表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

第八話 宿屋に到着

「長旅お疲れ様でございました」

「ささ、こちらへどうぞ、勇者様方、騎士団長様方」

 ネルル島の宿屋に着くと、すぐさまそこのお店の人たちが出て来てくれて、出迎えをしてくれた。

 宿屋の質は、かなり良い方だと私は思う。

 船から見たネルル島は石造りや木造の建物が多く、かなり貧しそうな島だったが、上陸してみるとその意識は一瞬で払拭された。島の内部の方には整備された道や、三階建ての白亜の石(なんという石なのかはわからない)で出来た、高級そうな豪邸があったからだ。

 そんな豪邸のようなこの宿屋は、騎士団の管理下にあるらしい。当然、海賊なんかは泊まれないので安全だろう。

「なぁ団長さん。魔物はどこに出てくるんだ? 早く倒しちまおうぜ」

 落ち着かない様子で健太郎君は団長さんに話しかけるが、団長さんは首を振って答えた。

「駄目です。勇者様方は長旅でお疲れのはずです。実感は無くても、疲労はたまっているものなのですぞ。今日はゆっくり休んで、明日、魔物の討伐に参りましょうぞ」

「そうだぞ健太郎。天月や二宮が疲れて魔物に怪我でもさせられたらどうするんだ。今日はおとなしく休むべきじゃないか?」

 玲音君がありがたい提案をしてくれた。

 正直、長旅で体がへとへとだ。いくらギフトをもらって、身体能力が一般の人よりも高くなったからと言って、疲れない訳ではないのだ。

「ちぇっ、早く倒して元の世界に帰りたいのに」

「そう言わずに、勇者殿。万全を期して戦わねばなりませんぞ。さて、部屋割りは健太郎殿と玲音殿で一室、ニノミヤ殿とアマツキ殿で一室でよろしいかな?」

「はい、ありがとうございます。団長さん」

 仏頂面で、渋々と健太郎君は部屋の鍵を受けとり、玲音君と割り当てられた部屋へと向かっていった。

「あたし達も部屋に行こ! 早くシャワー、はないね。あー水浴びしたーい!」

「あはは、彩音はいつでもマイペースだね」

 彩音はちらちらと健太郎君の方を気にしながら、部屋の方へ歩いて行く。

 私もそれに追従しようとしたとき、団長さんが声を掛けてきた。

「アマツキ殿」

「はい? あ、彩音、先行ってて。私後から行くから」

「はーい」

 あからさまに小さな声で私を呼んだので、最初は何事かと思ったが、私は機転を利かせて、先に彩音を部屋に向かわせることにした。

「なんですか? 団長さん」

「ありがとう、アマツキ殿。他の勇者様方には話し辛いことなのですが、アマツキ殿ならば大丈夫かと思い声を掛けさせて頂きました」

 内容はなんだろうか。私も早く水浴びをしたいのに。

 真夏を思わせる太陽で、激しく汗をかいていたので早く終わらせたかった。

「私は口は堅い方ですけど……なにか悪いことでもあったんですか?」

「実は――海賊、エルドレッドがこの島で仲間を集めている、という噂が出てきたのです」

「……え? あ、ちょっと待ってください。それと私と何の関係が?」

 他の三人は確かに血気盛んなところがあるから、海賊なんて言ったら「倒しに行こうぜ!」とか、「見に行こうぜ!」とか言うかもしれない。

 しかし、それを私に言う目的が解らなかったので、質問してみた。

「本当に申し訳なく思っておるのですぞ。その、エルドレッドを捕縛するために、アマツキ殿のお力を今晩だけお借りしたいのです。私が見た所、アマツキ殿の能力が一番こちらの被害を最小限に抑えられると思い、お願いした次第でな」

「わ、私ですか? お役に立てるか分かりませんよ。本当に」

「何を謙遜しているのかな? アマツキ殿。私を宙に浮かせ、手も足も出せなくしたではないかっ、はっはっは!」

(団長さん、段々地が出てきたなぁ)

 徐々に砕けた口調になっていく団長さんに、私は微笑み返す。

 ここで断っても、団長さんと仲が悪くなるだけだと思い、私は返事を返す。

「分かりました。そこまでおっしゃるなら、微力ながらお手伝いさせていただきますね」

「ありがとう、アマツキ殿! それでは、夜の九時ですな。その位にウミネコ亭のすぐそばで落ち合いましょうぞ」

「あ、あの、エルドレッドってどんな人――あーあ、聞く前に行っちゃった」

 了承した途端に踵を返して部屋に行った団長さん。

 エルドレッドという人の事を少しでも知りたい、と思った私は一体何を考えてるんだろうか。

 船の中で団長さんが話してくれたじゃないか。

 エルドレッドは残虐非道、自分の目的の為ならば手段を選ばぬ最低の海賊だ、って。

 私はそこで席を外してしまったからわからないけど、団長さんの話を詳しく聞いた健太郎君や玲音君は口々に、エルドレッドを見つけたら殺してやる、とか、首をはねる、とか言っていた。

 だが私は、船の中でメモを見つけてしまった。

 彼の人生を書いたメモを、だ。

「本当に、悪い人なのかなぁ」

 私は独り言をつぶやきながら、彩音の待つ部屋へと向かった。

 夜に部屋を抜け出す時の口実は、ちょっと夜風に当たりたい、で大丈夫だろう。

 優しい彩音の事だ。私が愁の事を考えてることなんてお見通しだから、きっと気を利かせて、独りにしてくれる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ