温泉
「今、紫の回復をしていたんですよ!」
……回復……?
「通常は手を使ってやるんですが、回復のために出す力は手だけじゃなく、全身から出ているんです」
「そう……なんだ」
「紫は今日の戦闘で何度も大技を使い、結界も多数展開し、動き回り、かなり力を使っていたんです。それで手だけで回復させるより、全身を使い回復させた方が早いと思って、それでさっき二人でベッドに横になっていたんです。裸なのは直接触れた方が力が浸透しやすいからなのです」
「……なんだ、そーゆうことだったのか」
「はい。姫天皇の貞操は守られています!」
……。
「そ、それでもう回復はできたのか? 気が付かず部屋に入ってしまいすまなかった」
「はい。回復はとっくに終わっていました。回復が終わって、紫は安心感でそのまま横になっていて、姫天皇は回復が無事にできた~っていうので横になっていた感じです。あとなんか紫の肌はつるつるで触り心地もよくてつい……」
おいおいおい、なんか風向きが危うい方へ行ってないか⁉
「……そういえば小町は?」
「小町は菅家に会いに行きましたよ」
「あ、防御結界について教えてもらいに行ったのか」
「です、です」
姫天皇はそう言ってから
「主様は大浴場へ行かないのですか?」
「大浴場?」
「はい。地下一階に大浴場があると聞きました。回復が終わったら行こうと思っていたのです」
「へぇー、そうなんだ。知らなかった。俺も行ってみるかな。あ、でも開いているの? 泊っているの俺たちだけなのに」
「レストランを営業しているので、食事に来たついでに利用するお客さんが多いそうですよ。この辺りで天然温泉なんてここぐらいしかないので」
なるほど。
そう言われるとレストランは家族連れや大人数のお客さんが多かった。
お盆で集まった親族でレストランを利用し、温泉に入って家に戻る。
商売上手だな、莉子先輩。
「じゃあ俺も大浴場行ってみるかな」
こうして俺たち三人は、大浴場へ向かった。
「……一つ、聞いてもいいか?」
「はい」
姫天皇が返事をした。
「現世の服を着ると、みんなに姿が見えるんだよな」
「です、です」
「温泉に入っている時は?」
「見えないですね~」
「今はいつもの服……。ということはみんなは二人に気づかないのか」
「そうなのです。姫天皇の抜群のスタイルを、皆さんに見ていただきたいのですが」
「……。温泉は入ると気持ちいいのか、やっぱり」
「そうかな~と思い、試しに行く感じです。温泉の効能とかは関係ないですが、多分、ほっこりするかな~って」
ほっこり……。
思わず二人の入浴姿を想像してしまい、俺は慌てて打ち消した。
「あ、ここですね」
姫天皇と紫と分かれ、俺は男湯へ向かった。
湯舟につかるとまさに「生きかえる~」という感じだった。
姫天皇たちも今頃ほっこりしているのかな……。
紫はきっと長い髪をまとめ、湯気に包まれ、頬を上気させて……。
白い肌は次第にバラ色に染まり……。
ダメだ。想像したらのぼせてきた。
俺は湯舟から上がり、部屋に戻ると、バルコニーに出た。
バルコニーにはテーブルと椅子があり、草原の夜は夏でも程よい涼しさで、火照った体を醒ますのに丁度良かった。
なんか星も綺麗だな~。
俺は思いっきり寛いでいた。
「え、じゃあ、小町は主様じゃなく、菅家ラブになったの⁉」
姫天皇の声で俺は目を覚ました。
うたた寝をしていた。
部屋の方を見ると、カーテンの隙間から、部屋に姫天皇、紫、小町の姿が見えた。
そっか。
カーテンを引いておいたから、俺がバルコニーにいるって、三人とも気づいていないんだ。
俺は部屋に戻ろうと窓に手をかけたが
「はい。模擬挙式を菅家と一緒に体験してから、小町の心は菅家に向かっています……」
その一言に、俺は窓を開けようとした手を止めてしまった。
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