爆裂‼︎蒼穹怒球弾‼︎‼︎ ⑵
蒼穹怒球弾……その名前を聞いた瞬間、兵治は身震いを起こした。
「まさか……奴があの蒼穹怒球弾の伝承者だと言うのか⁉︎」
蒼穹怒球弾……それは千年以上続くと言われている寺……神桜寺に伝わる奥義の一つである。それは対となる技紅穹怒球弾の2つがあり、伝承者候補となる何十何百もの候補者達が激戦を繰り広げ、残った2人は蒼穹怒球弾、紅穹怒球弾のどちらかを取り合う。速さの蒼穹怒球弾、力の紅穹怒球弾。勿論これも戦いで決めるのであった。
「速さの蒼穹怒球弾……こんな所で拝めるとは……」
雅斗も名前を聞いただけではどんな技か分からず全く警戒してない。
「蒼穹怒球弾?何だそれ?」
「今に見ていろ……その身体ごとぶっ飛ばしてやる……」
足を軽く曲げ、左手を開いた状態で突き出し、そして右手拳を少し後ろに下げる。全ての力を右手の拳に集中させる。清政の顔は鬼のような強面になり、歯を食いしばった。
雅斗もこの状況を流石に気付き始めた。
「明らかにさっきの技より力を感じる……とんでもない技が来るっ……」
そして清政は右手を更に後ろに下げ、叫んだ……
「蒼穹怒球弾!!!!!」
はち切れそうな大声と共に、拳を全速力で前へと突き出す。目にも見えないスピードで雅斗へと球体状のエネルギーが飛んで行く。地面は直線上に抉られ、雅斗は避ける暇もなく攻撃をまともに食らい、爆発音と共に辺りは土煙に包まれた。周りの部下達や兵治がいる土手まで強風が吹き荒れ、身体を支えるのがやっとだ。そして橋にもヒビ割れが生じた。
「これが蒼穹怒球弾っ⁉︎何て威力だっ⁉︎」
予想以上の威力に兵治も蒼穹怒球弾が起こした強風に押され気味になる。
「影山の奴……蒼穹怒球弾をまともに食らいやがった……でも、微かに魔力を感じる……」
雅斗がいる場所に砂煙が舞う中、清政は勝利を確信していた。だが蒼穹怒球弾を放った右肩を押さえている。
「はぁ……はぁ……流石に蒼穹怒球弾を喰らえば……まとも立っていられるはずはない……」
砂煙が収まると、その中から人影が見えてきた。それは悪魔の右手で蒼穹怒球弾を受け止めた雅斗だった。制服は肘部分まで消し飛び、スボンやシャツも全体的に誇りを被り、ボロボロになっている。
「これじゃあ……美呼に……怒られちゃうなぁ……」
「何っ⁉︎蒼穹怒球弾を受け止めただと⁉︎」
「ありがとな……ロジ……」
(ちっ……こんな所で死なれちゃあ困るんだよ)
蒼穹怒球弾を放った瞬間、ロジはとっさに雅斗の身体を乗っ取り、瞬時に悪魔の右手で攻撃を止めたのであった。だが雅斗の体力は風前の灯火だった。清政は呆れたように笑う。
「ふっ……本当に凄い奴だ……ここまで熱くなるなんて俺らしくないな……でも!」
ゆっくりと雅斗の元に向かい、雅斗の顔を1発殴った。怯んだ雅斗だが反撃するように清政の顔を殴り返す。これ何回も何回繰り返し殴り続けた。だが2人とも笑っていた。何かを楽しんでるように……そして清政は雅斗の橋の下に殴り飛ばした。
「ぐわっ……!!」
痛みを堪える雅斗。そして橋の壁に背を向けている雅斗の前に清政が再び右手を下げ始めた。今度は至近距離、雅斗の体力はほぼ無い。
「今度こそ終わりだ!!蒼穹怒球弾!!!」
腕を突き出し蒼穹怒球弾を放った。そして橋の下で爆発音が炸裂した。煙が舞う中、橋の壁はヒビが入り、ヒビはどんどん上の方へと伸びていく。そして橋のコンクリートの破片か少しずつ崩れ始めて来た。上を見てそれに気づいた清政は橋の上にいる部下に言う。
「みんな橋から離れろ!!崩れるぞっ!!!」
清政は煙の中から雅斗を探している。だが煙が舞って何処にいるか全く分からない。
「勝負は俺の勝ちだ!早く出て来い!!崩れるぞ!!」
すると橋の瓦礫が清政の真上から落ちて来た。
「しっ……しまっーー」
清政の頭上に当たる瞬間、煙の中から雅斗が素早く動き清政を橋の下から強く押した。
「お前っ⁉︎何を⁉︎」
橋の下に突き飛ばされた清政。だがその瞬間橋全体は崩れ、雅斗は橋の下敷きされた。
「おい!!野郎ども!!早く瓦礫をどかせ!!!」
怒涛の声を前に部下達はすぐさま瓦礫を退かそうと向かう。兵治も心配そうに見ている。
「影山……」
部下達が瓦礫の山に到着すると一個の瓦礫が小刻みに動いていた。
「清政さん!!これはっ!!」
瓦礫の中から手が伸びて出てきた。そして瓦礫を自分で吹き飛ばし中から出来てた。頭から血が流れ、身体至る所に傷跡が残っている雅斗の姿だった。
「あいつ……」
清政はすぐさま雅斗の所へと痛みを堪え走っていく。そして正座して土下座を始めた。
「俺の負けだ……だが何故俺を助けた……」
すると雅斗は拳を握りしめて言った。
「宮下先生は言っていた。助けろ……どんな時も助ける事を忘れなと……それがどんな奴であろうと……」
「後どうやって蒼穹怒球弾を避けたんだ……」
「俺の力じゃない……俺の中にいる悪魔がやったんだ……」
「悪魔だと……」
あの時、蒼穹怒球弾を撃った瞬間再びロジが身体を乗っ取り瞬時に避けたのだ。そして雅斗の精神に戻った瞬間、清政の上に瓦礫が落ちてきたのが見え、そして残った力を振り絞り助けたのだ。
「俺が強いんじゃない……俺の中にいる悪魔の力が強いんだ……」
「ふっ……悪魔の力か……面白い力だ……」
兵治は背を向けて帰っていった。
「悪魔の力……やはり侮れない存在だな……」
清政は仲間を集合させ、宮下先生の事件について聞く。その時清政は1人怪しい人物が浮上した。
「おい!柳来い!」
「は……はい!」
それは清政達のアジトで雅斗をバイクで囲んだ副リーダーの柳だった。
「お前……最近バイクを買い換えたと言ったなぁ〜」
「はっ……はい……」
柳の身体からは冷や汗が流れ、体も言葉も震えていた。清政は優しく言っているように見えるが柳からは鬼のように見えた。
「いつ買い換えたんだぁ?」
「た、確か……2週間前です……」
「事故があったのはいつだ」
と雅斗に聞く。
「1週間前だ……」
すると清政は怪我した右手で柳の顎からアッパーを食らわせ、川まで吹き飛ばされた。
「ぶぐっ!!」
「この嘘つきがっ!!俺は全員のバイクを把握してんだよ!!お前が買い替えたの1週間前だろうが!!」
そして再び雅斗の前で土下座をし、頭も地面に引っ付いている。
「本当にすまない……許さない事は分かっている……お詫びとして俺を煮るなり焼くなりなんなりと気がすむまでやれ」
すると雅斗は清政の左肩を持ち、優しく問いかける。
「先生はそんな一方的な暴力は望んでいない……それより1つだけやって欲しい事がある……」
「何だ……」
「謝って欲しいんだ……先生の家族に……」
「分かった……全員で行く……もちろんあいつにもだ……」
そう言うと雅斗は右肩を押さえながら、夕日に照らされながら帰って行った。清政は帰って行く雅斗に大声で叫んだ。
「お前の名前は!!」
「俺は……影山雅斗だ……覚えておけ」
そして雅斗は静かに帰った。
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雨の降る夜……家では……
「どうしたの雅斗⁉︎そんなに制服破れちゃって⁉︎」
「いや……色々とあって……」
問いただす美呼だが、ニュースから今日の夕方の出来事が放送されていた。
「今日の夕方、静館橋が崩れていた事が分かりました。原因は調査中との事ですが、話によるとこの近くの暴走族と静館高校の生徒が関係している模様です。」
そのニュースを見て美呼は雅斗の制服を再び見た。
「まさか……雅斗が⁉︎」
「い、いや……俺は……そんな事……」
すると美呼はテレビを消した。
「……ま、雅斗がそんな事するわけないよね……」
「う、うん……」
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その頃、宮下先生の家。奥さんが1人で椅子に座っていた。するとチャイムが鳴った。
「こんな時間に誰かしら?」
ドアを開けると雨の中清政を含む全部下が土下座をしていた。
「俺達は本当に申し訳ない事をしました!!本当にすいませんでした!!」
そしてボコボコに顔を殴られた柳が宮下先生の奥さんの前に来て土下座した。口や顔が腫れており奥さんもびっくりした。
「ほ、本当にすびばせんでした……私が……宮下ざんを……引ぎまじだ……すびばせん……すびません……」
柳は何度も何度も泥の地面に顔をつけ謝った。清政達も何度も何度も頭を下げた……
これで宮下先生が許してくれるか分からない……でも雅斗は宮下先生の事を絶対に忘れない。大切な事をいっぱい教えてくれた恩師の事を……




