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第九話

キミエ「もう冬も終わりだねぇ」


ミドリ「花粉情報も出たりして、春って感じするよなぁ」


ササミ「寒いのはもう懲り懲り。寒いのと暑いのだったら断然暑いほうがマシ」


アイリ「あれ? 確か夏に逆のこと言ってなかった? 『寒いほうがマシ』って」


ササミ「言ったかもしれないけど、それはあくまで半年くらい前の話。今の私とは全く関係ありません」


ミドリ「関係ないわけないだろ。もっと自分の言ったことに責任持て。一貫性なさすぎだろ」


ササミ「むむ。それはつまり、繰り返される要人の発言撤回問題への苦言ですな」


ミドリ「なに!? 何でそうなる!」


ササミ「そしてこれは、自分の行った愚かな所行を棚に上げ、聖人気取りで過去の事象についてあれこれ語る本末転倒な恥知らずへの痛烈な批判」


ミドリ「ちょっと待て! 勝手な超解釈やめろって!」


ササミ「加えてそれは、自分や他人に記憶や影響が残っている以上、リセット・やり直しなんてできはしないしありえないという、世間一般の人々への戒め」


キミエ「や~。ミドリちゃんてば、カゲキ~」


アイリ「私、もうついていけない・・・・・・」


ミドリ「おまえらまで便乗すんな! ササミ、おまえ、いい加減にしろ!」


ササミ「冗談、冗談。でも、これに懲りたら、二度と私に逆らわないことだね」


ミドリ「どこが冗談だ! ふざけんな!」


キミエ「ところで、何の話だったっけ?」


アイリ「もう冬も終わりって話だったんじゃない?」


キミエ「あ、そうそう。冬といえば、今年は大雪あったねぇ」


アイリ「あったね。何十年かぶりってところもあったみたいだけど、大変だね」


キミエ「ホント大変だねぇ。まぁ、大雪ならしょうがないとしても、都市部ってちょっとの雪でも交通マヒするよね。あれ、何でかな?」


ミドリ「しゃーないんじゃねーの、ほとんどの大都市圏て、あんま雪降らないとこばっかしだし」


キミエ「あ、お仕置き終わったんだ」


ミドリ「ああ。誰が本当の支配者なのか思い知らせてやった」


アイリ「もうどっちもどっち・・・・・・」


ササミ「諸事情は全部環境に左右されるからね。雪国なら降雪対策は必要不可欠だけど、降るか降らないかわからない雪のために、何台も除雪車配備したり、大量の融雪剤確保したりするわけにもいかないでしょ」


キミエ「あ、ササミちゃん、おかえり」


アイリ「それこそ税金の無駄遣いって言われかねないから、今の時代」


ミドリ「対策しなければしないで文句言うヤツいるし、対策したらしたで文句言うヤツがいるか・・・・・・。担当部署の人は大変だな」


ササミ「あちらが立てばこちらが立たず。どうせ文句言われるなら、何もしないほうがマシ。そんな環境をつくってるのは誰でしょね?」


アイリ「この場合ツッコんだらダメ。ゼッタイ発言の責任なすり付けられる・・・・・・」


キミエ「まぁ、そのことは置いといて、滅多に降らない雪のために、大がかりな対策取るわけにもいかないっていうのは事実かも。死傷者がたくさん出る大規模災害とは違うから」


ミドリ「頻度と被害がそれなりだから、急場しのぎの間に合わせで対処ってことか。考えてみれば、そういう環境だからこそ、一定以上の進展や進化が望めないって事や物、あるよな」


ササミ「たとえば?」


ミドリ「たとえば、雪・雨つながりで傘」


アイリ「そういえば、傘が進化しないって話、ちょくちょく聞く」


ミドリ「な、そうだろ。他の国がどうなのかは知らないけど、今の日本だと、ずっと雨が降り続くってことないからな」


ササミ「やまない雨はないじゃない?」


アイリ「・・・・・・うん、そうだね」


ミドリ「とにかく! 傘は急場しのぎの道具だから進化しないんだよ」


キミエ「確かにそうなのかも。欧米だと、雨でも傘ささない人、多いらしいしね。絶対必要なものでもないから進化しないのかも」


アイリ「だったら、進化する可能性があるのはレインウェアのほう?」 


キミエ「どうだろう? レインコートとかカッパって、あんまり進化しそうにないけど・・・・・・」


ササミ「服とかなんかは、たとえメリットが付け加えられたとしても、それに伴うデメリットが少しでもあったら、受け入れられることないからね。だから、日用品はオーソドックスでシンプルなものが一番売れる」


ミドリ「自分では画期的だとでも思ってるんだろうけど、ゴタゴタしたガラクタ得意気に披露して、失笑買うヤツいるもんなぁ。そういうことに気づけるかどうかも才能なんだろうけど」


アイリ「でもそうなると、今後雨具に付け加えられる改良は、もうそんなにないってこと?」


ササミ「多分ね。軽量化もコンパクト化もやられてるしね」


キミエ「だったら、もし環境が今と変わったら、別な方向に進化するかな?」


ミドリ「するかもしれないけど、そんなことってあるか?」


キミエ「ない話でもないんじゃない? ゲリラ豪雨とか大雪とか、異常気象が常態化する可能性はあるんでしょ?」


アイリ「もしそんなことになったら、もっと別な対処法が取られるんじゃない? たとえば実現可能かどうかわからないけど地下都市とか」


ミドリ「地下都市か! 夢があっていいな!」


ササミ「いわゆる『カタコンベ』というやつですな」


ミドリ「地下は地下でもそりゃ墓場だ!」


ササミ「でも、イメージ的には似たようなものでしょ?」


ミドリ「どこがだよ! 全然違うわ!」


アイリ「まぁ、日本語の『地下都市』って、地下に埋もれた都市遺跡って意味で使われることもあるから・・・・・・」


キミエ「そういえば、カッコ良さげな英語の呼び方あったよね。確か最初に『ジ』の付く」


ミドリ「ジ?」


ササミ「ジ・・・・・・。ジッグラト!」


ミドリ「それはバベルの塔のモデルになった塔の遺跡だ! 空と地中、目指す方向が真逆だろうが!」


キミエ「ミドリちゃん、早い! 私、わからなかったよ!」


ミドリ「へへ~ん。こう見えて私、世界史と地理は得意なんだよ」


ササミ「でもそれは、とあるゲームの舞台になってる年代までと、海沿いの地域っていう限定付きだけどね」


ミドリ「うるさい! 余計なお世話だ!」


キミエ「でも、なんで急に世界史ネタ?」


ササミ「だってほら、学習読み物、学習読み物」


アイリ「その設定、まだ引きずってたんだ・・・・・・。だけど、どうして小声?」


キミエ「そうだよ。気兼ねすることないのに」


ササミ「そう? じゃ、遠慮なく・・・・・・。知ったかぶりで歴史を語るなー! 片腹痛いぞー!」


ミドリ「声でかいな~。結局、そっちが本音かよ」


キミエ「あはは。それはそうと、何だっけ? 英語で地下都市って」


アイリ「『ジオフロント』でしょ」


キミエ「そう、それ! でも、もしそれが現実のものになって実際にみんな住むようになったら、人の体も変わっちゃうかな? その環境に適応したように」


ササミ「ザ・地底人」


ミドリ「地底人? あんまりピンとこないな~。ある意味集団引きこもりみたいなもんだろ? そこまで大した変化なんて起きないんじゃないか?」


アイリ「でも、色素は薄くなりそう」


ササミ「それはあるかも。直射日光に当たらなくなれば」


ミドリ「だけど、遺伝子レベルの変異ってそんな急激には起こらないんだろ? 肌の色でさえ千年単位だっけ?」


キミエ「それくらいの年月が経てば、別な方面にも進出してそうだね。たとえば、宇宙とか」


ミドリ「おお! 夢はひろがるな!」


アイリ「無・低重力下で育ったら、人の体ってどう変化するんだろう?」


ササミ「ザ・宇宙人」


ミドリ「その手の影響は、すぐにも出るんだろうな。見た目、ヒョロ長くなったりしてな!」


キミエ「あらゆるものが環境に左右される。人間もその例外じゃないってことだね」


ササミ「もちろん、外面的なものだけじゃなくて、内面的ものもだけどね」


アイリ「でも、そのことってあんまり受け入れられてないような気がする」


ミドリ「そうか?」


アイリ「うん。だって外面的なもの、身体的特徴とかは、割と受け入れられるようになってきたけど、内面的なもの、知能の高い低いなんかは、まだ一律な基準を要求されてるように感じない? むしろ、そっちのほうが環境から受ける影響が大きいのに」


キミエ「確かに力の強い弱いとかに比べたら、頭の良し悪しの許容認識ってシビアかも」


ササミ「当の本人にしたってそうだもん。実際、おつむの弱い人に『バカ』って言ったら怒るし。本当のことなのに」


ミドリ「そりゃ怒るだろ。たとえウソでも怒られる」


ササミ「関西方面の人だから? だったら『アホ』って言えば怒られない?」


ミドリ「いやいや、そういう問題じゃなくてだな・・・・・・」


キミエ「頭が悪いなら悪いで構わないって時代来るかな? そうなればもっと楽に生きられるかも」


アイリ「でもそうなったら、今以上に二極化がすすむんじゃない?」


ミドリ「それでも、無理して背伸びするよりはいいんじゃないか? 精神的にさ」


ササミ「お利口さんの振りするためにがんばって、逆に残念なことになってる人、いるもんね」


ミドリ「自分の非力さ・無能さを受け入れるって、なかなかできることじゃないからな。そりゃ、悪あがきもしたくなるさ」


ササミ「そんな姿を見て、改めて思い知らされる教訓は!」


キミエ「教訓は?」


ササミ「馬鹿は死ななきゃ直らない」


ミドリ「キッツいな~。完全に見放しモードかよ。もうちょっと生あたたかい目で見守ってやれよ、そいつだって環境に適応しようと必死なんだから」


アイリ「『生』を付けちゃダメでしょ。むしろバカにしてる感ある・・・・・・」


キミエ「環境適応かぁ。なんだかんだ言って私たち、その真っ直中に立たされてるんだよね。それも死ぬまで」


ササミ「そ。だから淘汰もやむなし。ま、自分もあれこれ選択してるわけだから、選択される側にまわるのも当然てことで」


アイリ「感情的には、そう簡単に割り切れないけどね・・・・・・」


キミエ「できてるかどうかわからないフォローも終わったことだし、まとめいこっか」


考察・その九『環境は変わり変えられるがなくならない。ゆえに淘汰もなくならない』


ミドリ「厳しい現実突きつけられて、気分も重くなるなぁ・・・・・・」


キミエ「じゃあ、締めくらい明るくいこうか!」


アイリ「何するの?」


キミエ「明るい未来を期待して、将来流行りそうなモノを予想しちゃおう! 何かある人!」


ササミ「はい!」


キミエ「お! じゃあ、ササミちゃん!」


ササミ「あらゆる飛来物に対応! 丈夫で蒸れないおしゃれ防護服!」


ミドリ「なんか色々末期だな、環境が・・・・・・」


アイリ「私、知らない。不謹慎だって怒られても・・・・・・」

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