公安の山本
―――:日本国:霞が関:―――
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コヨイハさーん。助けてぇー。彼ら何言っているのかさっぱり分からないのぉ。
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とりあえずだなぁ。ラララたんは可愛いから、『NA、NN、DE、YA、NE、NN』とでもいっておけば大抵のことはなんとかなるよ。
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NA、NN、DE、YA、NE、NNね。分かったわ。
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それからなにか否定するときは『TYA、UU、NN』だな。これを連呼する。
『ちゃうちゃうちゃうん』『ちゃうちゃうちゃうんちゃう』などと派生してもよいだろう。
相手が関西人ならきっと乗ってくれる。
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TYA、UU、NNね。分かったわ。
なるほど。それから気を付けることは?
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あ。そうそう。『MOH、KA、RI、MA、KKA-』と言われたら『BO、THI、BO、THI、DE、NN、NA-』と答えることだな。これが関西人と話すときにとても重要なことだ。
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ねぇねぇ。さっきから関西人って? それ民族かなにかなの?
それ本当に日本人?
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おなじおなじ。いいからやってみてよ。
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んー。コヨイハさんの言うことって、なーんとなく信用おけなくて不安だけどやってみるか……
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―――:日本国:霞が関:―――
良く小説などで出てくる公安に出てくる人名といえば「山本」である。
なぜ山本なのか、その理由は陽として知れなが、大抵の場合公安といえば山本だ。
山本は黒いノリでも好きなのだろうか。きっと白いご飯も好きに違いない。
山本一茶は、そんな意味不明な偏見をもった友人にのせられて、気づけば公安の職についていた人物だ。
根はいたって真面目である。紺の背広が良く似合う人物だ。ぱりっとした感じはせず多少よれよれであるが。それは常日頃の激務によるものなのか、それとも公安という職場のストレスによるものなのか。
職を拝してからおよそ15年。それなりの中堅どころとして、いろいろな事例に関わってきた山本だが、こんな例は初めてであった。
捕まえたのは一人の少女。しかも美少女だ。
そしてその容疑は航空法違反という前代未聞なのもである。
黒と白と赤の禍々しい着色で空を飛ぶ一隻の空挺護衛艦――
その艦艇がどこから来たのか、そもそもどうやって飛んでいるのか、まったく不明――
それに搭乗していたのが、この金髪朱瞳の美少女である。
ごてごてした骨のような装飾を伴った赤いマントを身に羽織る少女はどことなく王者の風格もあるにはあるが、風格もその身長が台無しにしていた。
その下は黒のブラウスにパンツという姿であり、大きめのベルトとあわせ麗人風の着こなしであるともいえるだろう。
彼女は興味津々といった様子で公安調査庁のある地下の取調室をきょろきょろと眺めているが、悩ましい問題が発生していた。
彼女はほとんど日本語が分からないのだ。
彼女が話す言葉は、最近話題となった異世界の言葉――無人機の映像をそのままTVは垂れ流していた――とよく似ていた。
そう、彼女は異世界人なのだ。
その彼女は時折、空中の何かを押すようなしぐさをしたり、見えないキーボードを叩くようなしぐさをして時々笑っていたりする。
何がそんなにおかしいのか、山本には分からない。
薄暗い取調室には面白いようなものはなにもない。
灰色の壁に一つの机、そして取調室によくある電灯程度しかない。
ともかく、向き合ったその少女に山本は尋問してみることにした。
「んー。それで? 名前は?」
「なんでやねん」
帰ってきた言葉は明確な日本語だ。
ただし、使い方がかなりおかしい。TPOをまったく弁えていないといっていいだろう。
少女は真顔だった。
もしかしたら日本という異国の言葉に対してまともな受け答えをしていると思っているのかもしれない。
「それで。どこから来たの?」
「なんでやねん」
「お前ふざけているのかッ!」
山本は机をぶったたいて怒りに震えた。
取調室の机は相手に脅威を与えることを目的に耐久力は弱い。
机は叩きによって震える。
山本がやっているのは正確には怒っている振りである。これで発言を引き出せるなら儲けものだ。
しかし、少女も同じように机をたたく。
彼女が振りかどうかは判断が付きにくい。少なくともなんとも思っていないように見えた。
物おじしない性格なのか、経験的にずぶといのか。どちらだろうか?
「なんでやねん!」
顔はまっかにしながら少女はそれだけを答えた。
まるでそれだけしか答えてを知らないかのように。
「おぉらぁ! お前は関西人かッ!
しかしその発言にピクリと少女は反応する。
山本はそこで「おや?」と思う。関西人に何かあるのだろうか?、
少女が次に答えたのは、なんでやねん以外の初めての言葉だった。
「ちゃうんちゃう?」
「おまえ……、ちゃうちゃうちゃう?」
「ちゃうんちゃう?」
「く……。おまえは……。もしかして挨拶も『儲かりまっか―』とかなのか?」
「ぼちぼちでんなぁ」
「馬鹿にしてんのかッ。こらぁ!」
山本はこんどこそ本気で強く取調室の机を叩いたが、少女にまったく堪えた様子は見られない。
この少女こそ、大陸の南部地域を支配する魔王なのだからそれも当然であるが、そんな事情を知らない山本は訝しがる。
「なんでやねん!」
「く、くそ。こんな『なんでやねん』だけ流暢な言葉を話せるのに……」
山本はガックリとうなだれる。
少女は勝利を確信したようにドヤ顔だった。何か意見が通ったとか思っているのだろうか。
そして少女は言うのであった。
「なんでやねん」と。
そうこうしているうちに、山本は取り調べ室の外から呼び出されているのに気づき、慌てて外にでる。
取り調べ室の入口には慌てた様子の同僚が立っていた。
「ちょっと見てください!」
「どうした?」
「それが、霞が駅から国会議事堂前に抜ける通路にこんな張り紙が……」
そういいつつ同僚はタブレットを取り出す。
そこには霞が関の地下通路に張られたポスターが映し出されている。
「ぶっ。なんじゃこりゃ」
そこには「ひと狩りやろうぜ! 捕らわれた魔王を救出せよ――」などという煽り文句とともに、両手を組んで祈るヒロイン然とした魔王の少女――それがどう見ても取り調べ室にいる少女とそっくり――なイラストが描かれていたのだ――
「くっそ。誰かは知らんが完全におちょくってやがるな……」
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―――:日本:霞が関:―――
「それで、鹵獲した飛空艇に関してはどうだ?」
三藤首相は官僚その他を集め対策を協議していた。
答えるのは林江統合幕僚会議議長だ。
「それが……、さっぱり分かりません……。変な装飾品などもありますが、それでなぜ飛ぶのか……」
「システムは動力も分からないのか?」
「はい。今の科学力では――。破壊検査をすれば詳しいことは分かると思いますが、それもどうかと思いまして」
「で、その艦艇にいた少女についてはどうだ?」
次に尋ねられたのは野岡警視庁公安部だった。
公安調査庁には鹵獲した船に乗っていた少女が預けられている。
「何を言っているかさっぱり分かりません。言語体系が不明です。唯一話した言葉は『なんでやねん』と『ちゃうちゃうちゃうんちゃうん』でして」
「くそ関西人め。その言葉を教えたヤツには月島も〇じゃでも食わしてやれ」
「少女にはいま日本語学習プログラムを使って日本語を教え、さらなる情報を収集しようとしています。
それから、少女のイラストを発注したポスターも大阪の四条畷からでした。今はその線で洗っていますが……」
「日本をこの異世界に引き込んだ連中が日本人であるならば、そこをまずは突き止めるしかないな」
「必ずや」
「それから林江くん。相手国の方は大丈夫かね――」
「こちれは順調です。成田で現在のところ調整中となります」
「よろしい。それでは内と外の2面で調査を進めてくれ――」
大阪から発注されたポスターだが、それは代理店でさらには米国社からのインターネット経由での発注であり、捜査はそこで暗礁に乗り上げる。
さらに気象庁の気象衛星からの情報など、日本政府以下は多すぎる情報により混乱に拍車を掛けていくのだった。




