第1話:あたしは聖女
聖女とは何か?
これ実は国によって定義が違うらしいね。
あたしの生まれた国リサルチア王国では、あたしみたいなとびきり可愛い魔法少女が聖女って呼ばれるんだよ。
ごめんなさい、ウソです。
あたしがとびきり可愛いのはウソじゃないけど。
リサルチア王国の聖女の定義は以下の通りだよ。
聖属性の魔力を持つ女性で、回復魔法みたいな聖属性魔法を一つ以上使え、かつ聖女教会とゆー宗教団体が認めると聖女なんだって。
聖属性の魔力を持つ女性自体が少ないことは少ないよ?
でも他国に比べりゃえっらい緩い基準で。
だからリサルチア王国には聖女が何人もいる。
もっともあたしくらいの実力があれば、どこの国でも聖女って呼ばれるんだよ。
外国の要人に会うと、世界唯一の聖女ニーナ様ですかって言われることもある。
リサルチア王国の常識ではないけどね。
まあ国内でもあたしことニーナ様は筆頭聖女と呼ばれてはいる。
ニーナ様は田舎町の出身の平民だよ。
どーゆーわけか、物心つく前から回復魔法を使うことができてたんだ。
だからケガした人が来ることが多くて、それをお小遣い程度の金額で治療するってことをしていた。
稼げる上に皆さんに感謝されてたから嬉しかったなあ。
当時は知らなかったけど、魔法は使ってりゃ練度が上がって上手になるし、持ち魔力容量も大きくなるんだってね。
またその成長余地は小さい子ほど大きいんだそーな。
毎日みたいにガンガン魔法使ってるあたしは、知らない内にかなりすごい使い手になってたってことだよ。
そんな時にちょっとした事件が起こった。
「おいニーナ! こいつら治療してくれ!」
「あいあいさー」
近くで隊商VS盗賊の戦いがあったそーな。
盗賊が出るって話は聞いてたけど、しっかり護衛がついてる隊商が襲われちゃうなんてことがあるのな?
いや、護衛がいるからこそ逃げずに激しい戦いになったのか。
あたしチャンバラ大好きだから、ぜひ現場を見たかった。
ともかく商人と盗賊合わせて二〇人くらい運び込まれてきたわ。
盗賊のケガも治すのかって?
治療費出せばドロボーだろーが詐欺師だろーが治すよ。
でなくて犯罪奴隷として売り飛ばすと町の結構な収入になるから、ぜひとも協力頼むって言われたの。
もっとも並みの癒し手じゃ、重傷者二〇人なんてとても診られないらしいんだけどさ。
あたしにとっては全然どうってことない数なんだわ。
虫の息の人も含めて回復魔法でがーっと治療した。
商人さんが呆然としてたわ。
「えっ……オレの左腕ちぎれかけてなかったか?」
「ちぎれかけてたね」
「死屍累々だったろう?」
「死んでないわ。死んでるやつを生き返らすのは、さすがのあたしでもムリだわ。でも生きてさえいれば、どうにでもなるよ」
「おお、聖女様!」
「ハハッ、聖女様だぞー。治療費二〇人分毎度ありー!」
あたしはおそらく聖女なんだろうと、ちっちゃい頃から言われてはいた。
ただその人の持っている魔力属性は、魔道具で調べないとわかんないんだよね。
田舎町にそんなものがあるわけもなく。
実際あたしが何者なんだとゆーことは、あたし自身も知らなかったのだ。
「聖女様。私ども一行と王都にいらしていただけませんか?」
「んー? でもあたしの回復魔法は頼りにされてるし。迷惑かかりそーなことは聖女っぽくなくない?」
「聖女様一人に負担ががかる状況こそよろしくないでしょう」
「言われてみれば」
「回復魔法を教えて、他に使い手がいればよろしいのですが」
「えっ?」
魔法というものはふつー誰かに教わるものだと、実はこの時初めて知ったの。
「じゃああたしも、他の魔法を覚えられるってことなの?」
「ハハッ、個人の持ち魔法属性の違いで、向き不向きはありますがね。聖女様の持ち魔力容量は非常に大きいようですので、他の魔法属性にも適性があるかもしれませんぞ」
「そーかな?」
「試してみてはいかがですかな? 我が隊商の護衛の中にも魔法を使える者がおりますゆえ」
「ありがとう!」
何かすぐ魔法覚えられた。
これには商人さんも護衛の魔法使いもビックリしてたけど、どうもあたし魔法に向いてるみたいだな?
それに違う魔法を覚えることでちょっと理屈がわかってきたし、回復魔法を使えるようになりそーな人にも見当がつくようになったの。
スパルタかつ特急で回復魔法の使い手(あたしの後釜とも言う)を育て、手続きが終わって隊商が王都に帰る時に間に合ったんで、あたしも連れてってもらうことにした。
「いやあ、帰りは聖女様が同行なので安心ですよ」
「そお?」
「どうやら聖女様が魔法属性を複数持っていることは間違いないようです。私の知り合いに宮廷魔道士がおりますので、調べてもらいましょう」
「わざわざ気を遣ってもらって嬉しいな。涙ちょちょ切れるわ」
「私の命が切れそうだったことに比べればいかほどでもなく」
アハハと笑いながら王都へ。
「ぜ、全属性持ち……しかも莫大な魔力容量! 考えられない……」
王都の宮廷魔道士に調べてもらったら絶句しとったわ。
いや、べつに他人を絶句させるのが趣味とゆーわけでもないんだわ。
「全属性持ちとゆーのは、どんな魔法にも適性があるとゆー理解でオーケー?」
「お、オーケーです」
「じゃああたしに魔法を教えてくれないかな? お金は払うから」
普通魔法属性って一つしか持ってないとゆーことは知ってた。
全属性持ちってメッチャ珍しいんだって。
じゃあきっとあたしに全属性くれた神様は、魔法を習得せいって言ってるんだろ。
いろんな魔法を使えたら単純に便利ってこともあるけど、あたしは魔法で生きていくことに決めた。
「ニーナさん。その莫大な魔力を活かして、研究に協力していただけませんか? でしたらタダで各種魔法をお教えいたしますけど」
「マジか。出血大サービス」
「出血したら回復魔法お願いします」
アハハ。
魔道具の研究には結構な魔力が必要なんだって。
宮廷魔道士達に魔力供与で協力して、対価としてたくさん魔法を教えてもらった。
教えてもらう魔法がなくなっても魔道研究所には通ってたんだよ。
お菓子を食べさせてもらえる……魔道具の発展に貢献できるのは無上の喜びだから。
一方で聖女教会にも挨拶に行って。
すごい聖女だ筆頭聖女だって持ち上げられて。
これまた知らんかったことだけど、聖女とゆーのは国から結構なお給料が出るんだよ。
回復魔法で稼ごうと思ってたけど、そんなことしなくてよくなった。
めでたし!
あたしが王都に来るまで筆頭聖女だったのは、カトリーヌ・ディクスドラン公爵令嬢って子でさ。
カトリーヌちゃんったら、ぐぬぬって顔であたしを見てくるの。
筆頭聖女のほうがお給料が高いのはわかるけど、カトリーヌちゃん公爵令嬢なんだから、お金に拘らなくてもよくない? って最初は思ってた。
そしたら全然違う理由であたし恨まれててさ。
何とリサルチア王国の王太子たるアラスター殿下が一五歳になった時、年回りの合う最も高位の聖女が殿下の婚約者に指名されるそうで。
アラスター殿下とカトリーヌちゃんの恋路を、突然現れたあたしが邪魔する格好になってしまった。
マジでごめん。
あたしはアラスター殿下の婚約者なんかに全然興味はなかったから、カトリーヌちゃんに譲って全然構わなかったんだよ?
でもそんな簡単じゃなくて。
要は市民人気を取れるより実力のある聖女を王家に、とゆー思惑があるようなんだよね。
以上、あたしがアラスター殿下の婚約者に指名された経緯を駆け足で説明いたしましたちゃんちゃん。




