表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/68

戦闘開始

少将以下の呪魂に対しては


「諸々の禍事まがご 罪 けがれ 有らむをば はらへ給ひ清め給へと まをすことを聞こし召せと かしこみ かしこみ もまをす」


この祓詞を使おうと、作戦会議で決められていた。


そして今、歌詠みと言霊使いが一斉にこの祓詞を唱えた。


皆の声が一つになり、この草原に響き渡った。

その壮大な祓詞は、大地を、空気を、震わせた。

向かってくる呪魂から呪いは次々と祓われた。

呪が祓われると、呪魂はたちまち逃走を始めた。


元々少将以下の呪魂はこの世への執着が薄い。それを無理やり道鏡の呪いで強化され、ここまで送り込まれていた。道鏡の呪いが解ければ、退散してもおかしくなかった。


一万の呪魂は総崩れになった。


だが、そこに中将クラスの呪魂が現れた。


少将クラスの呪魂に比べ、動きも速く、個々が強い。


「納言パパ」


莉子先輩の言葉に納言パパは法螺貝を二回吹き鳴らした。


祓いから攻撃へ、戦闘体制の変更の合図。


第一防衛線にいた祓いの言霊使いが第二防衛線に移動し、第二防衛線からは攻撃の言霊使いが第一防衛線に出た。


「来るぞ」


莉子先輩の言葉通り、あちこちで結界と覇気がぶつかり合い、振動が起きた。


突如、光る槍が本陣から放たれた。


その槍は孤を描いて一体の呪魂を直撃した。


その瞬間、呪魂がはじけ、周囲に金色の光が瞬いた。


槍が直撃した呪魂の周囲にいた呪魂は次々とはじけた。


金色の光は周囲に広がり、まるで打ち上げ花火を連射したようにはぜ、次々と中将クラスの呪魂を倒していった。


歌詠みの神器だった。


このド派手な攻撃に勢いがついたようで、第一防衛線の攻撃の言霊使いが奮闘し、中将クラスの呪魂も一掃された。



この後、大将クラスの呪魂が来るかと思ったが、静寂が続いた。


「もう小物は出し尽くしたという感じだな。この後はいよいよ大将クラスの呪魂だ。すぐには来ないだろう。しばし休憩だ」


莉子先輩の言葉に納言パパが休憩の合図の法螺貝を鳴らした。


俺は蒼空と一緒に防衛線にいる紫たちに会いに行くことにした。


主様あるじさま~!」


俺の姿を見つけるなり、姫天皇ひめみことが抱きついてきた。


「おい、姫天皇ひめみこと、離れろ。ここは戦場だぞ!」


俺が姫天皇ひめみことを引き離そうとすると


「でも他の方も抱き合ってお互いの無事を確認していますよ~」


その言葉に周囲を見ると、確かに何人か抱き合っている……⁉

キ、キスしているカップルもいる⁉


俺は慌てて姫天皇ひめみことを引き離し蒼空の肩を掴んだ。


蒼空は清納と蜻蛉と話していたが、驚いた様子で俺を見た。


俺は蒼空の耳元に顔を寄せ尋ねた。


「ちょ、どーゆうことなんだ⁉ ここは戦場だろう? キ、キスしている奴らがいるんだが」


蒼空はチラッと目を動かし


「……ああ。無事を喜んでいるのだろう。言霊使い同士で交際している者もいるし、歌詠みと言霊使いのカップルもいると聞いているよ」


「そうなのか⁉ でもそれって前に言っていた勘違いの恋愛感情なんじゃ……」


蒼空は「うん?」という感じで首を傾げ「ああ」と思い出したようだった。


「そんな話をしたね。でもすべてがすべてそうとは限らないよ。本当に純粋に、お互いを好き、ってこともあるんじゃないか」


「そう、なのか……」


「……もしかして湊、恋愛経験がないのか? まさか僕が話した一つの例をすべてがそうだと思うなんて、思ってもみなかったよ」


「……いや、その……」


蒼空の言う通り、俺は恋愛経験がないから、確かにそれがすべてと信じていた……。


「湊、好きな言霊使いがいるなら、想いを伝えてみればいい。そしてそれは本当に恋愛感情なのか確かめればいい」


主様あるじさま


右近が蒼空の方へやってきていた。


俺は蒼空から離れた。


「何、ヒソヒソ話していたんですか⁉」


姫天皇ひめみことがプンプンした様子で俺を見た。


「いや、その……」


そこにタイミングよく業平が来てくれた。


主様あるじさま、この後は大将クラスの呪魂が来ると思いますが、わたくしはこのまま第二防衛線でよいですか?」


「うん。業平は刀以外に弓を使えるから、第二防衛線から第一防衛線で苦戦している言霊使いがいたら援護射撃をしてあげくてれ」


「分かりました。ところで先ほどから気になっていたのですが、主様あるじさまはわたくしが弓を使えること、よくご存知でしたね」


「……」


そう言われると確かに。


なんで業平が弓を使えると思ったんだ……?


「あれ、業平、回復していないの?」


姫天皇ひめみことの言葉に業平は答えた。


「ええ。先ほどの戦闘ではほとんど力を使わずに済んだので」


「でもこの後、大将クラスの呪魂が来るんだよー。回復しとこ」


姫天皇ひめみことが業平の回復を始めたので、俺は紫に声をかけた。


「紫、どうだ、順調か?」


紫は「ええ」と頷いた。


「先ほど、姫天皇ひめみことに回復もしてもらい、万全です。……ところで小町は?」


俺は振り返り、小町がいないことに気づいた。


途中まで一緒にいたはずだが……。


「……菅家のところにいったのかもしれませんね」


紫は柔らかい表情で微笑んだ。


「……そうなのか」


そうだろうとは思ったが、そうするとバルコニーで盗み聞きをしたことがバレるので俺は素知らぬふりをした。


「どうやら小町は菅家に好意を持っているようです。いろいろ教えてもらっているうちに距離も縮まったようで」


「そうか……」


その時。


俺は紫の薬指にまだ指輪があることに気づいた。

さすがに戦闘になれば外すと思ったのに……。


俺の中で熱い想いがこみ上げた。


……やっぱり、俺は紫が好きなんだ。


「おい、あれはなんだ⁉」


誰かが叫んだ。


紫が前方を見た。


「……猪?」


そう呟くと紫は叫んだ。


「動物だ。猪や狼、熊の呪魂じゅこんだ。上空には鷹などもいる。急いで戦闘につけ」


紫の声が響き、「動物⁉」と驚く声が沸き起こった。


「業平、弓を」


「はい、主様あるじさま


「上空の鳥類はもうすぐ迫っている。弓を武器とする言霊使いは配置につけ」


紫がさらに叫ぶと、あちこちで弓を手にする言霊使いの姿が見えた。


あるじ、蒼空たちと第二防衛線まで下がってください」


「分かった」


俺は蒼空と共に第二防衛線へ向けて駆け出した。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

また昨日に続き、来訪くださった方も、本当に感謝でございます。

今日は2話公開です。引き続きお楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ