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奇人変人カニバリズム  作者: カーニバル
4/4

「はい到着」

「ここ・・・ですか」

到着したのは病院の裏口前だった。

「まぁあんたはとりあえずここで待っててくれ。誰が来ても気にしちゃダメだぞ」

「誰か来るんですか?」

「いや、誰も来ないとは思うけど一応な。んじゃ行ってくるわ」

そう言ってカルバさんは、車を降りて病院の中へと入っていった。

一体どのくらいかかるのだろうか?

それも告げずに行ってしまったので、僕は手持ち無沙汰になってしまった。

「・・・普通、か」

どうやら僕はとんでもない世界に踏み込んでしまったらしい。

車の中でカルバさんから聞いた話は、到底体験出来ないことばかりだった。

旅人としてはとても素晴らしい体験だったのだろうが、踏み込んではいけない世界だったのかもしれない。

と、考えているとカルバさんが戻ってきた。

そして窓ガラスをコンコンと叩く。

エンジンは切っていたのでドアを開けてそれに応じた。

「どうしたんですか?」

「いやーちょっと予想よりも多くてよ。手伝ってくれねぇか?」

「えっ」

多かったって言うのはもちろん肉のことだろう。

一人で持ちきれないほど多いって・・・

「大丈夫だって。袋に入れてるからさ。外からじゃ何かわかんねぇって」

「大丈夫とかじゃなくて・・・」

気持ちの問題だよ。だって人の肉持って歩くなんて、なんか嫌じゃん?

「いいから来いって」

カルバさんに手を引っ張られて病院の脇へと連れて行かれる。

あれ? こんなところで受け取りしてたんだ。

さらに少し進むとカルバさんが手を離してクルリと振り返った。

その顔には笑みを浮かべていた。

「さてと。色々と話を聞かせてもらおうか」

「どういうことです?」

「なんだよ。まだ何も気づいてねぇのか」

そういうとカルバさんは自分の首の下辺りの皮膚の皮をつかむと、それをぐいっと上に引っ張った。

そのまま顔の皮膚が伸びて伸びて顔から剥がれていった。

それを全て取り終えると、その下からはカルバさんとは似ても似つかぬ顔が現れた。

「・・・あなた誰ですか?」

「まぁ俺からしてみてもあんたは誰だい?って感じだけどな」

今になってカルバさんから言われていたことを思い出した。

『誰が来ても気にするな』

あれはそういう意味だったのか。

まさかカルバさんに変装した人が来るなんて思いもしない。ご丁寧に服も一緒だ。

こんなのわかるわけがない。

「僕に何か用ですか?」

「用って程じゃないさ。ただ人肉の販売方法を教えてもらいたいってだけさ」

たしかに供給が少ない人肉は、高値で売れることだろう。

「あの男、なかなか販売方法を教えやがらねぇんだ」

カルバさんのことだろう。

それで僕に白羽の矢が立ったというわけか。

「でも僕はただの旅人です。何も教えてもらっていないので教えることは何もないですよ?」

「どんなことでもいいんだ。裏で誰かが糸を引いてるらしいんだ。そこまでわかったんだけどよ、そこからが全然わからねぇんだ」

きっとシンさんことだろう。

しかしカルバさんが何も話していないのに、僕の口から言うわけにはいかない。

「僕は旅人なのでどちら側につくとか言うことはありませんが、知らないことは教えられません。すみませんが失礼します」

そう言って男に背中を向けて車に戻ろうとした。

「おっと。ここまで連れ出したんだ逃がすわけないだろ」

男は僕の背中に何か硬いものを押し付けた。

拳銃か。僕は拳銃を見たこともないけど、なんとなくそんな気がした。

人肉を狙っているんだ。拳銃くらい持っていても不思議ではないと思った。

そして身の安全のために両手をゆっくりと上げた。

「なかなか物わかりいいじゃねぇか」

「・・・これからどうするんです? きっと僕のことなんか見捨てて帰っちゃいますよ?」

「そんなことねぇだろ。俺が知る限りだけどよ、あいつが誰かを連れているのは初めて見たんだ。そんなやつを見捨てて帰るほどひどい人間じゃないと考えた」

「つまりは人質にしようと言うわけですか」

「そういうことだ」

なんか・・・この人まっすぐな人だ。

素直というか直上型というか。なんにせよ目的のために一直線に突き進んでいる。

敵ながらあっぱれ。

「これからどうするんですか?」

「とりあえずは車のところまで戻る。まずはあいつに会わないとダメだからな」

そういうと拳銃をグイっと押し付けて、僕を歩かせた。

駐車場に着くと、カルバさんは戻ってきていた。

「おいどこに・・・」

「すみません」

「はぁ・・・だから誰が来ても気にするなって言ったのに」

「すみません」

「まぁこいつに非はねぇよ。悪いのは全部俺なんだからな!」

なぜか完全に悪人役になる男。

「こいつの命が惜しくなかったらその肉をこっちに寄こしな」

背中から拳銃を握った右手を離さずに、左手を僕の脇腹から伸ばした。

「こいつが欲しいのか」

カルバさんは手に持った肉が入っていると思われる縦横50cmの立方体のクーラーボックスを持ち上げた。

「そうだ。こいつと交換だ」

「はぁ・・・」

めんどくさそうにため息をつくカルバさん。

カルバさんに迷惑はかけられない。

いくら誘われた身ではあるとしても、タダではないものを無駄にさせてしまうのは僕としても心が痛む。

こう見えて格闘技をやっていたので、こういう場合にも対処出来る。

しかしそろそろ男も油断してくれるだろうと、その時を見計らっているのだが、なかなか拳銃が背中から離れない。

少しでも離れてくれると動けるのだが、こうピッタリと付けられてしまっていては動こうにも動けない。

「わかった。そいつを傷つけたら俺が怒られちまうからな。取引しよう」

まさかの取引成立だ。

てっきり見捨てられると思っていただけに余計に驚いた。

「よーし。じゃあそこにクーラーボックスを置いて下がりな」

男はカルバさんとの中間の位置にクーラーボックスを置くように指示した。

カルバさんは意外にもあっさりとクーラーボックスを置いて、言われるままに元の位置へと下がった。

「よーしよしよし。これから取るから動くんじゃねぇぞ」

僕は男が動き出したのを確認すると、蹴りを入れてやろうと足を肩幅に少しずらした。

その時、カルバさんをチラリと見ると、僕に向かってウインクをしてきた。

これは何もするなと言う意味なのか?

驚いた顔を向けると、カルバさんはゆっくりと頷いた。

やっぱりそういうことなのか。

僕は開きかけていた足を元に戻した。

そして静かに動向を見守ることにした。

男が僕を盾にしながらクーラーボックスに近づいていく。

そしてクーラーボックスに手が届くところまで接近。

「よし。取引成立だ」

そう言うと僕を突き飛ばすと同時にクーラーボックスを手にとって、一目散に走り去っていった。

僕は慌てて追いかけようとしたのだが、カルバさんに肩を掴まれて止められてしまった。

「追わなくていいんですか?」

「んー? 大丈夫大丈夫」

「でもせっかくの肉が・・・」

「だから大丈夫だって」

そう言って車の方へと歩いていくカルバさん。

それに続いていくと、トランクの方へと周り込んで開けた。

その中にはさっきのと同じようなクーラーボックスが入っていた。

「これは?」

「こっちが本物。んで、あっちが偽物」

「偽物?」

「万が一のために持ってるわけ。戻ってきたらあんたが居ないもんだから、俺の忠告を無視したんだと思って、トランクの中に入れておいた偽物と交換しておいたのさ」

「そんなことを・・・」

「またあいつが追ってきたら面倒だから出発するぞ」

「あ、はい」

車に乗り込んでエンジンをかけると、僕らは駐車場を後にした。

そして車内で僕はカルバさんに訪ねた。

「あの偽物の中身って何入れてたんですか?」

「牛の頭」

「げっ。本気ですか?」

「まぁ俺も見てないからなんとも言えないけどさ、シンが言うんだから間違いないだろ」

「シンさんが入れたんですか・・・」

「同じ哺乳類だし、あいつも今頃は大喜びしてるかもな。ハハハ」

上機嫌に笑うカルバさん。

ひと騒動に巻き込まれた直後だというのに、僕もカルバさんの笑いにつられるようにして、あの男のリアクションを想像して笑ってしまった。

そして車はシンさんの店へと向けて山道を進んでいった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


シリアスになりすぎないように気を付けてみました。

お久しぶりすぎてすみませんでした。


次回もお楽しみに!

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