俺、生まれ変わったら【車】になれてて喜んだのもつかの間…
……俺は、車。
最新の技術が搭載された、日本で一番売れているハイブリッドカーだ。
昔、俺は人間だった。
名前は忘れたが、車好きな男だった。
何らかの事故で命を落としたとき、俺は願った。
「生まれ変わったら、最新の車になりたい」
そう願ったのには、理由がある。
俺は金がなくて…安い軽自動車しか乗れなかったのだ。
給料が安すぎて乗りたい車の購入はおろか維持費も出せない状況で、ずっと高級車に憧れ続けていたから…忘れられるはずもない。
エアコンの効かなくなったポンコツに乗り続けるしかなくてくさっていた事と、知り合いが5年毎に新車に乗り換えていて憎たらしかった事だけが、いつまでも心に残っていた。
願いが叶ったのだと喜んだ瞬間は、確かにあった。
だが、しかし。
―――こいつか!一番高い車は!
俺を購入したのは、金持ちの後期高齢者だった。
俺は願った。
「一刻も早く、生まれ変わりたい」
そう願ってしまうのは、当然である。
耄碌ジジイはマイルールで俺を運転し、いつ大事故を起こすか気が気でなかったのだ。
めちゃめちゃな理論で己の不注意を正当化し、運転ミスを車輌の不具合と言い張り…地獄でしかない。
恐ろしい願いをしてしまった事と、願いが叶ってしまった事が、いつまでも心をえぐり続けた。
……願いが叶ってしまって、もう…どれくらい、たっただろう?
―――たまには遠出をして気晴らしするか!
車を出すたびに息子と娘にうるさいことを言われて憤慨していたジジイは、誰にも行き先を告げずに旅に出た。
ガソリンスタンドでクレジットカードを受け取らずに発進し、縁石を乗り越えて道が悪いと激怒し、なんでバーが上がらないんだと怒鳴りながら高速道路に侵入した。
俺は願った。
「誰か、止めてくれ!」
そう願ったのには、理由があった。
ジジイは、早朝の、通行の少ない時間帯に、通行量の少ない路線を選んで、一番通行量の増える頃に一番混み合う場所に合流しそうだったからだ。
どんどん速度を増すジジイは、スピード超過の警告音が聞こえず…全く気がついていない。
最新の機械は使い方がわからんわとブツブツ言いながら、画面に出ているDANGER表示を無視している。
……せめて路肩に突っ込んで自損で済んでくれ!
―――なんだ?あいつあんなボロい軽のくせに…眩しすぎるだろう!運転マナーを知らんのか!
1台の軽トラックが、パッシングをして、ギリギリ正面衝突を回避した。
遠くでサイレンの音がする。
俺の願いも…むなしく。
並走するパトカーを無視してバリケードを突破し、衝撃でハンドルを取られたジジイは、壁に激突して炎上した。
すぐ近くにあるガソリンスタンドに、強風にあおられた火が……。
ああ、次に・・・生まれ変わったならば。
おれは・・・
・・・
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なお、2024/2月の投稿作品はすべて生まれ変わりをテーマにしています。
他にもおかしなモノに生まれ変わってしまった人のお話を書いているので、気が向いたら見てね!!
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