第四話
アイリ「ねぇ、聞きにくいんだけど。私たちってダメ人間?」
キミエ「……」
ササミ「……」
ミドリ「そんな期待を込めた目で見たって言わないからな!」
ササミ「けんもほろろの拒否っぷり。こりゃもうないね」
キミエ「そうだね。結局三連鎖、ダイアキュート止まりかぁ」
ミドリ「いつまで続ける気だったんだよ! それに何気にゲームネタかよ!」
キミエ「さすがはゲーム通のミドリちゃん。気づいてくれると思ったよ」
ササミ「伊達にゲーム漬けの毎日を送ってるわけじゃないね」
ミドリ「人を廃人みたいに言うな! ちゃんと学校来てるだろ!」
ササミ「でも、部活の時間はゲーム三昧」
ミドリ「黙れ。ずっと寝てる人間に言われたくない!」
キミエ「まぁまぁ。それはさておき、アイリちゃん。今日は何?」
アイリ「うん。私たちって、いわゆる『ゆとり世代』なんでしょ? だけど私たち、世間で言われるくらい、そんなにダメ?」
ミドリ「そんなの偏見だろ。工業製品じゃないんだから、みんながみんなダメになるとかありえない」
キミエ「だよね。結局それって個人個人の問題だよね。社会に適応できない人ってどの世代にも必ずいるし。私たちの世代だけが特別ってことないはずだよ」
ササミ「そうそう。見てみなよ。空き缶、大量に集めて回ってる人たちのほうが、なんだかんだでよっぽどゆとり世代っぽいよ」
アイリ「やめてあげて! あの人たちにもいろいろ事情があるんだよ! そっとしておいてあげて!」
ミドリ「そもそも、こういう教育関連の問題って、直接的な原因は、子供を育てる側や育つ環境、つまりは社会を形成している人間のほうにあるはずだろ? なのに、まるで育てられた子供のほうに問題があるみたいなこと言うのって、なんかおかしくないか? 自分たちは無関係かよって話だよ」
ササミ「まぁ、いろんな事例があるから、一概には言えないけど、指導力不足っていうのもあるからね、社会に出た場合だと」
アイリ「つまり、ゆとり世代ってことでバッシングすることで、責任転嫁や責任逃れしてるってこと?」
ミドリ「あるいはな」
キミエ「そういうこってあるよね。自分たちの責任を回避するために、別の何かをとりあえずの原因として仕立て上げるってこと。ゲームやマンガが悪影響を与えるって目くじら立てる親とかいるけど、それってつまり、自分たちの影響力がゲームやマンガの影響力より劣ってるってことだもんね」
ミドリ「まったくだ! そんなんで、なんでもかんでも規制かけられたらたまったもんじゃない! 何かが子供に悪影響を与えるのを憂う前に、自分たちの影響力の無さを憂えっていうんだよ!」
ササミ「ま、多くの人は、責任被るの嫌がるからねぇ。精神科のお医者さんだって、本当は病気でもなんでもない人を、自殺されたら困るからって理由で、とりあえず病気ってことにすることがあるらしいよ」
キミエ「へぇ~、そうなんだぁ」
ミドリ「だってよ、アイリ。もし医者からうつ病だって言われても、まだ望みありだな!」
アイリ「ちょっと、やめて! 私、少しナーバスなだけで、病んでなんかいないから!」
キミエ「と、いいうことで。今日もまとめいっとく?」
考察・その四『抽象的な原因を振りかざすのは、解決力のない証拠』
キミエ「でも、そういう信憑性に乏しいもののほうが、しっかりした根拠のあるものより、ウケがいいと思わない? 例えば『ゲーム脳』のこととか」
ミドリ「少しくらい怪しくたって話題性があればいいんだろ。日常におけるちょっとしたスパイスだよ」
ササミ「……スパイス。ほとんど支持者がいないのに、政府・与党を批判し続けてるってだけで、テレビや新聞がずっと取り上げてくれるあの政党と同じだね」
アイリ「やめてあげて……。あの人たちも一生懸命やってるんだよ、きっと……」