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完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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穢れ

蒼空の四人の言霊使いはみんな霊体化したので、俺は姫天皇ひめみことと蒼空と三人で駅まで向かうことになった。


すっかり暗くなっていて、一斉下校をしていたので、俺達三人以外で歩いている人はほとんどいなかった。


おかげで姫天皇ひめみことが霊体化していなかったが、気兼ねなく話すことができた。


「なあ、蒼空。中条先輩だけど、未だに行方不明なんだ。蒼空は何か知っているか?」


「彼女ならさっき、家に帰したよ」


「え、どういうこと?」


「穢れは人の負の感情から生まれて、それを生み出した本人にそのまま憑りつき、他者を傷つけたり犯罪に走らせる場合もあれば、生み出した本人を離れ、他人に憑りつき、憑りついた相手に犯罪を起こさせる場合もあるんだ。あとは穢れ自体が攻撃を行うこともある。つまり歌詠みに対する攻撃のことだね」


「中条先輩の場合は……?」


「中条里美の場合は、他者に憑りついた穢れに襲われたんだ。ナイフで脅され、歓楽街のいかがわしい場所に連れ込まれそうになっていた。それを紫が見つけ、すぐに穢れを祓った。でも中条里美は穢れそのものにも触れてしまっていた……。


つまり、中条里美自身の負の感情が、穢れに触れたことにより刺激され、穢れを生み出しそうな状態なっていたんだよ。だから歌詠みの協力者がいる病院へ運び、そこで穢れを祓い、蜻蛉から治癒を受けていたんだ」


歌詠みの協力者とは、過去に歌詠みの活動で救われた人達の子孫、現在救われた人など多岐に渡っていた。主に道鏡の攻撃から救われ、協力者になった者が多く、歌詠みの存在を秘匿しつつ、陰ながら支援を続けているという。


「協力者の件は理解できたけど、蜻蛉による治癒……。俺はてっきり、言霊使いが行う治癒は、歌詠みや言霊使いに対してのみなのかと思ったけど、違うんだな」


「いや、それは僕が説明不足だったね。回復のステータスを持つ言霊使いができる治癒は、穢れや呪魂によりつけられた傷や怪我、そして心の傷なんだ。穢れや呪魂によってつけられたものであれば、それがただの人間であれ、歌詠みであれ、言霊使いであれ、治癒が可能なんだよ」


「そーゆうことか」


「中条里美の場合は、傷と言ってもそれは心の傷のことなんだ。穢れに触れたことで負の感情が刺激され、それで心に傷を負った。肉体の傷はすぐに治癒できても、心の傷の治癒には時間がかかる。それで今日まで時間がかかってしまったんだよ」


「なるほど」


「ちなみに湊の場合は、覇気で吹き飛ばされてできた怪我や傷を、蜻蛉が治癒したんだよ」


「そうだったのか……。でも中条先輩の心の傷が治癒できて良かった……。明日から夏休みだし、その間に先輩が元気になってくれるといいな」


「そうだね」


蒼空はそう言って微笑んだが、突然立ち止まった。


さらに姫天皇ひめみこが、俺の腕をぐっと抱きしめた。


「和泉、蜻蛉」


蒼空が短く二人の言霊使いの名を呼んだ。


その瞬間、和泉と蜻蛉が蒼空の隣に現れた。


「すぐそこの先の公園だ。頼んだよ」


蒼空の言葉に二人が頷いたと思ったら、その姿が見えなくなった。


「蒼空、何が……」


「説明は後だ、湊」


蒼空はそう言うと駆け出し、俺はその後を追った。



姫天皇ひめみこと、何か見えるか?」


俺は並んで走る姫天皇ひめみことに聞いてみた。


「はい。見えます。この先の右手に公園がありますよね、主様あるじさま


「……公園、あ、ああ。あれのことか。確かにシーソーと砂場はあるけど、不法投棄されたごみが転がっていたりで、放置された公園みたいなのがあるな」


「それのことです。そこで穢れにより操られた男が、女性に襲い掛かろうとしています」


「えっ⁉」


「でも今、和泉が祓ったので、未遂で終わりました」


そこで蒼空と俺たちはその公園に着いた。


伸び放題の草むらに会社員らしき中年の男性が倒れており、その傍に和泉に支えられ、蜻蛉から治癒を受ける若い女性の姿が見えてきた。


「良かった。未遂で終わった」


蒼空がホッとした表情になった。


「警察に通報するか?」


「本来ならそうしたいのだけど、こうやって穢れを祓い、治癒をする人間は一日に何十人という数になるんだ。さすがにそのすべてに関わることはできない……。男は簡単には目覚めないけど、女性の方は蜻蛉の治癒が終わればすぐ目覚める。幸い女性は穢れにも触れていないし、目覚めたら女性が自分で通報すると思う」


主様あるじさま、間もなく治癒が終わります」


蜻蛉が蒼空を見た。


蒼空は頷き、「行こう、湊」そう言うと、公園を離れた。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

また昨日に続き、来訪くださった方も、本当に感謝でございます。

今日は2話公開です。引き続きお楽しみください!

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