだ……ミーちゃんの事を……」
雅斗の真剣な顔を見て、美呼は頷いた。
「分かった……連絡をして見るわ……」
「ありがとう……美呼……」
「本当に話を聞くだけだよね……」
「あぁ……勿論だ」
学校に着いて兵治が早速屋上に呼び出した。
「あの悪魔の事だが……」
「何だ?」
「あいつは多分醜鬼と呼ばれるタイプの悪魔だ」
「醜鬼?」
「醜鬼は、この世界に残っている霊に乗り移り悪事を働く悪事だ」
「霊に乗り移り……悪事を働く……」
その時、雅斗は宮下先生の事を思い出した。宮下先生も霊になった後、悪魔に乗り移りられた。そして俺を襲って来た……
「教えてくれてありがとな……」
雅斗は1人で屋上を出て行った。そして兵治は屋上ドアの上を見て言う。
「おい!隠れてないで出てきたらどうだ」
「ば、ばれてた⁉︎」
それは清政だった。清政は降りてきた兵治に尋ねる。
「何の話してたんだ?」
「お前には分からん話だよ」
「……」
そして体育の時間。授業では野球をやっており、雅斗は後ろの方を守っている。その間も悪魔猫の事ばかりを考えている。
「ミーちゃんの飼い主は、ミーちゃんにお別れも言えずにいなくなった……俺と同じだ。俺も宮下先生にお別れも言えずに……」
(どうした?戦う気が無くなったか)
「いや……俺はせめてあの悪魔猫を倒す前に、飼い主に一言お別れの言葉を言って欲しいんだ。乗り移りるれたとしても霊の魂は宿ってる……」
すると向こうからピッチャーの清政が大声で叫んでいる。
「ボール取れ!雅斗!!」
「⁉︎」
兵治によって打たれたボールが雅斗目掛け飛んできた。だが雅斗は瞬時に首を傾げてボールを避けた。
「何やってんだよ!俺達の負けじゃねぇかよ!!」
「……今のは!!」
ボールが飛んできた瞬間、悪魔猫の攻撃のような感覚になった。どこからともなく飛んで来たボールを瞬時に判断し避けた。清政の言葉を無視して1人テンションが上がる雅斗。
「はぁ?何だあいつ?」
そして放課後……雅斗は山の上の公園に行き修行を始める事にした。ポケットの中からあるものを出す。
(何を思いついたんだ?)
ポケットから出したのは野球ボールだった。
「避ける練習をするんだよ」
コンクリートの壁の前に立ち、ボールを握りしめ、思いっきり投げた。ボールはうまくバウンドし、雅斗の顔面目掛けて飛んで来る。それを軽く避けた雅斗だが、何か不満そうな顔をしている。
「ちょっと違うな……もっと見えないくらいのスピードが欲しいな……」
「俺達で良ければ手伝おうか」
それは清政と兵治だった。
「お前達……何しに来た」
すると清政が兵治に親指をさしながら言う。
「こいつから聞いたぜ。変なの戦ってるようだな。手伝ってやろうと思ってな」
「聞いたと言うか無理矢理聞いて来たんだろうが……それにお前が無理矢理僕も連れてきたんだろうが」
実は清政は屋上の後からしつこく兵治に聞き続け、休み時間、昼休み、授業中に力を弱めた怒球弾を兵治に打ち続け、精神的にやられかけた兵治は撃つのを辞めてもらう代わりに悪魔猫の事を話てしまった。
「ありがとよ」
「俺はあの戦いでのお礼もある……それを返しに来ただけだからな」
兵治の説明の元、修行が始まった。
「まずは反射神経の問題だな。僕も昨日少しだけ見たが、目の前に現れるまで分からない。だから初心に戻り、素早い攻撃を避ける練習をしよう。清政の怒球弾で練習だ」
「俺の怒球弾で⁉︎」
「あぁ、怒球弾は目にも止まらぬ速さだ。まぁ影山はあの戦いでも怒球弾を見切っていたが、少しの練習にはなるだろう」
「よし!やるか!怒球弾を頼む!」
「ちっ、いい気はしねぇがやるか!」
そして兵治の指導の元、修行が始まった。
「僕も清政もキツイ修行をして来た身だ。キツイかもしれないが我慢しろよ」
「まずは10m離れた場所から怒球弾を撃ってくれ!」
「OK!!」
「あぁ!」
雅斗と清政は10mほど離れ、清政は怒球弾を撃つ準備をして、雅斗は目を瞑り清政の撃つ軌道を予測する。
「行くぞ雅斗!!怒球弾!!!」
怒球弾を放ち、雅斗は怒球弾の来るタイミングを計る。
「ここだ!!」
首を傾げ怒球弾を避けた。そして兵治は次なる指示を清政にした。
「今度は怒球弾を連続で撃ってみろ。それを全部避けろ」
「へいへい……」
渋々と怒球弾を何発も雅斗に撃つ清政。目を瞑ってる雅斗は何発撃っているかは分からない。だが雅斗は全ての怒球弾の動きとタイミングを読んでを避けた。
「何とか……避けれた……」
「次行くぞ」
そして次は清政が公園の何処かに隠れた。
「次はもっと難しいぞ。今度は怒球弾が来るか分からないぞ。清政がこの公園の何処かにいる。そして急に撃って来る。それを避けろ」
「あぁ……分かった」
雅斗は目を瞑り集中し、静かに風が吹く公園で兵治が見守っている。そして……
「痛っ……!」
頭後方に怒球弾が飛んで来て頭に直撃し、倒れた。清政が建物の陰から出て来た。
「だ、大丈夫か?」
「あぁ……大丈夫だ。それより、もう一度してくれ……」
「……分かった……」
その後、清政は怒球弾を放ち、雅斗はそれを何発も何発も身体中に直撃した。
兵治も何も言わずに修行を見ていた。
1時間後の夕方、空はオレンジ色に染まる中、雅斗の身体中に痣が出来て、身体もボロボロになって来た。
「まだやるか……お前のボロボロだぞ……」
「まだまだ、もう直ぐだ……もうすぐで分かるはずだ。やってくれ!!」
「分かった」
再び静まり返る公園……目を瞑り雅斗は精神を集中する。そして……
「ここだ!!!」
怒球弾の直前で読み取り、避ける事が出来た。
「お前……やったぜ!!」
「あぁ……ありがとな……」
疲れた果てた雅斗の肩を持ち、体を支える清政。それを遠くから見ていた兵治も出て来た。
「やはり……姐さんが言ってのは間違ってなかった……奴は……まだまだ強くなる……」




