表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

第五話

ミドリ「どれがいいかな~。これもいいけど、こっちもいいしなぁ。よし! どうせなら全部買うか!」


ササミ「ケータイ見つめて何ニヤニヤしてんの? オンラインショッピング?」


キミエ「それにしては随分豪気な発言だったね。臨時収入でもあったの?」


ミドリ「ふふ~ん。あったんじゃなく、これからあるんだよ」


アイリ「これからって、お年玉のこと?」


ミドリ「そんなみみっちいもんじゃないんだなぁ。ウン百万、ウン千万、もしかしたら億ってこともありえるかもな!」


キミエ「わかった、宝くじだ。もしかして買ったの?」


ミドリ「当ったり! 毎年恒例、家族全員出資のまとめ買い。今年こそは当たりそうな気がするんだよなぁ~。もし当たったら、何かおごってやるよ。何がいい? マックか? ミスドか?」


アイリ「億とか言ってる割には、庶民的なチョイスだよね……」


ササミ「だったら私、な○卯のからあげでいいや」


キミエ「唐揚げいいね! じゃあ、私はセブン○レブンのからあげ棒!」


ミドリ「そんなんでいいのか? それだったら何回でもおごってやるよ」


キミエ「ううん、一回でいいよ。その代わりすぐおごって、前祝ってことで」


ササミ「別に今日じゃなくてもいいよ、当選発表の前までなら」


ミドリ「……。おまえら、ゼッタイ外れると思ってるだろ?」


ササミ「バレた?」


キミエ「やっぱりダメ?」


ミドリ「当たり前だ! もういい! おまえらには何もおごってやらない!」


アイリ「そんなことで怒られても……。結局、当たるわけないんだから」


ササミ「そうそう。当選確率とか見ちゃうと、ホント気が萎えるよね~」


キミエ「そもそも、そういうギャンブル的なもの、射倖契約って言うんだっけ? それって、損する人が大勢いて、得する人が極端に少ないから成り立つんでしょ? そう考えると、どうしても自分が得する側に回れるなんて思えないよ」


ミドリ「でも、裏を返せば少ないながらも得するヤツはいる。勝てる確率はゼロじゃないってことだろ?」


アイリ「カモだ」


キミエ「カモだね」


ササミ「カモネギだ」


ミドリ「うっさいな! いいだろ別に。夢くらいみさせろよ!」


アイリ「夢ねぇ……」


キミエ「あのね、ミドリちゃん。夢ってみるものじゃなくて、叶えるものなんだよ」


ミドリ「なに真顔で語ってんだよ! つーか何様だよ!」


キミエ「ダメ? ハッとしなかったった?」


ミドリ「するかよ! そういうのは何かを成し遂げた人間が言ってこそだろ! 単なる一般人にそんなこと言われても、ウザイだけだっつーの!」


キミエ「アハハ、だよねぇ。でも実際、私のなかではギャンブルと夢って、なぜかうまく結びつかないんだよねぇ、昔から」


ミドリ「なんだよそれ。楽して儲けようっていう発想が気に食わないってことか?」


キミエ「う~ん、ちょっと違うかなぁ。別に楽しようがしまいがそれはどうでもいいんだよ。お金はあくせく働いて稼ぐものだ、なんて考え持ってないし」


ササミ「ってことは、特許とかの知的財産権で一攫千金狙うのはあり?」


キミエ「当然あり」


アイリ「じゃあ、株なんかの投機は?」


キミエ「それも一応ありかなぁ」


ミドリ「頭を使って稼ぐ分には問題ないってことか?」


ササミ「だったら、頭を使ってギャンブルに勝つのは?」


アイリ「なんかそれ、すごく犯罪っぽい臭いがする……」


ミドリ「イカサマってことか? まぁ、ギャンブルって運の要素が大きいからこそ、みんな勝つ機会が公平にあると思うわけだしな」


キミエ「だね。とにかく、この世の事象全部の相互作用を完全に把握することなんて、たぶん不可能だから、運の要素は消せないとしても、自分の能力や努力なんかが決定的な要素になるもっと堅実なもの、それが私にとっての『夢』のイメージなんだよ」


ミドリ「ふ~ん、なるほどねぇ」


アイリ「でも、実際語られる『夢』って、大概単なる願望・妄想だよね」


ササミ「だからかもしれないけど、他人の『夢』の話って、いまいち興味持てない。『はぁ、そうですかぁ。だから何?』って感じで」


ミドリ「確かに、それは言えてるかもな……」


アイリ「『夢』を叶えた人の話、英雄譚とか偉人譚とかだったら需要はあるのにね。不思議だよね」


キミエ「もしかしたら『夢』って、後語りでこそ意味があるものなのかもね。だから、できる人の行動は、常に不言実行だったりするのかも」


アイリ「だったら逆に、夢や理想をあれこれ語る人は、何もできない可能性が高いってこと?」


ササミ「まぁ、あれですな。マニフェストを大々的に打ち出しておきながら、実際政権とってみたら、満足に達成できなかったという例もありますからな」


ミドリ「それでも現政権が何か失態やらかせば、どうせまた政権とっちゃうんだろ?」


ササミ「消去法選挙の宿命ってやつですな。だから政治家は、国政のことよりも足の引っ張り合いに精を出す。選ぶ側と選ばれる側。果たしてどっちに問題があるのやら。これは卵が先か、ニワトリが先か論争と同じくらい奥の深い問題ですぞ」


アイリ「どうしちゃったの!? 社会派路線に変更なの!?」


キミエ「それはともかく、堂々巡りになりそうだから、まとめやっちゃおうか」


考察・その五『才覚のない人間ほど、夢や理想を熱く語る』


キミエ「だけど、のめり込む人はのめり込むって言うよね、ギャンブルって」


ササミ「そりゃ、手っ取り早くお金を手にできるんなら、そっちに飛びつきたくなるのが人情ってものだしね」


アイリ「でも、それで負けてたら本末転倒な気もするけど……」


ミドリ「まぁ、お金に余裕のある人が、遊びでするぶんにはいいんじゃないか?」


キミエ「だけどそれ、依存症に陥りやすいパターンなんでしょ? 一度勝つと、もっと大きな刺激を求めて、どんどんつぎ込んでいっちゃうっていう話だよ」


ササミ「結果、路頭に迷って路上生活者に」


ミドリ「おまえ、好きだなぁ、あの人たちのこと。もしかして憧れてるのか?」


ササミ「そりゃ、憧れるでしょ。何にも縛られない自由人なんだよ」


ミドリ「なんだよそれ。大方ずっと寝てられるとでも思ってるんだろ?」


ササミ「大当たり! ギャンブルの話だけに」


キミエ「ああ、そこと掛けたんだ!」


アイリ「わかってもらえるか不安なら、言わなければいいのに。解説まで入れて……」


ササミ「そこはあえて”Long Shot”大きく賭けていかなきゃね!」


ミドリ「結局、最後の締めもギャンブル関連か……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ