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「俺ではダメなんですか……」
勇者オーウェンが絶望的な目をしてそう尋ねてきた。
改めてよく見ると長身で筋骨隆々なのに爽やかな雰囲気の好青年でしかも勇者の紋章付きとなれば、女性からは割と好かれそうな印象がある。
「少なくとも一か月風呂に入らずに会いに来る人はちょっとね」
「女性は濃い目の体臭が好きだと聞いたのでそうしたんですが、それに女性の駄目は了解だとも……」
「それは幻想よ」
「長身でムキムキの男が女性の理想だとも!」
「多くの女性の理想はそうかもしれないけど私の理想ではないわ」
以降アイリスは勇者オーウェンの女性に対する幻想を全否定し続けた。
同じような幻想を抱いていたらしい若い兵や貴族も数人ダメージを受けてるが、アイリスの言い分はおおむね正しいので強く生きてて欲しいところである。
「おれは……俺は王国の婿になろうと頑張ってきたのに……」
精神的にフルボッコにされた勇者オーウェンにアイリスが言い放つ。
「ノアと出会う前なら王国に相応しい婿が欲しかったけど、今は王国に相応しい婿より私を愛してくれる妻が一番欲しいからごめんなさいね」
そうして精神的にボコボコにされた勇者(と女性に夢見ていた若い男性たち)を見ながら私は思う。
「……私の攻撃よりアイリスの一言のほうが強かったね」
「あらそう?魔槍で戦ってるノアはすごくかっこよかったと思うけど」
こうして結婚式はうやむやのまま終わり、夕方には勇者オーウェンのパーティーは王都の人々からの見送りを受けて帝国へ帰っていった、
***
その日の夜。
王城にあるアイリスの部屋のベッドは雲のように柔らかくて暖かく、しかも私たちが一緒に寝ても余裕がある。
「ねえ、私たちに子どもが作れる魔法っていつできるの?」
「……まだ先だと思うよ。ここに来る前に言いつけたばかりだしね」
淫魔族の性に関する魔法は数万とも数億とも言われており、その全てを知っているものは少ない。
すぐに子作りの見つかるとは思えないし、まして魔法を作るとなると長い時間がかかる。
「その魔法が見つかったら新婚旅行に行かなくちゃね」
「新婚旅行って何?」
「貴族の伝統で結婚したら旅行に行って連日連夜子作りに励むのよ。貴族や王族は子供を残すのも重要な仕事だしね」
にっこりとアイリスがほほ笑む。
魔王城での激しい初夜のことを思い出した瞬間、連日連夜の子作りは死んでしまうんじゃないかという気がした。
「……見つかるまで時間かかりそうだし先に新婚旅行してからでいいんじゃない?」
「それもそうね、二人で行きたいところならいくらでもあるしまだいちゃいちゃし足りないもの」
アイリスの手が私の太ももに伸び、その手を私も受け入れる。
その日の夜も大変激しい夜でした。
なろう版はここまでですが、アルファポリス・カクヨム版には続きがあります




