さんたぐろーぶ!!
今日はクリスマスイブ。
ぴゅうぴゅうと風が吹いて、寒い中でもみんな元気に遊んでいます。
ケントくんとサチコちゃんも仲良く遊んでいたようなのですが、突然、サチコちゃんの泣き声が聞こえてきました。
「うえーん!ケントくんが私の手袋を破ったぁ!」
「サチコちゃんが手袋の自慢ばっかりするからいけないんだもん!」
どうやらケントくんがサチコちゃんがお母さんにもらった手袋を破いてしまったようなのです。
「ケントくんなんて大っ嫌い!もう一緒に遊ばないもん!」
「いいもん!僕だってサチコちゃんなんか大っ嫌い!」
せっかくのクリスマスイブだというのに2人は喧嘩をしてしまいました。
〜〜〜
「ただいま……」
おうちに帰ってきたケントくんはいつもより元気が無さそうです。
ケントくんはサチコちゃんと仲直り出来なかったのです。
ケントくんが大好きなお父さんと、お母さんは元気のないケントくんに良いことを教えてあげることにしました。
「ケント!今日はクリスマスイブだぞぉ!」
「良い子にしていたケントにはサンタさんがプレゼントをくれるわよ」
それを聞いたケントくんは嬉しくなりましたが、同時に慌てました。
(そうだ!サンタさんが来るんだ!でも大変だ!僕、サチコちゃんを泣かせちゃった悪い子だ!)
ケントくんは良い子になってサンタさんに会うためにがんばることにしました。
クリスマスのお食事の準備を手伝ったり、お部屋のお片づけをします。
(頑張ってお手伝いしたんだからサンタさん、来てくれるよね!)
ケントくんはクリスマスケーキを食べた後、ちゃんと歯を磨いて、眠りにつきました。
外では雪が降り始めたようです。
〜〜〜
気がつくとケントくんは誰もいない保育園にいました。
「あれ?どうして僕保育園にいるの?」
「それはね、わしが連れてきたからじゃよ」
突然聞こえた声のほうを向くと……
そこにはサンタさんがいました!
「サンタさん!」
「ほっほっほ。ケントくん。良い子にしておったか?」
ケントくんは困ってしまいました。
ケントくんはサチコちゃんと喧嘩をしてしまったからです。
「良い子にしようと思ってたんだけど、サチコちゃんと喧嘩しちゃったんだ……」
ケントくんは勇気を出して正直に言いました。
でも、サンタさんにもう一つ言いたいことがあったのです。
「でもね、僕、それ以外は良い子だったんだ!だから、プレゼントはいらないから、サチコちゃんとの仲直りをちょうだい!」
ケントくんは思い切って言いました。
それを聞いて、今度はサンタさんが困ってしまいました。
「ケントくん。わしには仲直りをあげることはできないのじゃよ。でもね、ケントくんが今みたいに勇気を出して謝れば、サチコちゃんはきっと許してくれるはずじゃよ」
サンタさんは優しく微笑んでケントくんを励ましてくれました。
〜〜〜
目がさめると、ケントくんはベッドの上にいました。
枕元にプレゼントはありません。
(しょうがないよね。僕は悪い子だったんだもん。でも、サチコちゃんは謝ったら許してくれるってサンタさん言ってた!)
ケントくんは夜のうちに積もった雪の上を長靴で歩いて、保育園につきました。
連れてきてくれたお母さんと別れるとすぐにサチコちゃんを探します。
「ケントくん!」
サチコちゃんの声です。
声のした方からサチコちゃんがやって来ます。
ケントくんはサンタさんに会った時よりずっと勇気を振り絞って言いました。
「サチコちゃん!昨日はごめんね!」
サチコちゃんは一瞬止まって、ケントくんを見ると、笑顔で言いました。
「良いよ!」
ケントくんはとっても軽くなって、周りが雪でキラキラ光って見えました。
「実はね、手袋はサンタさんが直してくれたの!それにね、昨日サンタさんに会って、ケントくんはすっごく反省してたって聞いたんだ!だから良いの!それと……これを預かったの!」
サチコちゃんはケンタくんにプレゼントを渡しました。
ケンタくんが不思議に思って開けてみると……
中にはサチコちゃんとお揃いの手袋と一枚の手紙が入っていました。
『サチコちゃんとは仲直り出来たようじゃの。これからも勇気を持って、友達を大事にするんじゃぞ。
メリークリスマス!
良い子のケントくん!
サンタクロースより』
「ありがとう、サチコちゃん!」
ケントくんは心の中でサンタさんにもお礼を言って、手紙を丁寧にポケットにしまうと、他のみんなと同じようにサチコちゃんと雪遊びを始めました。
新しい手袋をつけて。