エピローグ
「紫は……札に戻ることになった理由、何が起きたかを覚えているのか？」
紫は首を振った。
「覚えてはおりませんが、何があったかは教えてもらいました。……あの時は皆に苦しい思いをさせてしまい、申し訳なかったと思っています」
「どうして？ 紫は何も悪くないのに」
「ですが、紫のために、皆に手間をかけ、辛い気持ちに……」
俺は紫を抱きしめた。
あの時のことを思い出し、俺は胸がいっぱいになっていた。
紫との別れ、どれほど辛いものだったか。
もう絶対に、絶対に、紫を失いたくない。
「主、泣いているのですか……？」
紫が俺の腕の中で、顔を上げていた。
その紫の頬に俺の涙がこぼれ落ちた。
紫は俺の頬に唇を寄せた。
「主、紫はここにいます。どこにも行きませぬ」
俺はただただ頷くので精一杯だった。
すると紫は
「悲しい別れはありましたが、紫は主の元へ戻ることができました」
俺は頷いた。
「再会した時、主は今のように号泣しながら抱きついてきて」
……そうだった。
「さらに翌日の朝にはベッドで眠る紫をじっと眺め、目覚めた紫を……後ろから襲ってきました……」
……！
「ち、違う、いや、違わない⁉ いや、あれは、その……」
「姫天皇がいなければ大変なことになっていました」
紫の指摘に俺の涙はすっかり止まっていた。
「あ、あの時は確かに悪かった。で、でも、紫があまりにも魅力的で……。しかも俺の隣で寝ていたから……。が、しかし、あれはまずいよな。確かに。付き合っているわけでもないし、わ、悪かった。すまない、紫……」
「まあ、確かに、あの状況では仕方なかったですよね。紫も無防備過ぎました。今後も主が成人するまで過ちが起きないよう、気を引き締めます」
「……え？」
紫はニッコリ笑顔で俺を見ている。
そ、それってあと三年間は禁欲生活……？
こんなに大好きで魅力的な紫がそばにいるのに……⁉
俺、守れるのか⁉ いや、守らないといけない……。でも～～～。
「あーっ、ちょっと‼ 主様、紫とベッドで並んで、な、何をしているんですか⁉」
部屋に戻ってきた姫天皇は一気に鬼の形相に変化した。
「まさか、小町の次は紫がライバルなの⁉」
姫天皇の睨みにさすがの紫も「それは……」と言葉が出ない。
「も～～、小町なら勝ち目はあると思ったけど、紫には勝てる気がしません！」
姫天皇はそう言うと、ベッドにダイブしてきた。
「紫、こうなったら主様のことは二人でシェアしましょう！ 今、シェアリングって流行みたいですし！」
「な、姫天皇、それはダメだ」
紫は俺に抱きつく姫天皇を引きはがそうとした。
そこに業平が戻ってきて「おやおや、主様はわたくしよりモテますね」と笑い、さらに莉子先輩が「おーい、湊、レストランに穢れを連れた客がいるから、ちょっと祓ってもらえるかー？」と顔を出し、蒼空は「様子を見に来たけど、なんだか立て込んでいるみたいだね」と笑い……。
高校一年生の夏、律は「忘れられない夏にしないと」と言っていたが、確かにそんな夏になったことは間違いない。
歌詠みになり、言霊使いと出会い、沢山の敵と戦い、強くて綺麗な彼女もできた。
そしてまだ夏は終わっていない。
俺は「よし、みんな、穢れを祓いに行くぞ」そう言って笑顔でベッドから立ち上がった。
最終回までお読みいただいた方、ありがとうございました。
引き続き下記作品を更新中なので、良かったらそちらもお楽しみください！
【お知らせ】第二部更新開始
『千年片想い～ピュアな魔王の純愛記～』
【Episode２】天界大騒乱の連載が始まりました！
https://ncode.syosetu.com/n8017hs/
天界との戦に負け、アジアの島国・日本に堕とされた魔王マティアス。
魔力もなく、翼もなく、身一つの元魔王は
残された側近――美貌の秘書ソフィアとベラとロルフの2人の騎士のために
千年守った禁欲の誓いを遂に破るのか⁉
快楽を好む悪魔だったのになぜか童貞の魔王。
その秘密が次第に明らかになり……。
エピソードが進むにつれ、まさかの展開、新たなキャラクター
驚きの真実が次々と明かされていきます‼
【Episode２】天界大騒乱 ※R15要素あり
紆余曲折を経て、ソフィアとは毎晩甘い時間を過ごせるようになったマティアス。
でも信じられない『役割』を担わされ、心身共にボロボロ寸前。
そんな中、とある因縁のある者を救出することになり、事態は大きく動き出す。
イケメン元魔王の甘々で溺愛な姿、悶々とする姿、キリリとした姿が楽しめます‼
ちなみに第一部はこんな感じです。
【Episode１】千年片想い
日本で住まいと仕事をなんとか手に入れる中、ソフィアへの想いを募らせるマティアス。
もう魔王ではないのだから元秘書であるソフィアを解放するべきかと悩む中、
大物に認められ仕事は順調、でも魔王騎士団が暗躍し……。
マティアスが禁欲を守る切なすぎる過去が明らかに‼
Hなのにピュアな魔王のキュンキュンなところが見どころです。
毎日更新でサクサク読めると思うので
ぜひチェックいただき応援をいただけると幸いです。
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それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう！
