幸福な目覚め
カーテンが少し開いていて、そこから差し込む日差しが丁度顔にあたり、俺は目を覚ました。
ゆっくり目を開け、横を見ると……。
……!
一気に目が覚めた。
そして俺は自分の寝相を確かめた。
大丈夫だ。
どこにも触れてない……。
俺は安心すると同時に、その綺麗な寝顔に見入っていた。
霊体化したはずの紫が、俺の隣で眠っていた。
紫の顔にも少し日が差し込んでいて、綺麗な肌を照らしていた。
瞳は静かに閉じられ、頬はうっすらと桜色に染まっていた。
桃色の唇からはささやかな寝息が漏れていた。
なんて美しく、そして無防備なんだ。
俺は手を伸ばし、紫に触れたいという衝動に何度も耐えながらその寝顔眺めていた。
ゆっくり抱き寄せ、きつく抱きしめ、紫の涼やかで爽やかな香りを思いっきり吸い込みたい……という気持ちを必死に抑え、その寝姿を見つめていた。
そして。
言葉にすることができない幸福感に満たされていた。
紫がそこにいて穏やかに眠りについている。
その現実がまだ夢のようで信じられず、喜びで胸がいっぱいになった。
すると。
俺があまりにも見過ぎていたからか、紫が目覚めてしまった。
「……!」
紫は俺に見られていると気が付き、慌てて体の向きを変えた。
そして「寝ている場合ではない!」と気づいたのか、起き上がろうとした。
俺は咄嗟にそんな紫に後ろから抱きつき、その動きを止めてしまった。
紫は驚いたようで、そのまま固まってしまった。
「あ、主……」
紫が小さく声を漏らした。
紫の涼やかで爽やかな香りに俺はすっかり酔ってしまい、すぐに放そうと思ったのに、逆に腕に力を入れていた。
「紫……」
艶やかな紫の髪が俺の頬に触れていた。
俺は首を伸ばし、紫のうなじに口づけをしようとして……。
「主様‼」
突然、姫天皇が空から降ってきて、俺の腰辺りにお尻から着地した。
「うわぁ」
俺は驚いて紫から手を離し、その隙に紫はベッドを降り、そして背後では小町が目覚めた。
「主様、姫天皇がありながら、朝から、許しません‼」
スリーパーホールドを決められ、俺は撃沈した。
そこに朝帰りした業平は「おやおや」と目を丸くし、紫も唖然としていた。
◇
「合宿ですか⁉」
今日は午後から補習があり、いつも使っている教室が使えず、部活は午前中で終了だった。俺は学校を出ると、律と昼ご飯を食べ、その後ゲーセンで少し遊び、帰宅するところだった。
そこに莉子先輩から連絡がきた。
「そう、合宿だ。新しい言霊使いも増えた。お互いの技の完成度を披露し、研鑽しあうのにいい機会だと思うんだ。わたしはなんちゃってサークルに入っているが参加は気分で決められるし、蒼空は部活をやっていない。だから湊の都合に合わせられるが、いつなら空いている?」
お盆の時期は部活が休みだった。
でもお盆だと帰省やら家族行事があるのではと思ったが、蒼空の両親は海外に住んでいて、蒼空は一人暮らしをしていた。
莉子先輩は実家への帰省はいつもお盆の時期を避けていた。
「どうせ親戚と顔を合わせても小言を言われるだけで面倒くさい。それにうちは幸いなことに兄弟が多いから、わたし一人ぐらいお盆にいなくてもみんな気にしない」
ということだった。
ちなみに俺は生まれも育ちも実家があるこの場所なので、そもそも帰省とは無縁だった。
昔はお盆の時期に親戚が集まることもあった。だがそれもだんだんなくなり、お盆だから家にいないとダメ、ということはなかった。
その結果、合宿はお盆の時期に二泊三日で、莉子先輩が経営する結婚式場で行われることになった。そう、莉子先輩は大学生をやりながら実は会社を五社ほど経営する、凄腕の実業家でもあった。
本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
何気に朝帰りした業平がそれまで何をしていたのか……気になるところです。
それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう
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それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!
明日、また続きをお楽しみください!




