レッサーパンダとクマ祭り
清坂正吾さま「クマ祭り後夜祭」参加作品です。
その日、レッサーパンダは飛び起きた。
「たいへんだっ! クマまつりこうやさいが……あと、3じかんしかない!」
レッサーパンダはいそいそと着替え、街へと繰り出した。
街には沢山の屋台が並んでいたが、その殆どが片付けだしていた。当然である。最終日の24時まで律儀に店を運営することは簡単ではないのだから。
「あの、くしやきひとつください」
鉄板を磨き始めた店主に、レッサーパンダは銅貨を差し出した。
「ごめんな、坊っちゃん。俺の店はもう売り切れだ、ほかを当たってくれ」
しょんぼり肩を落としたレッサーパンダ。しかし、店主は知らなかった。彼の、頑固さを。
(こうなったら、全力でクマ祭り後夜祭を最後の瞬間まで楽しんでやる……!)
――彼の中で、小さな闘志が燃えだした。
レッサーパンダは手当たり次第、出店の店主に声をかけていった。
「たこやきください」
「チュロスまだありますか?」
「やきそば何円ですか?」
「くまなべくだ……くまなべぇっ!?」
だが、その店のどれもが営業を終了していた。
悲しみに暮れるレッサーパンダ。
(もっと早くに起きていれば……そもそも昨日来ていれば……)
ちなみに寝坊したのは、昨日小説投稿サイトの完結済み連載にハマって最後まで主人公を見守ったからであり、これまで来なかったのは寒波で家にひきこもっていたからである。
要するに、自業自得というやつだ。
そんな悲嘆に暮れるレッサーパンダの前に、躍り出る一つの影があった。
「あなた、レッサーパンダ? わたしはマレーグマ! よろしくだわん」
にこっと微笑み、手を差し出すマレーグマを見た瞬間。
(好き……)
レッサーパンダは恋に落ちたのだ。
それから、二人(いや、二クマ)はお祭り会場を回った。
もう屋台は片付けられ、開放感あふれる庭園へと様変わりしていた。
マレーグマは友達をレッサーパンダに紹介してくれた。
歌うクマ、トラックを運転するクマ、空飛ぶクマ。
誰もがレッサーパンダを歓迎してくれた。
(なにも食べるだけがお祭りじゃない)
食い意地しか張っていなかったレッサーパンダにとって、それは大きな気付きだった。
「あ、花火」
ふいに、クマ仲間が空を見上げて呟いた。
打ち上げられた紅い光は、空中で割れ、クマの形を描いた。
「ほんとだわん」
マレーグマと、他のクマ仲間も隣に来て空を眺める。
レッサーパンダは満たされた気持ちで、いつまでも空を見上げていた。
この作品は「ふりがなに『レッサーパンダ』を入れろ!」(https://ncode.syosetu.com/n3888lt/)の裏話的な作品となっています。
レッサーパンダは厳密に言うとクマではありません。




