女子トーク
「そんな。だって模擬挙式でしょ。本当に結婚したわけじゃないんだよ⁉」
「それは分かっています。でも菅家はすごく優しくて、さっきも丁寧に結界について教えてくれて……。回復についても教えてくれたんです。すんごい素敵なんです!」
「え~~」
姫天皇は納得できない、という感じだ。
「どうして姫天皇は小町を応援してくれないんですか⁉ ライバルが減るのに~」
小町のその一言で姫天皇は「あ、そうか」と目を輝かせた。
だが。
「でも、なんで主様ラブだったのに、そんなに簡単に心変わりするの⁉」
「……。心変わりというか、姫天皇があまりにも主様を独り占めしようとするから、小町もついムキになちゃって……」
「え⁉ 本当は好きじゃなかったっていうこと⁉」
「違いますよ~。主様を好きなのはデフォルトでしょ」
「まあ、そうよね」
そうなのか⁉
「歌詠みの人はみんな自分たちが選んだ言霊使いと思っているけど、そういうわけでもないじゃないですか」
「まあ、小町の言う通りね。言霊使い側で『この主様と一緒にいたい、この主様のためなら体を張って頑張れる』って思って合図を送るんだもんね」
そうだったのか……。
でも確かに、金色に輝くからこれだって指さしていたもんな……。
「もうその時点で主様のこと、みんな好きでしょ」
小町の言葉に全員頷いた。
……紫も、頷いた……!
俺の心臓は急速に高まった。
だが。
「でもその好きって、自分の主様として、歌詠みとしての好きですよね。恋愛の好きとは別物ですよね。小町の恋愛の好きは今、菅家に向かっていますが、主様のことはちゃんと好きですよ!」
「うーん、まあ、姫天皇はどっちでもいいや。ライバルが減ったのは嬉しいし~」
俺は蒼空の話を思い出していた。
――
「もし歌詠み側から想いを告げたら、言霊使いは断りづらいと思うんだ」
「え、でも言霊使いにだって感情はあるんだ。好意がないなら断るだろう?」
「彼女達の従順さは主への好意が根底にあると思うんだ」
「え、主のことを好きという言霊使いが選ばれるということか⁉」
「違う、違う。恋愛感情の好意じゃなくて、人間として好ましい、一緒に何かやり遂げるならこの人とやりたいと思える好ましさ、そう言った意味での好意だよ」
「ああ、そういうことか。それなら明確じゃないか。いわゆるビジネスパートナーとして最高の相手、ってことだろう」
「でもそんなに単純じゃない」
「えっ……」
「人間として好ましいという意味での好意と、恋愛感情に基づく好意、これは表裏一体だと思う」
「つまり……相手を信頼すればするほど、それが恋愛感情の好意に変わりやすいと?」
「そう。そして相手を信頼することで生まれる好ましいという気持ち、これは相手への好意、恋愛感情の好意なのではないかと思ってしまうこともある」
「言霊使いは元々主として、歌詠みのことを好ましいと思っていた。そこに歌詠みから想いを告げられたら、そもそもとして主従関係からも断りづらい。
さらにもしかしたらこの好ましいという気持ちは、恋愛感情からくる好意なんじゃないかと思ってしまう。その結果、言霊使いは歌詠み使いに請われたら想いを受け入れてしまう、ということか?」
――
紫が好きと頷いたから俺は喜んでいたけど、これで俺が想いを告げたら紫は……。
それでなくても紫は真面目だ。
自分の中の好きという感情を恋愛感情と思い込み、俺の想いを受け入れる……。
でもそれは本当の恋愛感情とは違う。
ああ、俺の恋は終わった……。
いや、始まってもいなかったよな。ははは。はぁ……。
「それにしても主様、遅くないですか?」
姫天皇の大声に俺は我に帰る。
どうしよう、ここにいたと分かったら、盗み聞きしていたと思われる……。
「もしかしたらあまりにも気持ちよくて湯舟で寝ちゃっているとか⁉」
小町の言葉に姫天皇が立ち上がった。
「もしそうなら大変。ちょっと様子を見に行こう」
三人は連れだって部屋を出て行った。
俺はホッとして部屋に入った。
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