表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/68

大切な話

本陣の結界は多重にそして多数展開され、それはもう砦のようになっていた。


祓いのステータスの言霊使いも結界の展開に注力し、回復の言霊使いはその場で力の補給を行った。


攻撃のステータスの言霊使いは集まり、どのような攻撃を行うか、作戦を練っていた。


――湊。


突然、義経が俺に声をかけた。


――大切な話があります。紫と業平を呼んで一度結界の外に出てください。


俺は紫と業平に食料を調達するので手伝ってほしいと声をかけ、結界の外に出た。


外はまだ明るいがもうすぐ十六時になるところだった。


「私が呪魂だから知りえた情報をこれから話します」


この言葉に紫も業平も義経が話していると分かったようで、静かに頷いた。


「道鏡はまず、魂に対し、いきなり呪いはかけません。自分を信頼させるために、現世うつしよに現出するために必要な肉体をまず与えます。魂が肉体に入るために通る場所、それがここです」


義経が二人に背中を向けた。そして指さしたのは、後頭部の髪の生え際の、右側の部分だった。


「ツボではここを『天柱』と呼んでいます。ここから魂は肉体へ入ります。そして同じ位置の対面にあたる左、ここも同じく『天柱てんちゅう』と呼ばれる場所ですが、ここに呪いを入れるのです」


義経はそう言うと、体を元に戻し


「放たれた覇気の強さ、範囲、そこから察するに、敵はかなり巨大ではないかと思われます。恐らく道鏡はダイダラボッチと言われる巨人の肉体を手に入れ、そこに魂を入れたのではないかと推察します。ただ、巨人であろうと、天柱から魂を入れ、呪いを入れたことに違いはありません」


「もしやその天柱が巨人の呪魂の弱点であると?」


紫の言葉に義経は頷いた。


「まず天柱に覇気をあて、塞がれた入口を開く。次にそこへ覇気を送り込む。そうすれば呪いは祓われ、魂は砕け、巨人の呪魂を倒すことができるでしょう」


「その方法をなぜわたくしと紫に? 三本の矢作戦を提唱したのはあなたと聞いておりますが?」


「……これを口にすると、私がその巨人の呪魂なのではと疑われてしまうかもしれません。戦火を生きた私もまた、勝利のために常識を覆す様々な作戦を行ってきました。そして今回やろうとしていることは……失敗すれば私は非道な人間として歴史に刻まれる作戦です」


義経の苦悩が俺にも伝わってきた。


本当はこの作戦をやりたくないが、この作戦しか、全滅を回避する手段がないんだ……。


「……戦というものは、時に非情な決断を人に求めます。思慮深いあなたがそこまで言うということは、恐らく、もうその手しか我々に勝ち筋がない、ということなのでは?」


紫の言葉に義経は目を細めた。


「……あなたもまた、それだけの戦いを経験してきた、ということですね」


紫と義経の間で、互いを理解しあう何かがあったようだ。


義経はしばしの沈黙の後、口を開いた。


「本陣はおとりです。巨人の呪魂に天柱を狙っていることはバレてはなりません。巨人の呪魂が本陣の壊滅に夢中になっている隙に、紫、業平、同時に天柱の入口を開き、覇気を送り込む必要があるのです。どちらか片方だけ成功しても作戦は失敗です。


もし左の天柱に覇気を送り込み、呪いを祓っても、残された魂は暴走するでしょう。……道鏡の呪いが祓われても、止まらなかった私のように。右の天柱に覇気を送り込み、魂を砕いても、残された呪いの力だけでも巨人の体は動き続けます。ですから同時に、巨人の呪魂に気づかれずに作戦を遂行する必要があるのです」


「もし、この作戦が失敗すれば……全滅ということですか?」


業平の言葉に義経は首を振った。


「それ以上のことが起こります。我々が全滅すれば空間転移の結界は消えます。それが何を意味するか、お二人なら理解できますよね」


俺たちを全滅に追い込んだ巨人の呪魂が、現世に放たれることになる……。


そうなったら現世は地獄に変わる……。


「よく、分かりました。本陣に大きな被害が出る前に、巨人の呪魂を倒せばいいのです。紫はこの作戦に身を投じることをほまれに思います」


「紫、二人同時に、巨人の呪魂の天柱を狙うなんて、そんな簡単なことでは……」


業平の顔は青ざめていた。


それはそうだ。


リハーサルができるわけではない。

一発勝負で決めなければならない。

だが戦場においては何が起こるか分からない。

不測の事態が起きる可能性もある。

だが失敗は許されない。


失敗は自身の死だけではなく、仲間全員の死、ひいては人類の終焉にもつながりかねないのだから。


俺は静かに口を開いた。


「業平。お前の気持ちはよくわかる。もしもを考えれば、背負う命運はあまりに重すぎる。その荷をお前に無理して背負わせるつもりはない。俺が背負う。俺には神器がある。神器であれば呪いも祓えるし、魂さえも破壊できる。業平の代わりは俺が務める」


紫が息を呑み、業平は目を大きく見開いた。


だがすぐに業平は、自分の思いを言葉にした。


主様あるじさま、あの時、義経を討ち果たしたのはこの業平だったと聞いております。業平には生まれ持っての強運があります。


生前はタブーとされる恋に二度も手を出しましたが、それによって命を落とすことはありませんでした。相応に長生きさせてもらいました。これもひとえにわたくしの強運ゆえでしょう。この作戦も必ずや成功させてみせます」


「業平……」


「つい、弱音を吐いたこと、それは忘れてください。紫とわたくしであれば、必ず、やり遂げてみせます」


「二人ともありがとうございます。時が来ましたら、合図を送ります。それまでは本陣でこれまで通りにふるまってください」


義経が二人を見て微笑んだ。


「義経、作戦の時、あるじは……」


紫の言葉に義経は


「湊には本陣にいてもらいます。湊と言霊使い二人が本陣から消えては騒ぎになるでしょう。天柱を狙っていることは仲間にさえ、秘密にしないとならないのです」


その言葉に紫の顔色が変わった。


だが。


「そう……ですね。仰る通りです」


短く答えた。


「では結界へ戻りましょう」


義経の言葉に業平が頷き、結界へ戻った。


俺もその後に続こうとしたが、紫が俺の腕を引いた。


「?」


紫は俺の首に腕を伸ばし、そのまま俺の唇に自分の唇を重ねた。


俺は驚いてただただ固まっていた。


「紫は……あるじのことが大好きです。お慕いしています。主が転生し、そして出会う度に、紫は主に恋をして、愛されて、幸せでした。でも今回はまだ何も始まっていません。紫はまだ主から愛されていません。ですから」


俺は紫を抱き寄せキスをした。


紫の想いが伝わってきて、俺の気持ちも溢れ、とても長い、キスをした。


「紫、俺だって出会ってからずっと紫のことが気になっていた。好きになっていた。でもいろいろ考えて、気持ちを伝えらなくて……。紫から言わせることになってしまった。ごめんな」


あるじ……」


「巨人の呪魂を倒そう。そして二人だけでデートしよう」


紫が微笑んた。


俺は紫を強く抱きしめた。


本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


次回更新タイトルは「正体」です。

義経の奥の手の作戦は成功するのでしょうか?


それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう

良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。


それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!

明日、また続きをお楽しみください!



【お知らせ】5作品目、毎日21時に更新中


『千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~』

https://ncode.syosetu.com/n8017hs/


天界との戦に負け、アジアの島国・日本に堕とされた魔王。

魔力もなく、羽もなく、無一文になった魔王は

残された側近――美貌の秘書と2人の騎士のために

千年守った禁欲の誓いを遂に破るのか⁉

快楽を好む悪魔だったのになぜか童貞の魔王。

その秘密が次第に明らかになり……。


Hなのにピュアな魔王のキュンキュンなところが見どころです。

全41話、毎日更新でサクサク読めると思うので

ぜひチェックいただき応援をいただけると幸いです。

ご訪問、心からお待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ