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完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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邂逅

俺は草原のような場所にいた。

風が優しく吹いていた。

草が優しく揺れていた。

空は青く、雲がゆっくり流れていた。


「すまなかった」


振り向くとそこに牛若丸――義経がいた。


最後に見た義経は血の涙を流していたが、今はとても穏やかな顔だった。


「君の魂に触れ、私は自分の過ちに気づいた」


義経は手を伸ばし、風に吹かれる草に触れた。


「ここで妻と子供と共に静かに過ごすつもりだった」


義経は空を見上げた。


「だがあの日、私は妻子を手にかけ、自らの命を絶った。悔しかった。悲しかった」


義経の瞳は遠いあの日を見ていた。


不思議なことに、俺の目にも義経が見ているあの日が見えていた。


刀を我が子に振り下ろす瞬間、俺は堪らず目を閉じた。


心臓が苦しみで破裂しそうになった。


気づけば、足元には息絶えた愛する人の姿……。


彼が下した辛い決断、悲しみ、悔しさが俺の胸に迫った。


それはとてつもなく強くて、痛々しい感情だった。


「怒りが収まらなかった。復讐をできるなら、したい、と思ってしまった」


義経は俺に目を戻した。


「私の魂の一部は、砕けたその時、君の体から離れた魂に突き刺さってしまった。それからずっと私は君と転生を続けてきた。君が何のために戦い、何を守ろうとしたのかを見てきた。今さら遅いかもしれない。だが、君はここまで来てくれた。だから私の力を使ってくれ」


義経は俺に手を差し出した。

俺は頷き、その手を握った。


その瞬間、義経の姿が消えた。



真っ白な空間に俺は取り残された。


ここはどこで俺は今、どういう状態なんだ?

紫は無事、札に戻れたのだろうか?


義経は……大将クラスの呪魂は倒した。


ということはあの日、道鏡に狙われた命は救われたということか?


そういえば別同部隊で動かしていた小町はどうなったのだろう?

結界外で、誰が狙われているか探らせていたが……。


いや、そういえばさっき会った義経は不思議なことを言っていた。


俺と一緒に転生を続けた……?

どういうことだ……?


あるじ


振り返ると、甲冑を身に着けた紫がいた。いつもの眼鏡もかけていない。


「紫、無事……だったのか⁉ その甲冑は? 眼鏡はどうした?」


あるじが札に戻してくださったので、紫は魂の核の破壊をまぬがれることができました」


「そうか、無事、札に戻れたんだな」


「でもあるじは……私を札に戻したので、防御結界は消え、私も消えたので、覇気が直撃しました……」


「そう、か……。俺は死んだのか……」


紫は唇を噛みしめていた。


「ここは天国なのか? でもまだ閻魔えんまにもあっていないな。いや、そんなことはどうでもいい。……俺が死んだならみんなも札に戻れたんだな。なら安心だ。……義経は倒したのだから、救うことができたんだよな?」


あるじは自分のことより、みんなのことを、任務のことを心配されるのですね」


「それは……歌詠みとして責任があるからな」


「みんな札に戻りました。覇気を受けた者もいますが、みんな回復しました。ただ、道鏡が狙った相手は……暗殺されました」


「え⁉ 義経は討ったのに?」


「義経はおとりでした。大将クラスの呪魂じゅこんが現れれば、当然歌詠みはそちらへ向かいます。しかも、今回現れたのは義経。悲運の最期を遂げた義経の無念な思いはとても強いものでした。その強い恨みは道鏡の呪いで強化され、大将クラスの最上位と言っても過言ではない強さでした。歌詠みが義経に引き付けられるのは仕方のないことでした」


「じゃあ、他に呪魂じゅこんが……?」


「はい。少将クラスにも満たない呪魂が別に送り込まれていたのです」


「小町は……小町は間に合わなかったのか?」


「間に合いました。小町はそれを祓い、札へ戻りました」


「ではなぜ……?」


「敵は……道鏡だけではなかったのです。坂本龍馬にはあの時、敵が多過ぎました。彼を狙う、彼の死を願う者は現世うつしよの人間にも沢山いたのです」


「……!」


あるじの責任ではありません。あるじはあの時、最善を尽くしました」


本当にそうだろうか。

他に手立てはなかったのだろうか。


「もし、あの時、紫の手に刀があれば。もし紫が防御ではなく、攻撃のステータスだったら……。義経の刃を受けることなく、あるじが倒されることはなかったでしょう。義経の刃を振り払い、主を守ることができたでしょう。そうすれば小町と合流し、現世の人間の暗殺者を止めることも……できたかもしれません。でもそれも今となっては夢物語です」


「紫……」


あるじ、帰りましょう。あなたの今の名前は滋岳しげおか みなとです。主は夢魂むこんの儀を行い、今まで魂に刻まれた記憶を夢として見ていたのです。そしてご自身の魂に突き刺さっていた義経の魂の欠片を、自分の魂と融合させたのです」


紫の言葉に俺は息を呑み、でも確かにさっき義経と会ったことは覚えていて、それが事実なのだと理解した。


「紫も以前の紫とは違います。長い回復の期間を使い、あるじを守るために、力をつけました。もう紫は大切な主を、愛する人を失うような失態はいたしません。これからは紫が主を守り、戦います」


紫はそう言うと俺を抱きしめた。


「紫……」


穏やかな時間を感じた時、俺に膝枕して微笑んでいたのは……。


そうか、紫だったのか。


俺は紫の背に手を回した。


優しい暖かさが伝わってきた。


「ありがとう紫。紫と一緒にいられるよう、もう無茶はしないよ」


俺は腕に力を込めた。


本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


紫と湊の関係が明らかになりました。

が、この後待ち受ける未来は……。


それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう

良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。


それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!

明日、また続きをお楽しみください!



【お知らせ】5作品目、毎日21時に更新中


『千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~』

https://ncode.syosetu.com/n8017hs/


天界との戦に負け、アジアの島国・日本に堕とされた魔王。

魔力もなく、羽もなく、無一文になった魔王は

残された側近――美貌の秘書と2人の騎士のために

千年守った禁欲の誓いを遂に破るのか⁉

快楽を好む悪魔だったのになぜか童貞の魔王。

その秘密が次第に明らかになり……。


Hなのにピュアな魔王のキュンキュンなところが見どころです。

全41話、毎日更新でサクサク読めると思うので

ぜひチェックいただき応援をいただけると幸いです。

ご訪問、心からお待ちしています!

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