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第七話 ギフトと言う名のチート

「やぁやぁみなさんこんにちは! わたくしめは神より勇者様方の指導を仰せつかった、特級宮廷魔術師のミハエルと申します。以後、お見知りおきを!」

 ミハエルさんというらしいこの男は、先ほど祭壇がある部屋から出てきた私たちを出迎えてくれた人だ。

 かなり明るい人らしく、裏表がなさそうな良い人、というのが私の第一印象だった。

「よ、よろしく、お願いします?」

「はは、緊張はしなくて良いのですぞ、勇者殿! 勇者様方は、もう私どもなどという下賤の輩とは違う、特別な身! 神から異能(ギフト)を授かりし選ばれし者達なのですから」

「ギフト? 選ばれし者……?」

 クラスの一番先頭に居た石田健太郎君が、ミハエルさんの言葉になにか思うところがあるように目をキラキラさせながら笑顔になっている。

「そうです! 勇者様方はもと居た世界での能力のほかに、神から賜った強力な能力があるのです!」

 本当にこの人はテンションが高い。他の二十九人全員が絶句してしまっている。

「さぁさぁ皆さんには我が国の勇者の証、『プレート』をお配りします! 勇者様方がそれを手に取った瞬間……、な、な、なんと、勇者様の持つ、神から授かりし強力な能力の内容が示されるのです!」

「おぉぉぉ!」

 石田健太郎君がついに歓声を上げて飛び跳ねた。

 他の男子も女子もざわざわと落ち着きがなくなっていく。

「それでは、わたくしめの立会いの下、プレートを順番にお受け取りください!」



 それから私たちは個々にプレートを渡され、自分の能力を把握した。

 私の能力は――『風の奏者』。ミハエルさん曰く、風を自由自在に操れる能力らしい。

 そして、私の親友の彩音は『探知』、石田健太郎君はなんと、『剣聖』というすごい能力を神様から貰っていた。

 彩音は仲間たちの居場所を瞬時に探れる能力、石田健太郎君は、剣を持てばどんな強い人にも負けないほどの剣技を扱えるようになるらしい。

「さぁ皆様! 本日は私の魔物についての講義を聞いていただきたい! あなた方は今、己を知りました。次は敵を知ることを始めます。そんなに面倒くさそうな顔をしないでください……。敵を知り、己を知れば百回敵と戦っても勝ち続けられる、とはわたくしめの持論なのですから」

 座学は苦手なクラスメイト達がうんざりしたような顔をしていたが、私はミハエルさんの意見に賛成だった。

 私たちはその後大広間から移動し、西洋風の教室、と言ったような雰囲気の場所に通され個々の机に座った。

 すわり心地は悪くない。クッションがふかふかだ。

 私たちがそろったことを確認した後、ミハエル先生は講義を始めた。

「さて、勇者様方にもう一度、深く御礼申し上げます! このセントラル帝国の危機に来てくださったことは、この国は忘れることはないでしょう」

 ミハエル先生は深くお辞儀し、頭を上げた。

「それでは『浄化』をしていただくに当たり、魔物の説明、魔力の説明をさせていただきますぞ。

 魔物、という者は読んで字の通り、『魔』の『モノ』です。魔力で構成された、超生物と言ったところですなぁ。

 魔力、というものはこの世界を構成している一部であると私どもは認識しております。要するに、大気といったモノとおなじものですな。この、魔力、という者を操れるのはほんの一握りの者達だけなのです。

 魔力を使えば火は起こせるし、水も生み出すこともできる。しかし、それを可能にするものはこの国ではわたくしだけ――勇者様方が来られる前までは――ですが。

 そしてそんな超常の力を秘めた魔力が異様なまでに集まる『スポット』がこの、セントラル帝国を皮切りに全世界に現れ始めたと言われています」

「ぜ、全世界!?」

「そうでございます。ケンタロー殿。その魔力のスポットからはおぞましい怪物、魔物が現れるのです。どのタイミングで、どの条件でかは定かではありません。皆様にはその魔物を倒し、世界を『浄化』していただきたいのです! 幸い、魔力を探知できそうな勇者様が多く、探索には苦労をしなさそうですので、移動はご心配なく。勇者様の身体には自動浄化作用、といいますか。そのような効力を持つ神のお力がありますので、きっとスポットにいる魔物達は、浄化の気を感知して、自らその姿を現します。

 つまり、勇者様方がスポットに行くと魔物が現れ、それを倒す事を繰り返していただきたいのです。

 魔力スポットは危険なものです。放置しておいては周辺の住民や国が滅ぼされかねません……。

 どうか、どうか勇者様方、わたくしたちに力をお貸しください」

 ミハエルさんはまた深々と頭を下げ、これで講義を終わります、と言って私たちをまっすぐに見てきた。

「やる、やるぜミハエルさん! 俺たちがこの世界を救う! 全部救ってやるよっ!!」

「そうね! 私もなんかすごい能力手に入れたみたいだし、使ってみたいっ」

「味方が居て、敵がいる。こんな分かりやすくも面白いゲームは、拙者楽しみでござるよぉ!!」

 また、健太郎君を筆頭としてクラスが一丸となってまとまった。



 そのあとの兵士の人との模擬戦では健太郎君は大活躍していたなぁ。

 一人で百人相手に勝っちゃったんだ。すごい。

 それが済んだあと、私たちはそれぞれの宿舎が割り当てられ、そこで寝泊まりすることになった。

 一か月。私たちの訓練期間はその位だとミハエルさんは言っていた。


 一か月もすると私たちは大分戦いと言うものにも慣れ、男子も女子も一人一人がお城の兵士さんたちを楽々倒せるようにまでなっていった。

 そしてついに予告の一か月が過ぎ、ミハエルさんからこれからの事について通達があった。


「勇者様方、もともと強かったのに、さらに強くなられましたなぁ!! 流石といったところです! これで、五名グループに分けて、全世界の浄化を任せることもできましょうぞ!!」

「へ!? グループに分かれるのか!?」

 健太郎君がミハエルさんの言葉に驚いた。ここまで訓練してきて、確かに実力はついた。兵士さんたちが千人単位で束になっても健太郎君には誰も勝てなかったほどだ。

「そうした方が皆様の為に良いかと思いまして……。なにせ全世界の浄化です。神が与えられた使命は一朝一夕で達成できるほど甘くはありません。なに、そんなに心配はいりませんぞ! 五人グループとセントラル帝国の精鋭を十名ずつつければ、勇者様なら楽勝で魔物に勝てましょう!」

「は、はは、そうだよな! 俺らなら楽勝だよなっ。早く帰りたいのもあるし、皆、それでいいよな!?」

「「ああ!」」

「「いいわよっ」」

 健太郎君がみんなに大声で聞くと、大きな声で返事が返ってきた。

 みんなはそれで良いらしかったので、私もそれに従った。


―――――


 こうして、ネルル島に潜むという魔物を退治する為、石田健太郎、二宮彩音、仲野玲音、そして私――天月夕華というメンバーで船旅が始まったんだ。

 四人なのは、二十九を五で割ると四人があぶれるから。戦闘能力でいえば、健太郎君はいわずもがな、玲音君も『魔槍使い』という能力を持ってるから不足はない。というより、本当に何が来ても勝ってしまう位だろうな。

 彩音は玲音君に恋してるから、当然このグループに入るのは予測済みだった。私は単なる後衛だろう。風を使って周囲の気配を探ったりもできるので、サポートはできるはずだ。

 そんな事を思いながら、私はついに

「さぁ、到着しましたぞ、ネルル島に!」

 ネルル島に足を踏み入れたのだった。

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