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『ねぇ、壁に指ってめり込むんでしょ?……え、違うの?』

作者: TERU
掲載日:2026/01/01

地下の通信室は、いつもよりノイズが多かった。


ミカは端末を抱えたまま、そっと整備兵へ尋ねた。


「……外って、本当にそんなに危ないんですか?」


「危ねぇよ。ヴィクターさんがAI兵器で筋トレしてるくらいにはな」


「……………………はい?」


耳がおかしくなったかと思った。


だが次の瞬間、扉が勢いよく開く。


「おーいミカ!質問タイムだって聞いたぞ!」


金髪と筋肉と太陽みたいな笑顔。


噂の本人が、なぜか嬉しそうに入ってきた。



「……あの、本当に……AI兵器で筋トレって……?」



「お、そこ聞いちまったか!


 よし、外トレ時代の話、全部してやる!」


リラがコーヒーを置き、ため息をついた。



「ミカ、覚悟して聞きなさい。」



なぜ覚悟が必要なのか、この時のミカにはまだわからなかった。



---



◇ 第一章:人型AIでウォーミングアップ



地表に出た瞬間、灰が揺れた。


波のようにうねり、その奥から白い人型AIが立ち上がる。



骨のようなフレーム。無駄のない殺傷動作。



「あいかわず気持ちワリィなお前」


「どうだミカ?気持ち悪さ伝わったか?」



「え、いや、まぁ、うーん、はい⋯⋯」


(え?何、いちいちそうゆう感じ?)



AIが突撃してくる。


常人なら視認すらできない速度だ。



「遅ぇよ」



ヴィクターは横に体を傾けただけで避け、


すれ違いざまに腕を掴み、地面へ叩きつけた。



> ドガァッ!



起き上がろうとしたAIの頭部へ、

近くのコンクリ塊を振り下ろす。


> ズゴォッ!



「よし、一体目終了!」

「どうだミカ?カッコいいか?」


「あ、いや、カッコいい?です!」


(……まずこの質疑応答どうにかならないかな?)



---


◇ 第二章:ドローン4機で反復横跳び


灰空が低く震え、黒いドローンが四機降下してくる。

レーザー照準が一斉に点滅。


「反復横跳びの練習だ!」

「どうだミカ?やってみるか?反復横跳び」


「話しましょう!」


「なんだよ、釣れないやつだな」


(いや……だって中身全然入ってこないもん)


ヴィクターは鉄骨を掴み、横へ跳ぶ。

一撃で一機粉砕し――


コンッ。

黒煙ボフッ。


「四勝ゼロ敗!敏捷性OK!」

「どうだミカ?」


「あ!おっOKです。」


(ヤバい全然聞いてなかった)




---


◇ 第三章:虫型AIでインナー強化


アスファルトが割れ、昆虫型AIが姿を現す。

脚は太く、複眼は不気味に動く。


「腹弱そうだな。インナー行くか」


ヴィクターは欲しそうな目でこっちを見る。


(とりあえず止まらないで話してくれる……)


脚を折り、腹の下へ潜り込み、

そのまま虫型AIをベンチプレス。


> ズシャァッ!!




地面へ叩きつけて撃破。


「インナー終わり!」


(いや、ちゃんとすごい……)



---


◇ 最終章:鳥型AIでフォーム確認


灰空が静まり返る。

上空から影が落ちてきた。


骨の翼、長い嘴。

古代の怪物のような鳥型AI。


「フォーム確認にちょうどいいな」


ヴィクターは電柱を持ち上げた。

軽々と。


(電柱!?軽く、って言いましたよね今……?)


影が急降下。

殺意の軌道。


「うぉらぁぁぁ!!」


> ゴオオオオッ!!

バキィィィッ!!




電柱の一撃で、影は灰空へ血飛沫を散らし落下した。


「今日もいい筋トレだった!」


(……いくらなんでも盛りすぎ……?)




---


語り終えると、ヴィクターは胸を張る。


「どうだミカ?」


「はい、凄かったです。」


(……どうも何も本当だったら人間じゃないのでは?)


ヴィクターが笑顔で言う。


「よし、お前も特訓だ!」


「嫌です!!」


「まず壁に指をめり込ませろ。建物ごと持ち上がるはずだ」


「……え、指?いやいや、頭沸いてる?(ヤバっ声に出てた)」


「何言ってんだお前?頭は沸かねーだろ?焦げてんだ!ほらおデコの辺り」


リラが咳き込む。


ミカは頭を抱える。


続けてヴィクターが、

「でも指くらいは普通に入るぞ!ほら、ズズズッ」


「うわぁ、普通にスゴい!本当だったんですね(以外と簡単?なんか楽しそう)」


「私にもできるかな?」


「あ?俺の筋肉は嘘つかねぇよ!大丈夫だ!コツさえつかめば“だれでも”できる!」



「やりたい!教えて下さい」


「良し!いいかミカ!指はな、壁を“押す”んじゃなくて“貫く”イメージだ!躊躇したら逆に痛いから、一気にいけ!」


「わかりました。一気に貫く……せ(あ、これ絶対ダメなやつだ)ぃぃっ……」


「クッ!?」


ミカは指を抱え俯いて沈黙。


その瞬間、リラが口に含んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。


さっきまで楽しそうに武勇伝を話していたヴィクターは音を消して去っていた。


(うそじゃん……ァッツ……指ついてるかな……あっ、ついてた…)



---


◇ 後日談


この日を境にミカは、

ヴィクターを「人間」ではなく、


筋肉寄りの自然災害


として分類することにした。


もしかしたら、この終末世界は筋肉でどうにかなるかも?

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