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プロローグ

目的地に辿り着いた時、マイクロバスの前で大学生位の男女が何やら話をしていた。


会話の雰囲気からすると、多分それなりに付き合いが長そうなんだけど、男性の方は若干前のめりになって、足先は相手の方をしっかり向いてるのに、女性の方は相手から若干体を仰け反らせ、片足をバスの入り口に向けている。しかも、たまに自分の首元まで触ってるというオマケ付きだ。


「これは望み薄ね…..」


と思わず呟いた時


「えっ、何か言った華凛ちゃん?」


とお姉ちゃんが不思議そうに尋ねてきた。


「あっ、ううん何でもない。ただの独り言」


ふふっとお姉ちゃんが微笑む。


そうこうしてる内に、向こうの会話が終わったみたいで、女性の方が乗り込んで行くのが見えた。


お姉ちゃんが


「こんにちは。あの、私達、友人が参加出来なくなったので、急遽参加させていただく事になった――」


と切り出すと、さっきの男性から


「ああ、はい!月代さんですよね。姉妹でのご参加との事で、お話は伺っております。本日はご参加いただきありがとうございます!僕は今回マイクロバスの運転兼、皆さんのご案内をさせていただきます奥田啓介おくだ けいすけです」


と何処となく緊張を感じさせながらも、とても丁寧な返事が返って来た。



あれはそう一昨日の夕方、私達が学校から帰って来た時の事..…


「ねえ華凛ちゃん。明後日の休日って空いてる?」


「先週あらかた消化出来たお陰で、今積みゲーとか無いし、まあ空いてると言えば空いてるけど、どうして?」


「えっと実はね、私のクラスのお友達のご家族に急遽どうしても外せない用事が入っちゃったらしくて、予定していたミステリーツアーに兄妹揃って行けなくなっちゃったみたいなんだけど、人数が足りないと開催してる人達が困るみたいで、代わりに私達にどうかなって......」


「あーそういう事ね。ミステリーツアーってあれでしょ。あの景色を分からなくしたバスとかで、色んな所を回る感じの?」


「それがね、どうも何処かの洋館に集まって架空の事件を解くとかの方のミステリーみたいなの」


「へえ、そんなのもあるんだ。でも事件かぁ...。正直、現実の方で手いっぱ......」


「うん、だからね、寧ろちょっとした気晴らしになるかなって。最近、華凛ちゃんと何処かに遊びに行くって事もあまり無かったし.....」


そう言って、お姉ちゃんは少し寂しそうな顔をした。私はお姉ちゃんのこの顔に弱い。


「あ~うん!そうだよね!折角だし行こっかっ!」


私が慌ててそう言うと、お姉ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。



私の実の姉である月代華澄つきしろ かすみは私より一つ上の16歳で、同じ高校に通っている。

身長は178cmで髪はロング、髪の色は私と同じで少し茶色がかっている。


実は足が結構太いけどかなりの美人だし、パッと見はモデルに見える。また、とんでもない能力も持っていたりする。


正直、本当に私の姉妹か?と感じる程、差を感じずにはいられないのだが、私の自慢のお姉ちゃんだ。



○あ~華凛ちゃん達可愛い~。尊い~......ハッ!しっ、失礼しました!私この世界の女神をやってます!


さっきから話している子の紹介がまだなので、私から紹介させていただきますね!


彼女の名前は月代華凛つきしろ かりん、身長は157cm、ショートカットで左側の触角が長いアシンメトリーの髪型が特徴のすっごく可愛い子なんです!


あっ!あと、この世界の約束事についても簡単に説明させていただくと、"○"で囲まれた部分は私(女神)の発言で、華凛ちゃん達には聞こえてません。また私は女神なので、ここでの発言に嘘は一つもありません。また、華凛ちゃんは良い子なので、彼女の心の中の声にも嘘はありませんが、滅多にないものの本人が勘違いしてしまっている場合はあります。


以上を踏まえて続きをお楽しみ下さい!私は華凛ちゃん&華澄ちゃんウォッチングに勤しみます!でへへ○



「今日のミステリーツアーって、架空の事件を解く趣向のものだって伺ったんですけど、実際どんな感じなんですか?」


ちょっと気になっていたので、奥田さんに聞いてみた。


「ああ、僕も詳しい事は分からないんです。実は、今回のツアーを計画した方から、それぞれがそれぞれの役割についての話しか聞かされていないという状況な上、その情報を共有する事も禁じられているので、皆で協力して出来た事って言ったら、会場の準備とか掃除位で...」


「そうだったんですか。それはなんというか...色々大変そうですね」


「ええ、本当に。その分、皆さんに楽しんでいただけると良いんですけど。今回のイベントが成功したら、本格的に商売にしようって話もあるみたいですし....あっ!そういえば、昼食の用意はされてしまってますか?」


「いえ、特には...。クラスのお友達からは詳細を聞いてなくて分からなかったので、どうしようか迷ってたんですけど....」


お姉ちゃんが答える。


「ああ良かったです。昼食は向こうでシェフが腕によりをかけてご用意してますので、ご心配なさらないで下さい!一応皆さんには伝えていたのですが、確認の為、再度こちらから連絡するべきでしたね。すみません」


「いえ、そんな...お気になさらないで下さい」


きっとそそっかしい友達だったんだろうな。それにしても美味しい料理が食べられると思うと今から心が踊った。


「すみま...ありがとうございます......あっ!そういえばお二人とも、アレルギーとかは大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です」


お姉ちゃんが再び答える。


「ああ、良かったです――そろそろ出発の時間ですね。お好きなお席にお座り下さい」


奥田さんに促され、私達はバスに乗り込んだ。










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