第二話
アイリ「ねぇ、聞きにくいんだけど。私たちの話っておもしろい?」
ササミ「どしたの、急に」
キミエ「そうそう、なんで?」
ミドリ「つまねー事聞くなよ!」
キミエ「あれ? ミドリちゃん。もしかして今の、マリーさん?」
ササミ「ホントだ。マリーさんだ、マリーさん」
ミドリ「ち、違う! 今のはたまたまだ、たまたま!」
キミエ「ウソだぁ。ホントはマリーさんのマネなんでしょ?」
ササミ「ねぇ、どうなの? マネなの、マネなの?」
ミドリ「う、うるさいな! てっきり、アイリのネタ振りかと思ったんだよ。悪いか!」
キミエ「悪くないけど、読んでる人全員がわかるとは限らないでしょ。ちょっと不親切じゃない?」
ミドリ「不親切上等! こちとら常々語る相手を限定したいと思ってんだ。かえって好都合だ!」
アイリ「あ、開き直った」
キミエ「掲載二回目で、早くも『理解ある人しか読まないで』宣言? そこまで読者をそぎ落として、一体何するつもり!?」
ササミ「すべては秘伝伝授のため。そのためなら取捨選択もやむなし」
アイリ「秘伝伝授?」
ササミ「おやおや。最近の子は秘伝伝授も知らないのかい? 秘伝伝授っていうのはね、古今伝授のすごいやつバージョンのことだよ」
ミドリ「また知らないと思ってテキトー言う。それに古文ネタは前回やっただろ」
ササミ「いやいや。一応、よいこのための学習読み物目指してますから」
アイリ「目指してるんだ……」
キミエ「はい。じゃ、無駄打ち話はこれくらいにして、そろそろ本題に入ろうか。で、アイリちゃん。どうしたの?」
アイリ「うん。一回目、掲載したのはいいんだけど、読んだ人の反応が気になって……」
ミドリ「バッカだなぁ~。そんなの気にする必要ないって。気に入らなかったら『はい、さようなら』それでいいだろ、お互いに」
ササミ「いかにも。『さよならだけが人生だ』」
キミエ「あ、今度は漢詩? でも、その訳だと必ずしもそうとは言えないのかな?」
アイリ「だけど、気にならない? 他人の評価って」
ミドリ「気にならない、気にならない。評価が高いイコール絶対的にいいもの。なんてことないからな」
ササミ「それ、わかる。私、一部の人に絶賛されているマンガ読んで、すごくガッカリさせられたことある。もともと、冒険活劇とかバトル漫画は好きじゃないってこともあったけど」
ミドリ「だろ? 趣味嗜好は人それぞれ。評価なんて水物。大抵そんなもんだよ」
ササミ「でも、そういうこと言うと、必ず『この作品の良さがわからないなんて……』みたいな目でみられる」
キミエ「あるある。信者の人なんか特にそう。いるよね、自分の価値基準が絶対的だって信じて疑わない人」
アイリ「私、耐えられない! そういう人たち特有の、ちっぽけな選民意識のはけ口にされるなんて!」
ササミ「うわ~。アイリ、何気にヒドイこと言ってる」
ミドリ「とにかく。誰も彼もを惹きつけるモノを生み出すことなんてできっこないんだよ。もしそんなことができるんなら、本だったら、数十億部単位で売れてるはずだろ?」
キミエ「一桁台ならあるらしいけど、二桁となるとさすがにねぇ。エンターテイメントじゃねぇ……」
ササミ「いやいや。もしかしたら海賊版を数に入れたら、とっくに到達してるのかもしれないよ。なんてったって海賊版大国のあの国の人口は……」
アイリ「ダメー! そんなこと言ったら掲載中断されちゃうから! サイバー攻撃受けちゃうから!」
キミエ「……コホン。とにかく、そこそこの評価を得ることが目的だったら、職人仕事に精を出すのも悪くないけど、別に自分の好きなようにやるのも間違いじゃないってことだね」
ミドリ「だな。目的が違えば手法も当然違ってくるもんな。一律にこうあるべきなんてこと、言えないよ。芸術みたいな感性関連の事柄は特にそうだろ。送り手側と受け手側とでは、そもそも意図するものが違ってる。その人その人で立ち位置、立場は違うんだ」
アイリ「だから、他人の評価を妄信して、追従する必要なんてないってこと?」
ササミ「そう! 『人に媚びず 富貴を望まず』これ、私の座右の銘」
キミエ「お、次の大河ドラマの先取りだね! でも、時事ネタはすぐに風化するって言うよ」
ササミ「ふうか? なにそれ。風太くんの仲間?」
アイリ「そう言えばいたねぇ……。レッサーパンダ」
ミドリ「何はともあれ、まとめだ、まとめ!」
考察・その二『他人の意見は、その人の固有の立場に根差したもの 参考にはできても基準にはできない』
アイリ「……ねぇ、何だか今回の話、私たちの連載に対する弁明になってない?」
キミエ「言われてみればそうかも」
ササミ「ふむ。ソクラテスの弁明に負けず劣らずくらいの大弁明ですな!」
ミドリ「いやいや、そんな大層なものじゃないから。単に批判回避が目的だから……」