第六話
ミドリ「あ~、やっぱり冬休みは短いよなぁ」
キミエ「だね。どうしても夏休みと比べちゃうからねぇ」
ササミ「あと、大きな行事があるから、特にそう感じるのかも」
アイリ「それってクリスマスとお正月?」
ミドリ「あー、それはあるかもな」
アイリ「でも、それって人によらなくない? うち、あんまり親戚付き合い密じゃないから、お正月っていっても特に何もないよ」
キミエ「あ、うちもおんなじ。おじいちゃんおばちゃんのところに挨拶に行くくらい。どこか旅行するわけでもないし」
ミドリ「ん~、地方在住の核家族なんて、どこもそんなものかもなぁ」
アイリ「それにクリスマスだって。あれってちっちゃい子と、一部の男女のためのイベントでしょ、日本だと。クリスチャンならちゃんと礼拝に行ったりするんだろうけど」
キミエ「言われてみればそうかも。プレゼントもらわなくなってからは、ちょっとしたごちそうとケーキ食べる日になってる、うち。それに、色恋関連のイベントもないしねぇ、私たち」
ミドリ「おいおいおい、そこで一緒にするなよ、おまえらと」
キミエ「いいって、いいって、ミドリちゃん。ちゃんとわかってるからね」
ササミ「見栄を張りたいお年頃だもんね」
ミドリ「バ、バカにすんな! イベントのひとつやふたつ、私にだってある!」
アイリ「あ~あ、言っちゃった。というより言わされた? 見え見えの見栄っ張り」
キミエ「も~、わかったよ、ミドリちゃん。じゃ、そういうことにしておくから」
ササミ「イベントはイベントでも、実際は乙女ゲーのクリスマスイベントなんだけどね」
ミドリ「チクショー! どいつもこいつも人を小馬鹿にしやがって! もう許さん! おまえも、おまえも、おまえも!」
アイリ「またそうやってムキになる・・・・・・」
キミエ「まるで子どもみたいだね」
ササミ「ま、だからこそイジり甲斐があるんだけど」
ミドリ「なんだよそれ! 私はイジられキャラかよ!」
キミエ「あれ? 今まで自覚なかったの?」
ミドリ「あってたまるか!」
ササミ「知らぬは本人ばかりなり」
ミドリ「クソッ! なら、今年の抱負はそのイジられキャラの返上だ!」
アイリ「え~、一年の抱負がそれでいいの?」
ミドリ「いいんだ。これは私の存在意義に関わる問題だからな」
アイリ「それってちょっと大げさすぎ・・・・・・」
キミエ「そうだ! 抱負といえば、みんな初詣行った? 何お願いした?」
ミドリ「唐突だな。そもそも抱負と初詣の願掛けにどういう繋がりがあるんだよ」
ササミ「どちらも時間が経てば忘れ去られててしまうでしょう」
アイリ「また身も蓋もないこと言って・・・・・・」
キミエ「まさにミドリちゃんの抱負の行く末を暗示してるね」
ミドリ「ふざけんな! 勝手に決めつけんな、そんなこと!」
アイリ「言ってるそばからイジられてるし・・・・・・」
キミエ「ちなみに私の願い事は『今年も平穏無事に過ごせますように』だよ」
ミドリ「ありきたりで面白味に欠けるなぁ。もうちょっとひねりをきかせろよ。ほい、次!」
アイリ「え!? なにそのノリ。大喜利か何かなの?」
ササミ「私のは無病息災・交通安全・家内安全・商売繁盛・・・・・・」
ミドリ「多い、多い。本職に祈祷頼んだら結構な額取られるぞ。それになんだよ『商売繁盛』って。おまえんとこ、公務員だろ。そんなんじゃ、願い事・オブ・ザ・イヤーは取れないな。ほい、次!」
キミエ「もう、うるさいなぁ、ミドリちゃんは」
ササミ「まったく、そういう自分は何なのさ」
ミドリ「私!? 私のは・・・・・・秘密だ」
キミエ「そんなのずるい。私たちのだけ聞いといて」
ササミ「そうだ、そうだ。私たちにもけなさせろ。イチャモン付けさせろ」
ミドリ「アホか。なおさら言えるかっつーの」
アイリ「わかった。人に言えないような恥ずかしい願い事なんだ」
キミエ「てことは・・・・・・恋? 恋愛関係?」
ミドリ「え、あ、まぁ、そんなところだな」
ササミ「目が泳いでる、完全に嘘だ」
キミエ「私もないとは思ってた。案外『今年も四人仲良くやっていけますように』とかだったりして」
ミドリ「やめろ、やめろ! 恥ずかしいこと言うの禁止!」
ササミ「その反応。もしかして図星?」
ミドリ「バカ言うな! んなわけあるか!」キミエ「もう、照れなくてもいいよ、ミドリちゃんてばっ!」
ミドリ「だから、違うって言ってるだろ! それよりアイリ。おまえのは? 何お願いした?」
アイリ「私、してない」
ミドリ「はぁ?」
アイリ「だから、お願い事してない」
キミエ「初詣に行かなかったの?」
アイリ「ううん、行ったよ」
ササミ「でも、お願い事はしなかった?」
アイリ「うん」
ミドリ「なんでだ?」
アイリ「だって、お願い事を叶えてくれる神様・仏様なんているはずないから」
キミエ「確かに今の時代、願掛けなんておまじないみたいなものだけど・・・・・・。アイリちゃんは、無宗教を貫いてるってこと?」
ミドリ「だったら、初詣自体行かないだろ」
キミエ「あ、そっか。じゃあ、どういうこと?」
アイリ「あのね。ふつう神様・仏様って誰に対しても公平だって言うでしょう? だったら、特定の人の願いを叶えるなんてこと、しないんじゃないかって思うの」
ササミ「そりゃまた何で?」
アイリ「だって、この世の中は、いろいろな関係性で成り立っているんでしょ? その中には相克関係も当然含まれる。分かりやすい例だと、食いつ食われつの食物連鎖とか。人間だってその例外じゃない。特定の誰かへの肩入れは、ダイレクトにほかの誰かの低落に繋がることになるでしょ。それがわかっていて、故意に願いを叶えるなんてこと、すると思う? 本当に公平な存在がよ?」
キミエ「う~ん。そう言われてみると、願いを叶えてあげることが必ずしも善いことじゃないように思えてくるね」
ミドリ「でも、本当に困ってる人には手を差し伸べてもいいんじゃないのか?」
アイリ「それこそ、目先のことしか見えない人の論理。まぁ、それが世間一般の見識かもしれないけど」
ミドリ「そんなもんか?」
アイリ「だって、よくある動物ドキュメンタリー番組見ててもわかるでしょ。草食動物の特集だと、肉食動物の襲撃から逃れたことにみんな胸をなで下ろす。その裏で肉食動物が飢えることになるなんて気にもしないで。だけど今度、肉食動物の回だと、獲物を捕まえたことに拍手喝采を送ったりなんかしてる。犠牲になった動物のことなんてお構いなしで」
ササミ「それでいて、農作物とか家畜とかに手を出されると『害獣』っていうレッテル貼って安易に駆除したりするもんね。それで絶滅しちゃった種は数知れず」
ミドリ「まぁなぁ~」
アイリ「結局、後先の影響なんて全然考えてないんじゃないのって言いたくなることばかり。たいていの人はその場その場の雰囲気に流されてるだけで本質なんか見てないの」
ミドリ「本質が見えていないから、やたらと口や手を出したがる?」
キミエ「右とか左とか宗教の人は特にそういう傾向あるかもね。それでもみんな、公平とか言いたがるけど」
ササミ「傾いてるのに公平とはこれ如何に」
アイリ「私は別に何も手出しするなとか言うつもりはないんだけどね。事実、即時的でわかりやすい行為を尊ぶ人も、そういう行為しか認識できない人もいるわけだし。ただ、過度に美化とか正当化するのはどうかと思うの。逆に嘘っぽくなるから」
ミドリ「確かに感動目的の映画やドラマってどこか引いた目で見ちゃうよな、私なんかは」
キミエ「わかる、わかる。最終的に、それってエゴじゃんて思っちゃう。いいこと言いたいっていうのは伝わるけど」
アイリ「まぁ、生きることに関する行為って、全部が全部エゴだからしょうがないけどね」
ササミ「それを言っちゃあおしめえよ」
キミエ「あ、かつてのお正月映画の定番だね。じゃ、身も蓋もなくなったところでまとめいこっか」
考察・その六『公平中立な態度・行為は傍観だけ』
ミドリ「だったらさ、結局のところ、神様の役割って何なんだ?」
キミエ「一神教はあからさまに作為的だから何となくわかるけど」
アイリ「元々の信仰って、自然現象とかへの畏敬の念からうまれたっていうから、ただ祭られることが仕事なんじゃないの?」
ミドリ「何だよそれ。ずいぶん楽な仕事だなぁ、オイ」
キミエ「まぁ、それは本当に神様がいたらの話だけどね」
ササミ「でも、象徴っていうのも立派な役割だとは思うけど。祭られる側の神に対す祭る側の神の系譜だっていう天皇家も、今じゃ立派に象徴の役割果たしてるし」
アイリ「しー、しー! 右とか左とかそういう人たちは、その手の話に敏感なんだから!」
ササミ「ふむ。結局『仏ほっとけ神かまうな』『さわらぬ神に祟りなし』ってことですな」
キミエ「うまい! 話題に即したナイスな締め!」
ミドリ「うまいのか、それ? 私には、こじつけのようにしか思えないが・・・・・」