プロローグ
地球でいえば、カリブ海のような蒼い蒼い海。
どこまでも続いているように錯覚する水平線と透き通るような海の蒼は、見事なまでに大自然の雄大さを私たちの脳に焼き付けてくれる。
時には荒れ狂い、船乗りたちの命を奪うこともあるこの海。
しかし数多の生命の母であるこの海は、ネルル島に住む島民たちにとってかけがえのないものだ。
海の恵みは計り知れない。漁で獲れる魚は人々の腹を満たし、養殖する魚介類は資金源にもなりうる。
ネルル島は決して豊かではない島だが、生活に困るほど貧しくもない。それなりに人は住んでいるし、セントラル帝国の庇護下にもあるおかげか、物資の流通もスムーズに行われている。
物資の流通と言えば、海賊のことを避けては通れない。
海賊。
船乗りたちが恐れる唯一のものだ。人によれば海の大嵐の方がマシだと答える人もいるだろう。
なにせ奴らは奪えるものすべてを略奪する。船の積み荷はもちろん、船乗りの命をも奪い、船そのものを解体して資材にしてしまうからだ。
そんな、船乗りすべてから憎悪される「海賊」の内の一人、後に伝説の海の男とまで称される一人の若者から、この物語は始まる。
その名はキャプテン・エルドレッド。
彼の中身は生粋の日本人だった。