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お前の名は……⑵

 

  青空の温かい朝小鳥のさえずりと共に起きる雅斗。目一杯背伸びをして目を擦る。すると呆れた声で悪魔が聞いてきた。


(俺の名前は決まったのか?)

「あ〜名前ね。昨日寝ちまって……」


  頭を掻き、とぼけた顔の雅斗。するとドアから1人の痩せた中年の男が入って来た。


「おじさん!」

「雅斗君もう大丈夫かい?」

「はい!お陰様でもう元気になりました!」


  おじさん、その人物が来た瞬間子供のように喜ぶ雅斗。そして看護婦も入って来る。


「雅斗君もうすっかり元気ですね」

「ありがとうございます」

(あいつは誰だ?)


  おじさんが看護婦と世話をしてる間、悪霊があの男の事を聞いて来た。雅斗はボソッと小声で答える。


「あの人は美呼のお父さんで、俺の世話を見てくれている恩人だ」


  美呼のお父さん、名は勝。雅斗の親がいなくなり、その時に家に住まわせてあげようと決めた人物であり、雅斗にとっては命の恩人とも言える人だ。


(へぇー)

「何だよその態度……」

「じゃあ雅斗君、帰る準備するから待ってね」

「あっ、俺も手伝います!」


  荷物を纏めようする、勝に一緒に片付けを手伝う雅斗。慣れない手つきで、服を折りたたみ、バックに詰める。勝は慣れた手つきで綺麗に服を畳んでいる。そして看護婦に笑顔で見送られ、病院を車で帰った。

  その帰りの車の中、勝は美呼の事を落ち着いて喋り出した。


「美呼から聞いたよ。学校での出来事を……」

「えっ?」


  思わず勝の方を振り向いてしまった雅斗。美呼が学校で悪魔の事を話したのかと焦りを見せる。


「学校で残っていたら、謎の爆発に巻き込まれたって」

「はい……」


  美呼は悪魔の事を家族には言わなかったようだ。


「その時、美呼を守ってくれて本当にありがとう。2人共重大な怪我じゃ無くて本当のよかった……」

「おじさんが僕にしてくれた事に比べればこれくらいは当たり前です」


  雅斗は神妙な面持ちで言う。勝は心底2人の無事が喜ばしいのか、車のスピードをあげて家へと帰宅した。

  家は一般的な住宅の一軒家。玄関を入ると、美呼と目がそっくりな女の人が奥のドアから出て来た。


「雅斗君!」

「おばさん!」


  この人は美呼の母親、名は理美。この人も雅斗を育ててくれた1人。理美も嬉しそうに雅斗を抱く。


「元気そうでよかった」


  ホッとし、喜ぶする理美。


「すいません美呼はいませんか?」

「あの子なら今は学校に行ってる頃ね。壊れた教室が治るまでは別の教室を使うみたいで、今日から登校がOKになったようね」


  学校は今3階が崩壊しているが他はあまり壊れていなかったので、修理する間は別の教室で授業する事になった。


「そうですか……」

「今日はまだ休みなさい!学校は明日からよ!」


  そう言うと理美は雅斗の背中を軽く押す感じで叩く。


「はい」


  笑顔で答える雅斗。そして2階の自分の部屋へと入る。部屋は勉強机と本棚。本棚には霊関連の本や様々な小説が置いてあり、漫画は一切ない。テレビやベットも置いてあり、小綺麗な部屋である。悪霊はこの部屋のこの事を聞く。


(ここがお前の部屋か……)

「ああ、ここが俺の部屋だ」


  雅斗はベットへと寝転がり、頭に手を組んで、目を瞑る。


(また寝る気か?)

「やはり自分の家が1番落ち着くんだよ。それにお前の名前も考えてるんだよ……」

(決めるなら早く決めてくれよ)


  だが数分後雅斗は再び軽い寝息を立ててスヤスヤと寝てしまっていた。


(ちっ……)


  呆れて物も言えない悪霊。1時間後、勝おじさんが見に来た。軽くドアを開けて小声で話しかけた。


「雅斗君……」

(おいお前‼︎このガキを起こせ‼︎)


  悪霊は勝おじさんに言うが、勿論聞こえる訳もなく勝おじさんは寝ている雅斗を見てちょっと笑顔になり物音を立てず、ゆっくりとドアを閉めた。そして静かに時間が経っていった。


(暇だな……)


  夕方、空はオレンジ色に輝き、窓から光が差し込む。すると家の玄関から急ぎ足で廊下を走り、階段も大急ぎで踏みしめ、部屋に入って来た。それは息切れしている学校帰りの美呼だ。


「雅斗……よかった……帰ってきてたのね」

「学校も明日から行けるさ」


  優しく微笑む雅斗。美呼は安心したか地面に崩れ落ちるように膝をついた。


「大丈夫か⁉︎」


  心配してベットから降り、美呼に寄り添う雅斗。美呼も作り笑いで雅斗を安心させようとする。ダメな自分を見せたくないと笑顔で対応する。


「大丈夫……大丈夫だから。雅斗も今日は休んでいてね」


  優しく弱々しい声で言うとゆっくりと立ち、部屋を出て行った。雅斗は美呼を追わず、三度ベットに寝転がる。ずっと起き続けて1時間後、理美おばさんの声が1階から聞こえてきた。ご飯の時間と。その声と共に勝おじさんも美呼もリビングに集まる。雅斗も急ぎ足で階段を下る。その間も悪霊はご飯と聞きどんな美味しんぼ物があるか、すごく楽しみにしていた。

 

 リビングにはハンバーグやサラダなど色んなおかずが配置されており、理美おばさんがご機嫌な様子でご飯を茶碗にいれ雅斗に渡した。そして4人は


「いただきます!」


 それぞれの食べ物を頬張った。美呼も笑顔で食べて雅斗はホッとした。雅斗がハンバーグを小さく箸で切り食べると悪霊の喜びの叫び声が響いた。


(な、何だこの美味い食べ物は‼︎)

「うわっ⁉︎」


雅斗は思わず周りを確認してしまった。


「雅斗君どうしたの?」

「い、いや……」


  勝おじさんに尋ねられた。そこで雅斗が咄嗟に浮かんだのは


「久しぶりの家の食事で、ちょっと嬉しくなって」


  軽く笑いながら答えて、その場をやり過ごした。この様子を見て、みんな笑って食卓は笑顔を囲まれた。


(ふぅ〜美味いなぁ〜ハンバーグって)

「ビビらせやがって……バレたかと思ったぜ」


  1人先に食事も終わり2階に戻る雅斗。悪霊も腹一杯と大満足だった。悪霊のせいでちょっと怪しまれたのに呑気な奴だと思う雅斗。だけど部屋に入ると一言悪霊に言う。


「お前の名前が決まった!」

(本当か⁉︎)


  嬉しそうに驚く悪魔。


「お前の名は……ロジだ!!」

(う〜ん)


  何か不満に思う悪霊、そして名前の由来を聞いてきた。


「路地裏にいたからロジだ!!」

(まぁ……名前ないよりかはいいかな……)


  路地裏にいたからロジと言う決めからに少々疑問に持つ悪霊だが、渋々その名前に納得したが多少に気にしてる様子のロジでだった。


「よろしくな、ロジ」


  軽い感じで言う雅斗。


(よろしくな……)


ロジはぎこちなく言うのであった。



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