リハーサル
チャペルに着くとそのまますぐにリハーサルが始まった。
祭壇前からスタートするからと言われ、チャペルに入ると……。
そこには既に牧師さんがいて、その傍に納言パパがいた。
いつの間に⁉
ってか莉子先輩のことだからうまいこと言ってみんなに着替えさせたけど、模擬挙式でいろいろな役割を与えているんじゃ……。
「納言パパは新郎の父親役です」
こちらもいつの間に来たのか、右近が俺に説明を始めた。
俺が納言パパの隣に立つと、納言パパはにこやかに笑った。
「いやー、清納の結婚式の予行練習ができるとは思いませんでしたよ」
納言パパ、いい人すぎる。
「ここで音楽が鳴ると、新婦が入場してきます。湊はここで新婦が来るまで待機です」
右近が説明を終え、合図を送ると音楽が鳴り、扉が開いた。
紫が来ると思ったら莉子先輩だった。
「紫はすでにリハーサルが終わっているので、主が代役です」
なるほど。
莉子先輩はツカツカとバージンロードを歩いてきて、俺の隣に立った。
「ここで賛美歌を歌います」
賛美歌のさわりの部分が流された。
「牧師が聖書を朗読し、少しお話をされます」
牧師が聖書を少し読み上げ、頷いた。
「次に誓約です。すべてにイエスでお答えください」
牧師がよく聞く、「病める時も健やかなる時も…」の台詞を途中まで口にした。
「指輪の交換です。実際に指輪はありませんので、フリで大丈夫です」
莉子先輩が俺の前に手を差し出したので、指輪をはめるフリをした。
莉子先輩も指輪をもつポーズをして、俺は手を差し出した。
「次に結婚証明書にサインです。これは本当に書いてもフリでもどちらでも大丈夫です」
牧師が手で結婚証明書を指し示した。
俺はそばにあった羽ペンを持ち、サインをするフリをした。
莉子先輩は俺から羽ペンを受け取り、サインをするフリをした。
「ラスト、ウェディングキスです」
俺が莉子先輩と向き合ったところで終わった。
「この後は見学者たちがもしかしたら写真を撮ったりするかもしれないので、その場合はにこやかに応じていただければ」
右近が説明を終え、俺を見た。
「は、はい。意外とやること多いですね」
すると莉子先輩が大きく手を広げ
「そんなことはないよ。音楽は勝手に流れてくれるし、牧師も合図を送る。指輪も実際に交換となると、上手くはめられなかったり、指輪を転がすこともあるが、今日は全部フリだ。大丈夫。湊ならできる」
そう言うとウィンクした。
「はあ……」
「それに小町も、菅家とそれは完璧なリハーサルをやっていたぞ。本気で菅家と結婚してしまわないか心配になるぐらいだ」
「そうなんですね。俺は見られないんですよね、小町と菅家の模擬挙式」
「申し訳ないがそれは無理だ。先に神前式を見学して、次にここに来るから、それまでは待機だ。納言パパとおしゃべりでもしながら待っていてくれ」
そう言うと莉子先輩と右近はチャペルを出て行った。
牧師もパイプオルガンの演奏者も聖歌隊も、控室に戻っていった。
俺と納言パパはゲストが座る椅子に座り、その時を待った。
◇
ものすごい緊張感だった。
リハーサルをしてすぐ本番だったらそんなに緊張しなかったと思う。
勢いままに、えい、やーで乗り切れた気がする。
だが、変に時間が空いてしまった。
しかも納言パパから「結婚とは」とか「娘を嫁に出す父親の気持ち」とか、余計な知識を仕入れたことで、模擬挙式なのに本当に結婚する気分になってしまった。
さらに模擬挙式なのに新婦役はあの紫だ。
どうにもこうにも俺の中で気になる存在の紫と、模擬挙式であろうと、愛の誓いに「イエス」と答えるんだ……。
なんか血の気が引いてきた。
すると。
牧師たちが戻ってきて、配置についた。
スタッフも入ってきた。
ほどなくして、見学をするカップル二組、そして蒼空や言霊使い達も入ってきた。姫天皇は……鼻を赤くして涙目だ。小町と菅家の模擬挙式に感動したのか……?
右近が俺のそばにきて「間もなくです」と言った。
会場は、咳払いとかちょっとした物音でも響くぐらい静かになった。
そして。
音楽が流れ、扉が開いた。
本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
湊の緊張感がMAXになる中、紫との模擬挙式がスタートします。
夢のような展開なのにプレッシャーに潰されそうな湊。果たしてどうなるのか……。
それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう
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それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!
明日、また続きをお楽しみください!




