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完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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紫を救う方法

紫の病室に向かった小笠原久光は、スライド式のドアの前で立ち止まった。


「……これは信じられないぐらいの毒気が出ているな」


そう言うと小笠原久光は俺と莉子先輩を見た。


「湊はダメだ。白狐、黒狐、莉子、行くぞ」


「え、俺も……」


「お前はダメだ。一度、この毒気にやられている」


「……!」


そんなことまで分かるのか……。


「でも……」


食い下がると、莉子先輩が俺の肩を押さえた。


「あの、では姫天皇ひめみこと主様あるじさまの代わりに中へ入ってもいいでしょうか」


「お前は……ステータスは回復か。防御と祓いもできるのか?」


「回復に比べればまだまだですが、できます」


「陰陽師、もしもの時はわたくしがフォローします」


菅家……!


「勝手にしろ。ただし、足は引っ張るなよ」


姫天皇ひめみことが俺を見て頷いた。


「菅家、姫天皇ひめみことを頼む」


俺の言葉に菅家は涼やかに微笑んだ。


こうして、俺を残し、姫天皇ひめみことたちは紫の病室へ入っていった。



主様あるじさま、サンドイッチって美味しいですか?」


俺は小町と屋上のベンチに座っていた。

丁度昼時だったので、俺は売店で購入したサンドイッチを食べていた。


「うん。……小町も食べてみるか?」


「え、いいんですか?」


「もちろん。というかお腹すいたか?」


「お腹はすきません」


「……味とか感じるのか?」


「感じると思います。でも長らく食事をしていないので……」


「じゃあ、試すしかないな。はい」


「あ、えっと、こんなには……」


「え、じゃあ、どうする?」


「これを」


小町は俺のかじりかけのサンドイッチをパクっと口にした。


「……!」


「どうだ?」


「なんか、新感覚です!」


「もっと食べるか?」


「大丈夫です」


小町は微笑み


主様あるじさまと間接キスしちゃいました。バレたら姫天皇ひめみことに怒られそうですが」


「当然よ、小町! 人が一生懸命動いている時に、主様あるじさまと何しているのよー」


「きゃああ、髪を引っ張らないでくださいぃぃぃ」


「だって小町が抜け駆けするからでしょー」


「お前の言霊使いは随分騒がしいな」


「……!」


小笠原久光が俺の横に立っていた。


「紫は、紫はどうですか? 呪詛は……また呪詛返しするんですか⁉」


「というか、湊、お前も同じぐらい騒がしいな」


小笠原久光はそう言うと、小町が座っていた場所に腰を下ろした。


そして手にしていた紙パックの苺ミルクを飲んだ。


「紫に呪詛返しはしない」


「え……」


「紫の呪詛は祓おうとすればその分、さらに呪いが憑りつく厄介なものだ。だが呪詛返しは電光石火の一撃で術者に呪いを戻す。呪いがさらに憑りつく暇を与えない。そういう意味では、紫にその呪詛が憑りついた直後だったら、ぼくも呪詛返しをしていただろう」


小笠原久光は空を見上げた。

飛行機が通過し、空には飛行機雲が見えた。


「でも、もう遅い。紫の中の自浄作用が働き、もう何度も呪詛を祓おうとしてしまった。その結果、紫の言霊使いの力の中に、呪詛はしっかり入り込んでしまった。そして紫の力はもう底をつきかけている」


そう言うと小笠原久光は、俺が飲み終えたオレンジジュースの入っていたプラスチックカップを持ち上げた。


中には細かい氷が残っていた。


小笠原久光はカップの蓋とストローを外した。


「このカップに紫の言霊使いの力が入っていたとする。そう、オレンジジュースが言霊使いの力だ。だが、オレンジジュースは侵入してきた呪詛を祓うために使われてしまった。見てみろ。もうオレンジジュースはない。かろうじて氷が残っているが、今の紫はまさにそんな状態だ。この状態で呪詛返しをするとどうなる?」


小笠原久光はコップを高く持ち上げ、そして勢いよくベンチに置いた。

その瞬間カップの中の氷は四方八方に飛び散った。


「もし呪詛返しをすれば、呪詛が紫の体を離れる瞬間に、残っていた彼女の力を吹き飛ばすことになる。それでなくても今、呪詛により紫は弱っている。その上で残りの力が吹き飛ばされたら……」


「分かった。分かったよ……。その言葉は口にしないでくれ」


「……」


「どのみち、お前でもどうにもできないんだな」


なんとなく、勝手な思い込みで、小笠原久光ならなんとかしてくれる、と思っていた。


だから俺はのんきにもこの屋上でサンドイッチを食べていたのだ。

俺の食欲は失せ、一気に気持ちが落ち込んだ。


「話というのは、最後まで聞くものだ」


俺は小笠原久光を見た。


「皮肉なことだ。歌詠みではなく、陰陽師であるぼくがこの方法を提案することになるとは」


小笠原久光はカップの蓋とストローを元に戻した。

そして元に戻したカップを俺に戻した。

戻す。

その言葉がぼんやりと俺の頭に浮かんだ。

すると小笠原久光はニヤリと笑い俺を見た。


「紫を救うには、戻すしかない」


本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


小笠原久光は一体何を湊に言おうとしているのでしょうか……?


それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう

良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。


それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!

明日、また続きをお楽しみください!

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