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完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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壊滅した前線

「おい、前線が――」


その叫びに俺は前線を見て驚愕した。


すべての防御結界が破壊されていた。


本陣は、俺の防御結界で破壊を免れていたが、前線は壊滅的だった。


大将クラスの呪魂も消失していた。


紫は? 姫天皇ひめみことは? 業平は?


心臓が早鐘を打ち、膝が震えていた。


――落ち着け!


義経に一喝され、俺の震えはようやく収まった。


――前線の結界は破壊された。だが前線の結果は多重結界だ。覇気は相殺された。


……! 良かった……。


でもまだ心臓の鼓動は収まらない。


――前線を見ろ、防御結界が再び展開されている。


前線に目を向けると、次々に結界が展開されていた。


本陣から前線へ出る言霊使いも多数いた。


「小町」


小町は蝉丸の回復を丁度終えたところだった。


紫は多重結界を展開できる。姫天皇ひめみこともついているので回復も同時にできる。


「小町、業平のところへ行き、防御結界を頼む」


小町は頷き、霊体化し、姿を消した。


莉子先輩が戻ってきた。


ピンクのフレームの眼鏡には亀裂が入っていた。


「蝉丸、これがお前の言っていた覇気か?」


「はい、そうです。主様あるじさま


「確かに凄まじい覇気だった。だが、おかげで大将クラスの呪魂はすべて消失したようだ。奴らは防御結界もなしに今の覇気の直撃を受けたんだ。ひとたまりもないだろう」


莉子先輩はそう言うと俺を見た。


「湊、この事態、どうしたものか」


義経が語りだした。


「今、前線で展開されている防御結界は緩衝材と考えた方がいいでしょう。可能な限り、結界を展開することができたら、本陣に全員撤退です。本陣が最後の砦です。……本陣にも今すぐ、多重結界を展開した方がよいでしょう」


「菅家、頼む」


菅家が結界を展開し始めると、莉子先輩は俺を見た。


義経が口を開いた。


「まだ姿を見せていない敵は一体のみ、と考えて間違いないです。なぜならさっきの覇気、放てば味方もろともとなることは理解していたはずです。仲間の犠牲を厭わないと思っている何者かが今回の最期の敵とみなしていいでしょう」


「最後の敵が一体というのは理解できる。だが道鏡は仲間を犠牲にすることを良しとしたのだろうか? 


大将クラスの呪魂を作り出すことは決して楽なことではない。それに実際我々は大将クラスの呪魂に対し、奇襲攻撃をかけなければならないほど、追い込まれていた。


だったら大将クラスの呪魂で可能な限り我々を叩けばいいのではないか? 叩ききれなければ、最後の奥の手でそれを出せばいいのではないか?」


莉子先輩の指摘は最もだった。


それは義経も同じようだ。


「その点から私は、これから現れる敵は、道鏡にとっても想定外なのだと思っています」


「想定外……?」


莉子先輩が左眉をくいっとあげた。


「道鏡の考えたシナリオは、今、あなたが話した通りだと思います。大将クラスの呪魂30体は、集結している歌詠みで捌くには手に余る数。動物の呪魂というこれまでにない攻撃で少なからずダメージも受けています。これでいける、と道鏡は思っていたと思います。


それでも万が一を想定したのでしょう。


つまり小笠原久光が再び出てくることを危惧したのではないでしょうか。だから奥の手を用意した。でもこの奥の手として用意された魂は、道鏡の呪いで強化され、手の付けられない状態になったのでは? 


道鏡でさえ制御できないほど、現世うつしよに対し、執着、恨み、無念、そして報復したいという気持ちを持っているのではないでしょうか」


「……なるほど。怒り任せで出した覇気で大将クラスの呪魂も倒してしまったと……。一体誰なんだろうな。尋常ならざる恨みを現世に持ち、仲間を犠牲にすることを厭わず、怒りを爆発させる奴は……」


「その正体が誰であれ、脅威は迫っています。さっき放たれた覇気は我々に対して、というより、道鏡が何かしでかし、それに対する苛立ちから来たものではないかと推察します。


すなわち、奇襲に気づき、道鏡から命じられ、覇気を放った。でも奇襲をかけた言霊使いは逃げ延びました。それを道鏡が叱責したか、その程度のものかと馬鹿にした。それに怒り、予定外の覇気を放ったのでは。


でも次に放たれる覇気は、確実に我々を殲滅させるための覇気となるでしょう。そしてこの覇気がどれだけのものかは、さっきの一撃で皆、分かったはずです。これに打ち勝ち、その何者かを倒すには、一丸となって立ち向かう必要があります。そのために本陣に集結し、皆の力を一つにするしかないと、私は考えます」


「賛成だ。三本の矢作戦だな」


莉子先輩がニヤリと笑った。


三本の矢……。


毛利元就が三人の子供に教えたとされる逸話だ。


一本の矢では簡単に折れる。でも三本の矢になれば折るのは難しくなる。


協力することの大切さを説いている。


「前線の結界の展開は完了した。頃合いだろう。法螺貝の音だけで本陣への集結を促しても納得できない者もいるだろう。白狐、頼んでもいいかい?」


「分かった。莉子」


そう言うと白狐は俺たちの頭の中に話しかけた。


白狐の口は動いていない。

でも白狐の言葉は頭の中に届いた。


これから現れる敵がどんなものであるか。

さらにどれだけ強い敵であるかを。

これに勝つために必要なことは力を合わせること。

そのためにこれから三本の矢作戦を決行するということ。

そして最後に、本陣へ集結するよう促した。


白狐の言葉が終わると、次々に言霊使いが戻ってきた。


前線で結界の手伝いを行っていた歌詠みも戻ってきた。


決戦の時は近づいていた。


本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


次回更新タイトルは「大切な話」です。

決戦を前に何が話し合われるのでしょうか……?


それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう

良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。


それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!

明日、また続きをお楽しみください!



【お知らせ】5作品目、毎日21時に更新中


『千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~』

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天界との戦に負け、アジアの島国・日本に堕とされた魔王。

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その秘密が次第に明らかになり……。


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ぜひチェックいただき応援をいただけると幸いです。

ご訪問、心からお待ちしています!

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