表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/68

涙目の紫

「そ、それは紫ではないとダメなのでしょうか⁉」


「うん。そうなんだよ。模擬挙式を見たというカップルは二組いてね。一組は新婦がオーストラリア人なんだ。で、白無垢をご所望だ。だからこっちは小町にお願いする。もう一組は新婦のイメージが右近や和泉だとセクシー過ぎるんだよ。蜻蛉だと新婦より年齢が上過ぎてな。そうなるとぴったりハマるのが紫、お前なんだよ」


「……」


「まあ、今回、宿代も食事代もタダなのは、このちょっとしたお手伝いが条件だったからね。なあ、湊」


うっ、莉子先輩、俺に紫を説得させる気か⁉


莉子先輩は昼食の時、「この後、模擬挙式を見学するカップルがいるから、紫と小町に新婦役を頼みたいのだが」と俺に持ちかけた。


あるじは俺であるが、それを受ける、受けないかは本人に確認しないと、ということで、紫と小町を呼び出した。


すると……。


小町は「白無垢を着られるなんて楽しみです~♪」と乗り気だが、紫は渋っていた。


まあ、そーゆうキャラではないからな、紫は。


だが……。


個人的には紫のウェディングドレス姿は見てみたい。

だって絶対に間違いないはずだからだ。


「なあ、紫、気が乗らないのは分かるけど、みんなで協力するって約束だから、ここはなんとか首を縦に振ってくれないか」


すると紫は目に涙を浮かべて俺を見た。


……え、そんなに嫌なのか⁉


しかし。


「あ、あるじの頼みというなら……分かりました」


もう泣きそうな顔なのに首を縦に振った。


なんだかものすごく申し訳ない気持ちになるんだが……。


「よーし。それじゃフィッテイングルームに小町と紫は向かってくれ。あと新郎は業平と菅家ね。二人もこっちへ」


莉子先輩は四人を連れて歩き出した。


残りのメンバーは使われていない披露宴会場で待つことになった。


模擬挙式を見学するカップルは、まだ別室で説明を受けていた。


「ところで姫天皇ひめみこと、みんなの姿って、見えるの? そのこれから見学にくるカップルに」


「えー、見えるんじゃないですか」


姫天皇ひめみことは自分が選ばれず、小町と紫が選ばれたことで、ご機嫌斜めだった。


「湊さん、そんなことも知らないんっすか」


左側に座る伊勢が、驚いた顔で俺を見た。


「ぼくたち言霊使いは、普段は札から出た時の服を着ているけど、現世うつしよの服を着ると、姿が見えるようになるんですよ、そこら辺の一般人に」


「え、そうなのか⁉」


「そうっす。なんでかは知りませんが」


「皆さん、莉子から伝言です。せっかくだからみんなもドレスやタキシードを着て、模擬挙式へ参列しては、とのことです」


右近が顔をのぞかせ、大声で皆に告げた。


その言葉に姫天皇ひめみことの瞳が輝いた。



こうして。


俺たちは本来、新郎新婦が二次会に着るドレスやタキシードに着替えることになった。


俺はネイビーのタキシードを着てみた。


学校の制服はブレザーだから似たようなものかと思ったが全然違っていた。

なんというかフォーマル感があり、身が引き締まる感じだった。


姫天皇ひめみことは淡いペールブルーに白いレースがついたドレスを着ていた。


とても可愛らしかった。


姫天皇ひめみことはさっきとうって変わってご機嫌になり、やたら写真を俺と撮りたがった。


蒼空は黒のタキシード姿で、本当に新郎みたいだった。


隣の和泉はサーモンカラーのミニ丈のドレス姿だったが、二人で並んでいるとこれから披露宴に参加する新郎新婦そのものに見えた。


清納はフリルたっぷりの青色のドレス姿で存在感満点だった。

蝉丸と納言パパは紋付き袴で二人ともドンピシャで似合っていた。

蜻蛉は着物姿で、いつもの十二単とはまた違う魅力にあふれていた。


そんな感じでみんなが着替えたところに右近が早足でやってきた。


右近は莉子先輩を手伝っていて、黒いスーツ姿で忙しそうに動き回っていた。


「湊、ちょっと一緒に来ていただけますか?」


右近は俺の腕を掴むと走り出した。


廊下に出ると、莉子先輩とスタッフらしき女性がいた。


「おー、湊、似合っているじゃないか」


莉子先輩は両手を広げ、大げさに俺を褒めた。


……なんか嫌な予感がする。


俺が近くまで行くと、上から下までじっくり眺め


「いいんじゃないか」


そうスタッフに莉子先輩は言った。


するとスタッフはスマホで俺の写真を撮り、すぐそばの扉を開け、中へ入っていった。


「なんですか、莉子先輩」


「うん。それがね、ちょっとトラブルがあってね」


「トラブル……?」


俺が顔をしかめると、さっきのスタッフが出てきて、莉子先輩に頷いて見せた。

すると莉子先輩は「そうか」と頷き、俺の腕を引いて歩き出した。


「ちょ、先輩⁉」


「いやー、一応さ、模擬挙式、このモデルで進めます、って着替えた四人の写真を見せたんだよ、見学する二組のカップルに。そうしたらさ、まさかの業平くんNGが出ちゃったんだよ」


「え、なんでですか⁉」


「ほら、女性はさ、綺麗な女性がドレスや白無垢着ていたら、『あ、自分もこんな感じのドレスで式あげたい』と思ってくれるみたいなんだが、男は違うみたいで。二組とも新郎が、業平はイケメン過ぎて困るって。


まー、業平の写真を見た瞬間、新婦の目の色が変わったからな。それも仕方ないかと。で、さっき、湊の写真を見せたら一発OKだったわけ。だから湊、お前には業平の代役で新郎を務めてもらう」


「えっ‼ いや、俺、高一ですよ」


「でも、体は大人だろう」


「ちょ、意味深な目で見るの止めてください」


「ははは。まー照れるな。そのタキシードもよく似合っているし、サイズだってピッタリじゃないか。それに挙式なんて大したことはしない。イエス、イエス、って言って指輪交換とキスをするフリして終いだ」


「かなり乱暴な進行なんですけど……」


「なんだー、湊。お前は紫に協力させておいて、自分は協力しないつもりか」


「うっ……」


「それに相手は紫だ。願ったり、叶ったり、だろ?」


「……!」


む、紫と模擬挙式⁉


俺は卒倒しそうになった。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

また昨日に続き、来訪くださった方も、本当に感謝でございます。

今日は2話公開です。引き続きお楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ