引きこもりの勇者を召喚したのは魔王でした
―――:てきとー同盟:ギルドハウス:―――
そして、第2回の攻城戦が始まった。
攻城戦が始まる前のお約束のカウントダウンは、≪てきとー同盟≫ではギルドハウスで行った。
コントロールルールですぐさま操作をすると、上空から敵の勇者や冒険者の姿を映し出す。
「あそこと、あそこ。≪隠密≫スキルで隠れているわね」
「ぱねぇな。≪鑑定≫スキルは。ウィンドウ越しでも発動するのかよ」
そうして、敵の動向を見ているうちにラララたちは気づいた。
「そして不味いわね……。敵勇者たちが≪使役≫スキルで普通にモンスターから襲われるののを回避しているわ」
それに勇者の一人が声を掛ける。
「迎撃しますか?」
「まずは≪熱核爆裂弾≫で薙ぎ払いましょう。魔王城に行って。有効射程範囲に入ったら撃てる? タイミングはこちらから指示する。指示はコヨイハさんができる?」
「OK-」
「分かりました――」
そうして、静かに戦いが進行していく。
敵がこのままの速度で進むなら、≪熱核爆裂弾≫の射程範囲に入るのは、あと10分後だ――
・ ・ ・ ・ ・
―――:DMM。ログイン画面:―――
そんな中、ログイン画面でいまだ引きこもっていたユウジは、今日もまた遠野那由他といちゃついていた。
「しかし、攻城戦中はログイン画面ですら背景色灰色になるとかやめて欲しいんだが……」
「一応はメインのPvPイベントですからぁ、そのくらいはやると思いますけどぉ?」
遠野那由他はいつもの間延びした口調で答える。
しかし、そこにクルス・アマト―の姿はいなかった。
ギルメンにクルスを契約されて取られてしまったのだ。
その本体は元気に攻城戦に参加しているようだ。
「やっぱり人気SSRキャラだよねぇ、ギルメンに盗られるのも分かるなぁ……」
「確かにクルスちゃんは可愛かったですからねぇ」
「――もしかして、那由他も取られたりするのかな? なんかこんなこと言うと死亡フラグみたいな気がするけど」
「私は大丈夫だと思いますよぉ? 完全防備な塔に引きこもっていますからぁ。レベル的には110くらいかな?」
「そっか……」
現在のレベル最大値は30である。
それならまだ先かとユウジは安心した。
「だけど……、あれ? そんな……、まさか……」
「ん? どうした? 那由他?」
「いや……、いやぁーーー!」
そんな風に遠野那由他はユウジが聞いたこともないような声で叫ぶと、光の粒子となって消えた。
そしてその代わりに1枚のカードがひらひらと舞い落ちる。
それは、遠野那由他の分霊カードだ。
おそるおそるそのカードをユウジが見ると、状態としてDEATH/FORCE NTRという表示があった。
・ ・ ・ ・ ・
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ぎゃー。タスケテ―
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なによ? いま攻城戦ちゅうだよ。
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なんか、俺の遠野那由他がDEATH/FORCE NTR状態になっているんだが。
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え!?
それって攻城戦中に殺されて強制契約されたってこと?
酷いことするねぇ。
そしてこの攻城戦終わったらその娘はどうなるか…。
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助けてくれよ。なんでもするから! 俺は那由他のことが好きなんだよ。
でも俺はレベル1なんだよ! 今更出ていったとしてもどうにもならないんだよ。
だから、助けて!
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ん? いま何でもって言った?
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そんなこと言って。あの娘は≪始まりの魔女≫なのよ。
かつて魔道王国で魔族の製造を≪応援≫し、そして王国を亡ぼした張本人!
私たちがそんな娘を助けようなんて気になるとでも思うの?
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は? なにそれ?
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呆れた。そんなことも知らないの?
彼女の過去も聞き出せないで好きとか、なにいってるのよ。
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敵! 撃ってきました! 予想通り、≪熱核爆裂弾≫です!
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撃ち返せ! 予定通り同じ≪熱核爆裂弾≫で対消滅させるんだ!
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はッ!
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過去のことなんざ知るかよ!
下手に聞いて元カレの話とか出てきたらどうすんだよ。
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ほう。過去なんてどうでもいいと仰る?
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おい、ギルマス! そのへんでやめとけ!
なんかラララたん切れてんぞ。
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あぁ、過去のことなんざどうでもいいね。
容姿が可愛いから好きだ。
性格がいいから好きだ。
傍にいてくれるから好きだ。
何が悪い!
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ほう。どうでもいいと。過去なんかどうでもいいと言うのか君は……。
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あぁいいね。
今が、そして未来が楽しければそれでいいんだよ。
俺はアリとキリギリスならば、キリギリス派の男だ。
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たとえ全てを敵に回しても?
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あぁ。そうだ。
そうか――。俺は勇者だったか。ならば魔王に魂を売ってでもっ、てのか最上級か?
売ってやろうじゃないか。とにかく俺は、助けたいんだ。
遠野那由他を!
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ぎゃー、なんかギルマスがラララたんの地雷踏み抜きやがった!
ラララたん突然笑い出してるし!
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あぁ!
あーぁ!
分かったよ。分かったから。少し黙れギルマス!
――ならばギルマス、しばらくそこから出ずに待機していな!
貴様には最っっ高に劇的で、面白おかしい本編登場シーンを用意してやろうじゃないか。
お題はそうだな「引きこもりの魔王を召喚したのは魔王でしたとか」どうだ?
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おい、なんかラララたんの口調が変わっているんだが。
怖い、怖いよ…… (がくぶる
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だが、遠野那由他を助けに行くにあたって、私の力が足りない。
だから――、まず認めろ――
私が魔王であることを――
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は? まさか! ラララたん魔王だったの?
……………………
………………
………
…
そしてユウジの前に開かれるウィンドウ。
初めて表示される戦略的意思決定を問う選択ダイアログだ。
その色は通常の白色ではなく、ウゥトラバイオレットのシステムメッセージである。
そこには「勇者ユウジは三重継承の真実を『魔王』として認めますか?(Yes/No)」というメッセージが踊る。
構わずユウジはYesをクリックした。
すると、HPでもMPでもSPでもない、何かがユウジの中で消費された。
自分自身が何か薄っぺらくなるような、そんな脱力感が襲う。
(なにか、俺は取り返しがつかないことをしてしまったのか?)
しかし、それに答えるものは誰もいない――
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