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おぉ、勇者よ。死んでしまうとは情けない

 そかしその捕縛戦は一瞬で片が付いた。

 隣にいたフェイノが咄嗟に抱きついてきたのだ。

 そしてそのまま押し倒される。

 いくら力のない王女とはいえ、さらなる引きこもりヤマダがそれを押し返す力はなかった。

 というか、その柔らかな体を突き飛ばすとかヤマダには無理であった。


 邪神アマト―は悠々と近づくと、ヤマダを土下座のような体制にさせ、そしてその背に座った。

 この体勢を文字記号で表すならOrzだろう。

 このr部分の頂点に邪神アマト―の尻がある、ヤマダはそう思ったが理解できる少ないか。


 これが世に言う、尻に敷かれる状態であった (物理)。


「いやぁー、死ぬかと思った」


「それにしてはまんざらでもない様子だったではないか。主神の勇者よ」


「あれだけの集団を一度に相手はできませんよ」


 実際には1人に倒されたわけだが、それは黙って置く。


「なんだ。1人づつなら良いのか?」


「――考えさせてください」


「ふっ――。気が向いたら毎日我(われ)がしてやろう」


「ところで、とりあえずどいてくれませんかね」


 捕縛されたヤマダは身動きすることができない。

 STR1のヤマダではこの状態から逃れることはできなかったのだ

 また、決してその状態が嫌なわけでもない。

 邪神とはいえ彼女は女性であり、そして神に相応しき大人の美貌の持ち主であったのだ。

 ヤマダにとってはご褒美であるかもしれない。


「どかぬ。せっかくの男だ。捕まえたら踏むとか座るとかするのは王道であろう」


「それ、どこの世界の王道なんです?」


 王道というか、女性なのだから女王道なのだろうか。

 いや。もしかしたらこの世界には女神道とかあるのかもしれない。

 ヤマダそれを「こんな世界(ファンタジー)は嫌だ」の筆頭にあげることにした。


 しかし邪神だからだろうか、ヤマダ的には長身の邪神に鞭を持たせればさらに似合いそうな気はした。

 だが実際に持たせればぴしぴしとしばかれそうである。


「我が楽しいのであれば良いではないか。良いではないか」


「あぁ、やはり重要なことは2回いいますか……」


 どうやらこの邪神は自分が面白ければなんでも良いという性格らしかった。


「それで我に神聖魔法を学びたいとか」


「あぁ、はい」


「であれば何か代償が必要だぞ。何が良いか……」


 ヤマダは代償と聞いて身を震わせた。

 魔王は勇者を堕落させるという目的があったが、邪神はそうではない。

 無償というのは確かに虫が良すぎるというものだろう。


「とりあえずもげてみれば良いだろうか」


「もげる? 何を?」


「えーっと、立派なご息子をだな」


「それ、女の子になれって言っています?」


「あぁ女性はいいぞ。女体の神秘が探求できる」


「――なぜに自分の身体で神秘を探求しなきゃならんのだ」


 あまりに不穏な発言にヤマダは身を震わせる。

 一瞬、ヤマダは大事なところに手を当てようとしたが、土下座の上に座られた今の状態では身動きすることも叶わなかった。


「だいたい神聖魔法を覚えるのになぜ女性じゃないといけないんだ」


「我が使徒になるのだから当然であろう。神の使徒が巫女であるなら、我の場合は卑巫女である。巫女は女に限る。常識だ。猫耳でナースであればさらに良いぞ」


「猫耳でナースって、そりゃどんな風俗かってんだよ」


「我は邪神である! 世俗に染まってなにが悪い」


 邪神は引きこもりの名に恥じぬ残念な思考の持ち主だった。


「だいたい巫女限定ってのがいただけない。神官だっているだろう? だいたい邪教の使徒なんてえろいおっさんとかが相場じゃないのか?」


 それは明らかにヤマダの偏見であった。


「第一の理由はその方が我が楽しいからだ。異論は認めない。可愛い子が求めるならすぐにでもしてやろう。だがお前は男だ。BLならともかくNLとか趣味じゃないからな」


「……」


 どうやら神聖魔法はあきらめた方が良いだろうと俺は思った。

 さすがに女になるにはヤマダには躊躇われた。まだ使ったこともないのに。

 というか、BL? NL? なんのことだ? ヤマダにはよくわからい単語がでてきた。

 だがBL推測できる。ボーイズなんとかだろう。NLも似たような感じか。男の子は知ってはいけない世界のような気がしてきた。


「神聖魔法は置いておくにしても、多少のスキルくらいなら譲渡するか。封印を解いた祝いだ。それに勇者に乞われて何も与えないなど女神の沽券に関わるし」


 そういって、魔王と同じように邪神アマト―は空中で何かを操作する。

 ヤマダの耳元で響くおなじみのじゃじゃーんという音がする。

 ヤマダに何かのスキルが譲渡されたようだ。


「とりあえず邪神の加護として不老不死Lv.1を渡しておいた。称賛するがいい」


「おぉ、それはすげぇ」


 ヤマダはそのスキルに手をぷるぷるさせながら喜んだ。

 正確には手がぷるぷるしているのはそろそろ邪神の体重という重圧に耐えきれなくなっているからだが、喜んだことには違いない。

 なんといっても不老不死である。これで何をしようとこの世界で死ぬことはなくなったのだ。


「うむ。それに勇者を人間椅子にしたことでだいぶHPが減っているからな。まずは死んでもいいようにしなければいかん」


「死ぬの前提なのかよ」


「いやぁ、あのセリフ使ってみたくて」


 どうやら邪神は相当にドSのようであった。

 ヤマダは体力の限界が来て邪神の椅子の役割を果たすことができずプチりと潰れた。


「おぉ、勇者よ。死んでしまうとは情けない」


 そんなセリフが邪神から聞こえたような気がした。


 そしてヤマダは訂正しなければならないと感じた。

 この世界で死ぬことはなくなったのではなく、死んでも生き返ることができるようになっただけなのだと――

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