普通の女の子?
駅前のファストフード店に入ることが決まると、姫天皇も霊体化し、俺は蒼空と二人、ポテトとジュースを買い、席に座った。
俺はジュースを一口飲むと蒼空に尋ねた。
「さっきみたいなことが、よくあるのか?」
蒼空は頷いた。
「僕は学校にいる間と寝ている間、四人の言霊使いに巡回を……パトロールを頼んでいるんだよ。自由に動き回ってもらい、もし穢れを見つけたら自らの判断で祓い、場合によっては連携して治癒を行うよう、お願いしてあるんだ。
穢れは、言霊使いであればよっぽどのものでなければ祓うことができるからね。後でみんなから報告を受けるけど、相当な数を祓っているよ」
「なるほど。だからすべてに関わることができないのか」
「うん」
「中条先輩みたいに心の傷を負った場合はどうしているんだ?」
「中条里美はレアケースだ」
「レアケース?」
「穢れは中条里美が歌詠みだと思っていた。だから全力で襲い掛かった。心に傷を負うまでの攻撃を穢れがすることは稀だよ。もし中条里美のようなケースだったら、もちろん僕自身も動くね」
蒼空はそう言うと、砂糖もミルクも入れていないコーヒーを口にした。
俺はまだ砂糖やミルクなしのコーヒー、つまりブラックコーヒーを飲んだことがなかった。
だからそれを飲んでいるだけで蒼空がとても大人びて見えた。
「……その巡回は、俺も小町と姫天皇にお願いした方がいいのかな」
「そうだね。湊がそうすれば、救われる人が増えると思う。結界の展開の仕方を覚えたら、二人に巡回をお願いしてみてよ」
蒼空が綺麗な笑顔を浮かべた。
そんな蒼空の笑顔を、少し離れた席の女子学生二人組がちらちらと見ていた。
これだけの美形だ。
さぞかしもてるんだろうな……。
「湊、言霊使いについて何か聞いておきたいことはあるかい?」
俺は蒼空に視線を戻した。
「あ、うん。小町や姫天皇は普通の人間にしか見えないけど、実際はどうなんだ? 俺たちみたいに食べ物を食べたり、風呂に入ったり、トイレに行ったりとかするものなのか? 夜に巡回をしているということは、睡眠は必要ないみたいだけど……」
「湊、そんなことが気になるんだね」
蒼空は微笑んだ。
「いや、だって、二人とも女の子だろう。お腹すいた、なんて俺に言いにくいだろうと思って……。トイレなんて、なおさらだろう」
「……湊は優しいね。霊体化したいかどうかも二人にちゃんと確認していたし。二人を女の子として見ているんだね」
「蒼空は違うのか?」
「紫も蜻蛉も伊勢も和泉も、とても素敵な女性たちだよ。でも一線は引いているかな。僕は歌詠みで彼女達は言霊使いだから」
「そうなのか……」
「それでお腹をすくかどうかの件だけど、そういった生理現象は彼女達にはないみたいだよ。これまで半年近く彼女達と過ごしてきて、何か食べる姿とか、トイレに行く姿は見たことがないかな」
「ふうーん。それを聞くと普通の女の子とは違うんだな……」
すると。
――そんなことないです、主様! 姫天皇は普通の女の子と同じです! 主様がおやつをすすめてくれたら喜んでいただきますし、シャワーだって、主様が浴びるなら喜んでご一緒します!
最後の言葉に俺は飲んでいたジュースを吹き出しそうになり、それを必死でこらえた。
「……湊、大丈夫か?」
俺は頷きながら、ペパーナプキンで口元を拭った。
「蒼空はさっき、彼女達と半年過ごした、って言っていたよな? 蒼空は歌詠みになってまだ半年なのか……?」
「うん。そうだよ。この春に歌詠みになった」
「ベテラン感、半端ないけど」
「それは師匠が良かったからかな」
「師匠がいるのか……?」
「うん。湊も僕に会っていなかったら、白狐が師匠を紹介していたと思うよ」
「へぇ……」
「明後日、師匠に会うけど、湊も会ってみるかい?」
「うん。会ってみたい」
「分かった。連絡しておくよ」
「あ、それと俺、結界の展開の仕方、祓いの仕方を知りたいんだけど」
「そうだね。……明日の午後は空いている?」
「空いている」
「じゃあ、明日の午後、待ち合わせしようか」
こうして俺は明日、蒼空と会う約束をして、家に帰ることにした。
本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
湊はポテト好きでカリッと揚がった塩味濃い目がお気に入りのようです。
皆さんはどんなポテトがお気に入りでしょうか。
それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう
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