路地裏から聞こえた声
霊や悪魔というものは、この世に存在するのか?多くの人は疑問に思っている。テレビでも心霊写真や霊能力者などがいるし、悪魔に取り憑かれた人が、悪魔祓いの人にお祓いをしているのをよく見る。多くの人はこの人霊能力者なのか?とか本当に悪魔に憑依されてるのか?と馬鹿にする人もいるだろう。
嘘も存在すれば、本当も存在する。この世に存在しないと思われているものを人は認知しない。自分が見た事無いからだ。100人に幽霊を生で見た事あるか、と聞いて何人見た事あると答えるだろう?見えないと誰も信じてくれない。それが現実だ。
それに悪魔の事が現代にも伝わっているのは何故だろう。伝説や神話などから伝わっているからか?本当に悪魔を見た人達が歴史を繋いで、我々に伝えているからか?
2つ共、見えないけど存在が認知されている。それは本当に実在するからだ。悪魔や霊は実在する…我々のすぐそこまで……
*
6月──この日は雨の日。梅雨の時期で毎日の様に雨が降っている。道行く人達は皆傘を差していて、それだけ強い雨が降っている。
俺は、影山雅斗高校1年生。見た目は普通の高校生だが、普通の人にはない能力がある。それは…幽霊が見えることだ。生まれつき見えていて、赤ちゃん、サラリーマン、おじいちゃん、動物など何でも見える。周りの人は俺の事を変な奴と言い、変な目で見られ続けて避けられてた。
学校へ向かう途中だけど勿論今も幽霊が普通に見える。道路の真ん中に片方の眼鏡が割れている身長の高い中年男性が立っている。それは宮下先生で、俺の担任をしていた先生だ。それが数日前の夜の繁華街にて事故で亡くなった。原因はこの街の暴走族の車に轢かれて、即死だったそうだ。暴走族は未だ捕まっておらず、捜査も難航してるらしい。この時代なのに珍しい事だ。
今日も先生は俺を方向を見て何かを言っている。実は俺、幽霊が見えてもしゃべっている声などは聞こえない。いつも幽霊達は俺に必死に何かを言っているが分からない為、無視している。これが何年も続いていると慣れてきた。
俺は周りの目を気にせず先生に一礼し、この場所を後にして歩道橋へ登った。だがこの時、奇妙な出来事が起きた。
「ん?」
『おいで……おいで……』
低音の声がはっきりと聞こえた。おいで……おいで……と。だが今は強い雨が降っており、近づいて話さない限り、聞こえないレベルだ。それに霊から声を発する事もないし、今までにこんな事は一度もなかった。
周りに俺に話しかけた人はいないし、はっきりと何かが話しかける声が聞こえた。それに周りの人は声が聞こえないのか何も気にせず、普段通りに歩いている。
「何だ……」
『こっちだ……こっち……』
再び同じ声が聞こえ来た。やはり何処かに呼ばれているような感じがする。でもやはり何かが俺に話しかけて来てると思う。とうとう幽霊の声も聞こえる様になったか……霊的な事には慣れてるから、ビビる事はない。だけどハッキリ聞こえたのが気がかりだ。
歩道橋を降りて、走り始めた。そして近くのコンビニを通りかかるとまた聞こえた。
『こっちを向け』
コンビニと薬屋の間にある路地裏から声が聞こえて来た。奥は真っ暗で、どんよりとした雰囲気が漂っている。明らかに異様な雰囲気で寒い風と雨が肌に当たる。
「ここから聞こえたのか……」
学校への時間が無いのは分かっているが、あの声の正体が気になって来た。だがこの時、俺は後に様々な事に巻き込まれるなんて思ってもいなかった。
そんなことを知るよしもない俺は路地裏に足を踏み入れた……