男子の夢
俺は頷き、口を開いた。
「俺は滋岳 湊、海風高等学校の一年、十五歳、演劇部です。忘れ物を取りに学校へ戻って、紫と上総 広常の呪魂との戦いを目撃し、気を失って……それで手に歌詠みの印があると言われ、歌合せの儀式をやった、という感じです」
「主様、いきなり戦闘に巻き込まれたのですか⁉ お怪我はないのですか⁉」
姫天皇が俺の体のあちこちに触れた。
「う、うん、大丈夫だから、落ち着いて」
俺は姫天皇の手を掴んだ。
すると姫天皇は「まあ」と頬を赤らめた。
「小町さん、自己紹介をお願いしても?」
蒼空の言葉に小町は頷いた。
「はい。私は小町、小野小町です。ステータスは防御です。結界は一通り展開できます。ただ、言霊使いとして現出するのは久々なので緊張しています。皆さんの足手まといにならないよう頑張ります」
小町は見た目の愛くるしさと同様、健気な感じの子だった。
「では最後、姫天皇、自己紹介を」
蒼空の言葉に姫天皇は大きく頷いた。
「姫天皇こと、持統天皇です! ステータスは回復。主様の言霊使いとして現出するのはこれで二度目です。ずっと、ずっと、ずっと、主様に会いたくて、こうやってもう一度会えて、もう感無量です。できれば今すぐ主様のお部屋で二人きりになりたい感じです」
……!
な、なんて積極的な……。
姫天皇は、なんというか男子の夢が詰まっていた。
健康的に日焼けした肌、柔らかく弾力があり程良いサイズの胸、太り過ぎず痩せすぎずの体型。髪は明るい茶色でセミロング。ぱっちりとした瞳で八重歯がチャームポイントで、声も明るく、元気もいい。
爽やかな水色と白のセーラー服なのもポイントが高かった。
そして何よりも何故か俺にゾッコン……。
「あの、姫天皇は前回現出した時の記憶が残っているのかい?」
蒼空が驚いて姫天皇を見た。
「はい。どうして記憶が残っているのかは分からないのですが。主様のことが大好きで、もう一度会いたいと思っていた……ということが記憶として残っているのです」
「……。一度現出して札に戻ると、記憶はすべてリセットされるはず。そして新たに呼び出しに応じた時に、呼び出された現世についての知識を会得して現出するはず……」
「でもちゃんと覚えているんです。これも愛の力ですかね⁉」
「どうだろう。……ただ、多分、イレギュラーなことだと思うよ。今度、白狐が現れたら聞いてみるね」
蒼空はそう言うと、俺を見た。
「自己紹介も終わったし、僕は結界を解くね。結界が解けても、僕たち歌詠みは言霊使いの姿が見える。でも普通の人たちには見えない。そのまま言霊使いを連れ歩くこともできるし、霊体に変えるよう指示を出すこともできる。霊体化すると、僕たち歌詠みでもその姿を見ることはできなくなるんだ。ちなみに呪魂や穢れも、霊体化した言霊使いを見ることはできない」
「へえー。霊体になってもらうにはどうすればいいんだ?」
「普通に、霊体化するように言えばいいだけだよ。ただ、霊体化は主の指示がなくても、言霊使い自身もできるものなので、気づくと霊体化していた、ということはよくあることだね」
「霊体化した言霊使いに元に戻ってもらうには?」
「まあ、普通に『姿を見せてくれ』とか『姿を現してくれ』と呼びかければ。あと、霊体化していても会話は普通にできるよ。声が聞こえるというより、頭の中に言霊使いの言葉が直接届く感じかな。霊体化していない場合は普通に声が聞こえる」
「声も当然、普通の人には聞こえないんだよな?」
「うん。だから人が多い場所で言霊使いと話すのは工夫しないと。独り言をぶつぶつ言う変な人に見られちゃうからね」
「なるほど」
俺は蒼空に返事をしてから、小町と姫天皇に尋ねた。
「二人はどうしたい? 霊体化したければしてもらって構わないし、そのままでもいいけど」
「主様、私は霊体化してもいいですか? 久しぶりの現世なのでキョロキョロしてしまいそうで……。霊体化してゆっくり眺めながら主様の後を追います」
俺が頷くと、小町の姿が消えた。
「姫天皇はどうする?」
「姫天皇は当然、このままです。そうしないと主様に触れていることができないので」
「……わ、わかった。蒼空、こっちは準備完了だ」
「了解。では結界を……」
「主」
「どうした、紫」
「これを回収しておきました」
紫が蒼空に渡したのは俺のスマホだった。
「蒼空、それ、俺のスマホ。教室まで取りに行く手間が省けたよ、ありがとう、紫」
ちらっと俺を見たが、紫はすぐに視線を逸らした。
「そうか。湊のスマホか……。随分可愛らしいカバーをつけているんだね」
「ああ、これな。俺、こう見えて猫好きだから」
蒼空は微笑むと俺にスマホを渡した。
そして結界は解かれ、俺たちは帰宅することになった。
本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
姫天皇は積極的ですが、湊が手を掴んだだけで赤くなる可愛らしい子です。
それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう
良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。
それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!
明日、また続きをお楽しみください!




