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完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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死のダメージ

蒼真の側に立った小笠原久光は


「六根清浄急急如律令」


そう言うと、右手の人差し指と中指で蒼真の体をすっと撫でた。


……何も起こらない⁇


呪詛返しに比べ、小笠原久光による祓いは味気ないもので、そして成功したのか失敗したのかが分からなかった。


だが。


突然、蒼真の父親が倒れた。


「……!」


俺が驚いて動こうとすると、小町が俺を止めた。


「くっ……」


「えっ⁉」


小笠原久光が苦しそうに胸を押さえた。


な、失敗したのか⁉

何が起きている⁉


俺が青ざめていると、蒼真の父親はみるみる間にしぼんでいき、そのサイズはどんどん小さくなった。スーツは溶けるように消え、その姿は完全に消失した。


俺は衝撃で固まり、そばにいた小町の手をぎゅっと握りしめていた。


「終わったぞ」


その声に小笠原久光の方を見ると、何事もなかったような顔で自身のスマホを操作していた。


「もう戻ってきていい。結界は……次で使うかもしれないからそのまま展開しておいてくれ」


そう言うとスマホをしまい、蒼真の様子を確認した。


「一体、何が……」


俺の言葉に小笠原久光は


「ま、皆が戻るまで時間があるから説明してやろう」


小笠原久光はそう言うと、ベッドの横の丸椅子に腰かけた。


「まず、蒼真に宿った呪詛だが、呪いそのものは人を死に至らしめる恐ろしいものだが、祓うのは簡単だった。なにせ祓ってもらわないとターゲットは死なないからな。だから呪詛は簡単に祓えた。


で、祓った後だが、ターゲットに死んでもらわないとこの呪詛は終わらない。だから式神を使った。さっき、蒼真のスマホで父親の写真を見て、思業式神しぎょうしきがみを作り出した」


「しぎょう式神?」


「はあ、これだから歌詠みの奴らは……。少しは陰陽道についても勉強してくれ……と思ったがお前はまだ四日目だったな。仕方ない。思業式神は術者の思念から生み出される式神だ。つまりぼくがイメージして作り出した式神さ。


ぼくが作った式神だから完璧だった……というのは冗談で、人避けの結界を展開していたから蒼真の父親と認識できるものはこの式神しかいなかった。呪詛は式神を蒼真の父と信じ、呪い殺した。以上だ」


「じゃあこれで蒼真も、もう大丈夫なんだな⁉」


「ああ。今はややこしくなるから寝かせたままにしているが……でもまあ、少し言霊使いに回復させるといいだろうな。蒼真は真面目な奴なんだろう? 真面目過ぎて苦しんでいた。こんなものに手を出すぐらいな」


小笠原久光が俺に透明な袋を投げてきた。

俺はそれを受け取り、中を見た。


「これは……」


「いわゆる違法薬物だろう。使ってはいないようだが、今の状態ではいつ穢れがついてもおかしくない」


歓楽街で見知らぬ男子と話していたあの時に、この薬を手に入れたのか……。


……蒼真は勉強もできるし、部活も頑張っていたし、見るからに優等生で何も問題ないように思えた。でも……悩みがあったんだ。


蒼真が回復したら律と三人で話そう。


俺は小町に頼み、薬を処分してもらった。


そこに白狐、黒狐、莉子が戻ってきた。


俺はここで行われたことを莉子先輩たちに話して聞かせた。


すると


「小笠原久光、蒼真から呪詛を祓ってくれてありがとう。それで君は大丈夫なのかい? 必要があればこちらの言霊使いに回復をさせるが?」


白狐がフワリと尻尾を揺らしながら、小笠原久光に尋ねた。


回復させる……?

小笠原久光は怪我をしているのか⁉


「その必要はない。まあ、ダメージは相応に来たが。次へ行こう」


小笠原久光はそう言うと既に歩き出していた。


「莉子先輩、どういうことですか?」


俺は莉子先輩と並んで歩きながら尋ねた。


「湊は思業式神のこと、知っているか?」


「さっき、小笠原久光が教えてくれました」


莉子先輩は「そうか」と言い、説明を始めた。


「思業式神を生み出す際、術者は自身の力を使っている。その思業式神が殺された、となると、そのダメージは当然術者に伝わる。湊、小笠原久光は一瞬でも苦しそうにしていなかったか?」


「そう言えば……短く声を出して、胸を押さえていました」


「うん、それだよ。小笠原久光は何事にも動じない。その彼が声を漏らし、胸を押さえた。言うまでもない、相当なダメージを食らったはずだ」


「……!」


「それに小笠原久光は既に空港で呪詛返しをしているんだ。呪詛を返すということは、呪詛をかけることの倍以上に力を使う。しかも道鏡の呪詛だ。それを返すということは想像以上の力を使ったはずだ。その上で死のダメージも受けた。だから白狐も気を使って尋ねたわけだ」


「……小笠原久光は大丈夫なんでしょうか?」


「大丈夫なんだろう。本人もそう言っている」


「でも強がって我慢しているとか……」


「あはは。それはないよ。小笠原久光だぞ。引き際はちゃんとわきまえている」


「つまり……」


「真に強い奴は無茶をしない。運でどうこうはしない。ちゃんと勝ち筋を捉えて、動いているんだよ、湊」


「なるほど……」


改めて小笠原久光のすごさを思い知らされた感じだった。


本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


律に続き、蒼真のことも救った小笠原久光。

次はいよいよ……。


それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう

良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。


それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!

明日、また続きをお楽しみください!

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