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ここで私を抱かない?――最悪のバッドエンド

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―――:邪魔台国:魔王城:地下ダンジョン―――


 そうして、月日が過ぎ――

 攻城戦まで残り、あと1日となった。


 魔王城の監禁部屋にユウジは、遠野那由他はいつものように2人でいた。

 夜――あたりは静寂に包まれている。

 ユウジは、遠野那由他と同じベットの中にいる。

 ひんやりとした壁とは対照的に、白いベットの上は暖かい。

 枕が2つ、転がっている。


「今日も楽しかったよね……」


「あぁ、そうだな……」


 何気ない会話であるが、遠野那由他の声はどことなく寂しそうだ。

 遠野那由他は淡い青い麻のパジャマ着でユウジの正面にいる。


「ねぇ、後生だから、ここで私を抱かない?」


「あぁ。だめだね」


 ウジの決意は固いものだった。


「ねぇ、どうして……、どうしてそこまで意思を固くできるの――」

「那由他。それは君のためなんだよ――」

「本当にそうなの? 例えば――私に魅力が無いとか? ねぇそんなんでしょう?」

「そんなことはない――。キミに日本を殺したという汚名を背負わせたくないからだ」

「私はすでに魔道王国を亡ぼしたこともある女よ。1つ殺してしまえば後は何をしようと同じ。あと一つや二つ滅ぼした国が増えたからって罪は変わらない。ねぇ、本当は既に一国を傾け滅ぼしたような女には興味がないんでしょう? だから抱かないんじゃないの?」

「そんなことはない、そんなことは……」

「日本も、魔道王国も、国であることは変わらないじゃない」

「魔道王国など知るか! 魔道王国など忖度しろよ。俺はただ、俺の自国である日本という国を殺して欲しくないだけだ」

「私はね! ずっと君と一緒に過ごしていたいだけなの! 笑って君と過ごしていたいだけなの! ねぇ、それっていけないことなの? ねぇ抱いてよ。攻城戦が始まる前に! ラララさんならきっと、≪応援≫のスキルでさえも打ち勝って貴方を殺してしまう。だって彼女は本物魔王なのだから。だって攻城戦は殺されても本当に死ぬわけじゃない。殺されてても復活できる世界なのだから。私の≪応援≫スキルの効果は強力だけど無敵じゃないのよ――少なくとも抱かれる前の今は!」

「…………」


 ユウジを失う恐怖に遠野那由他は震える。

 遠野那由他は震えながらその身をユウジにあずけた。


「ねぇ、ユウジさんのためにおしゃれしてきたんだよ! ユウジさんのためにちょっと恥ずかしい恰好もしたよ! 胸とかもなるべく大きく見せるように揉んだし! 身体だっていつでも良いように毎日お風呂で洗って――」

「お前――、まさか那由他姉か?」

「――えぇ。そうよ」


 いつもと異なり、積極的な遠野那由他にユウジは彼女が姉と妹で交代していることに気づいた。


「妹に任せて置いたら今日もまた終わっちゃうじゃない。だから交代してもらったの」

「お前――」

「攻城戦でユウジさんが死んで――、その1時間後にはユウジさんが本当に死んで――、そして冷たくなっているのよ。そんなの、私が耐えられるわけないじゃないのよ!!」


 遠野那由他は涙ながらに訴えた。

 そして、実力行使にでようと、ユウジの頭を捕まえてキスしようと唇を近づける。

 だが、ユウジは遠野那由他を組み敷いて両手首をつかむことで押さえこんだ。

 遠野那由他は抵抗を見せるが――、すぐに身体を脱力させる。

 遠野那由他の肢体が無防備にユウジに晒された。

 遠野那由他のパジャマがめくれて、お腹の肌色が見えた。

 その黒髪が淫らに乱れている。


「ねぇお願い。一度だけで良いのよ。夢を見させて――」

「日本という国を引き換えにか?」

「えぇ。そうよ。貴方が妹にそういう罪悪感を持たせたくないのなら、私を犠牲にすればいいのよ」

「ダメだ。そんなことできるわけないじゃないか――」

「だから、どうして――」


 ユウジは組み敷いたまま乱暴に遠野那由他を抱き寄せる。


「あッ……。ユウジさん――」

「もうそれ以上言うなよ――。俺はなぁ、お前が大好きだ。お前の妹も大好きなんだよ。いまだって下半身ははちきれそうだし、その服を乱暴にやぶいてめちゃくちゃにしてやりたいくらいなんだ」

「だったら――」

「だからこそ! だからこそダメなんだ。お前に日本を殺す張本人のようなことはさせたくはないんだよ俺は!」

「ユウジさん……」


 ユウジは遠野那由他を抱きしめたままささやいた。


「なぁに、攻城戦では作戦をいろいろと考えているが、失敗するかもしれない。そして失敗したらしょうがない。キミと一緒に『日本死ね』を背負ってやるから。日本ですら忖度して、面白可笑しく過ごそうじゃないか。その結果が出るまで、それまで待ってくれ――」


 どこまでも楽観的なユウジの言葉に、遠野那由他は呆れる。

 ユウジはなにも考えていないバカである。

 遠野那由他は、そう言えば告白されたときも自分のことをほとんど知らないバカであったね、など思い出した。

 そんな愛すべきバカさ加減が遠野那由他は好きだったのだ。


「じゃぁ最後に一つだけ。朝までこのまま抱きしめて――。それで忘れるから――」

「なら一つだけ、『約束』を交わしてくれるのなら――」


 遠野那由他はその約束に頷くと、ゆっくりと目を閉じた――

 遠野那由他の頬から一筋の光が零れ落ちる――

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