第一話
ミドリ「あー、ムカつく!」
キミエ「どうしたの? ミドリちゃん? そんなに荒れちゃって」
ミドリ「伊藤に怒られた。あいつ、しつこいんだよ!」
アイリ「また?」
ササミ「で、今日は何で怒られたの?」
ミドリ「言葉の使い方がなってないんだと。正しい日本語使えとかって、余計なお世話だっつーの!」
キミエ「伊藤先生、昔気質だからねぇ、しょうがないよ」
ミドリ「ホントうぜぇ、マジうぜぇ」
アイリ「あ、なんかテレビで知識を仕入れた田舎の高校生みたいになってる」
ササミ「あれはもう、完全にやけになってるねぇ。いつもより三割り増しで言葉遣いが悪くなってる」
ミドリ「だいたい正しい日本語って何なんだよって話だよ、なぁ」
ササミ「ふむ。正しい日本語。それは『我が世 誰れぞ 常ならん』」
アイリ「あ、いろは歌」
キミエ「つまり、古文てこと?」
アイリ「確かに、系統的には元祖日本語の古文のほうが正しい日本語って言えなくもないよねぇ……」
ササミ「うんばぼうんば」
ミドリ「ん? 今度は何だ?」
ササミ「狩猟採集時代につかわれていた本家日本語」
ミドリ「テキトー言うな! んなわけないだろ!」
キミエ「でも、そうやって考えると、何が本当に正しい日本語かってわからなくなるよね」
アイリ「もう元祖と本家の言い争いぐらい不毛な議論だよね……」
ミドリ「そうだ。あれあれ、よく言われる例。『新しい』が本当は『あらたしい』だってやつ」
キミエ「あ~、間違った読み方が一般化したってやつ?」
ミドリ「そう、それ! 結局、正しい日本語うんぬん言ってるやつだって間違った日本語使ってるってことだろ、要は通じればいいんだよ通じれば」
アイリ「通じないから怒ってるんじゃないの? 今、同じ世代間、仲間内でしか通じない言葉が増えてきてるってテレビでやってた」
ミドリ「う~ん。そう言われると、確かに注意する側にも一理あるって気もするなぁ」
ササミ「つまり、外国の人に向かって『日本に来たなら日本語使え!』って怒ってるオジさんと一緒だね」
アイリ「そう言われると、なんかすごく心が狭いことのように思えてくる……」
キミエ「結局のところ、みんな正しい正しくないってことより、自分が基準じゃないってことに苛立ちを覚えるってこと? 例えば、高額所得者を目の敵にして叫ばれる格差是正とか」
ミドリ「リア充を目の敵にするネットの住人とか?」
ササミ「自国の基準をグローバルスタンダードとか言って押し付けてくる国とか?」
アイリ「政治と宗教の話は、会話のタブーです!」
キミエ「まぁ、最後のは置いとくとして、公然と他人を批判する人には共通点あるよね」
ササミ「だね。じゃ、それを今日のまとめにする?」
ミドリ・キミエ・アイリ「うん」
考察・その一『他人を批判する人間は自己チュー!』
アイリ「……初っ端、これで大丈夫?」
ミドリ「いいんじゃないか?」
キミエ「大丈夫、大丈夫。心配することないって」
ササミ「そう、何事もケセラセラ」