夢とジレンマ
その夢は、嫌にはっきりしたものだった。
俺は、硬いけれど弾力のある地面を走っていた。
一歩を踏み出すたびに地面が揺れるので、まるで車酔いでもした気分だ。だが、足を止めることはできない。
1メートルほど先に、一人の女がいた。
俺の足下に地面が現れたとき、彼女はすでにそこにいた。そして、俺のことをまっすぐ見ていた。
女の顔を、背丈を、服装を、そしてなぜ彼女が俺のことを見ているかを、俺は知っている。
女は、俺が視線に気づいた途端、くるりと回転して走り出した。
女を追いかけなければ。俺はそんな使命に駆られ、気持悪いのも、足を止めたいのも我慢して、追いかけた。
走っても走っても、彼女に追いつけない。
それでも追い付こうとして、走る。走る。
そのうちに、これは本当に夢なのだろうかという疑問がわいてきた。
疲れや気持悪さなど、様々な感情が普通にあるという、夢らしからぬ現状。相反して矛盾した地面や、あの女がいること、そして周りには何もない真っ白な世界がある。
女は、逃げる。
俺は、追いかける。
夢か、現実か。
このまま女を追いかければ、俺は確実に逝くだろう。
しかし、ここで踏みとどまれば、俺はどこにも行けなくなる。
どちらにしろ、元の世界には戻れない。
ジレンマ、か
女の後を追い続け、俺も女と同じ道を辿る。
それで、女が満足するのなら。
元の世界に、戻ることが出来ないのなら。
夢の中で、彷徨うくらいなら。
俺は、とんだ
真っ白な空間のなかを
とんだ