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完結●歌詠みと言霊使いのラブ&バトル  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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宣戦布告

空港に向かうため、小笠原久光が乗ってきたバンに、俺と莉子先輩も乗せてもらうことになった。そこに白狐が戻ってきた。


「蒼真は、呪魂と遭遇していたよ。四日前のことだ。理由は分からないが、県外にいて、その町を巡回していた言霊使いが少将クラスの呪魂を倒していた。その時に穢れを装った呪詛をかけられた可能性が高いね」


「かけられたんだよ」


助手席の小笠原久光はそう言うと、俺たちの方を見た。


「お前たちがやっている巡回や一斉の祓いの中止は要請済みだろうな?」


「空港周辺にいる歌詠みに、空港内で検知した穢れは祓わないように、加えて全員の歌詠みに対し、一時的に広範囲での一斉の祓いを中止するよう要請済だよ」


莉子先輩はそう言って黒狐の頭を撫でた。


……! 律と通話している時に黒狐と話していたのはこのことだったのか。


「……ふうーん。頭が回る歌詠みもいるんだな。お前、名前は?」


「わたしは、賀茂かもう 莉子りこ。十九歳の大学二年生だ。スリーサイズは上から九十二、六十……」


「岡田、あとどれぐらいで着く?」


小笠原久光は既に前を向き、バンを運転する岡田さんと話していた。


「ふう。取り付く島もないとは、こういうことを言うんだよ、湊」


莉子先輩が俺を見た。


……確かに。小笠原久光に比べれば紫のツンとした態度は可愛いものだった。


紫……。


今も紫は病院のベッドの中で、自分に憑りついた呪いを祓おうと戦っている……。


でも。

小笠原久光ならきっと紫を助けてくれる。

これだけの切れ者で知識もあるのだから……。


俺は小笠原久光の整った横顔を見つめた。



空港には驚異的な早さで到着できた。


なぜなら、小笠原久光が乗るバンの前に他の車が立ちふさがることがなかったのだ。


サイレンを鳴らすパトカーに先導されたわけではない。

だが、前方に車が、と思ったら、その車は車線変更をした。


こうして高速道路を飛ばした結果、予想以上の早さで空港に到着できた。


声は聞こえなかったが、おそらく、術を使っていた。


小笠原久光は、間違いなく最強の陰陽師だった。



「ここだな」


小笠原久光は迷うことなく律のいるトイレの個室に到着した。


莉子先輩はついてくることはできないので、俺が小笠原久光と一緒にトイレに入った。


トイレの入口には「清掃中。別のトイレをご利用ください」というスタンド看板が置かれていた。


俺たちがトイレに向かって歩いていると、いつの間にか清掃員が俺たちの後ろをついてきていた。そして小笠原久光がトイレに入ると、この看板を入口に置き、何事もなかったように去っていった。


小笠原久光が、邪魔が入らないよう、手を回したのだろう。


「律、鍵を開けろ」


小笠原久光が個室の前に行き、そう声をかけると、カタッと音がして、ドアが開いた。


俺は歌詠みの印に神経を集中し、そして律を見た。


「律……」


俺は愕然とした。

蒼真と同じだった。

穢れが律の全身を覆っていた。


だが、ここまでなるまで、なぜどの歌詠みもこの穢れを祓わなかったんだ……?


「湊、これは穢れを装った呪詛だ。穢れではない。条件が重なった時に、この穢れの状態を演出しているだけだ。つまり、近くに歌詠みが来た時にこの状態なり、その歌詠みに祓わせようとするわけだ」


心を読まれた……?


「陰陽師と言っても万能ではない。心なんて読めないよ。ただ、人より物事をよく観察しているだけだ」


小笠原久光はそう言うと、律を見た。


「さて。律。そのままそこに立っていてくれよ」


そう言うと小笠原久光は腕まくりをした。


……!


歌詠みの印に集中していた俺には、小笠原久光の両腕に沢山の紋様が刻まれているのが見えた。


歌詠みの印とは全く違う様々な刻印……。


「……律の呪詛をどうするんだ?」


俺は小笠原久光を見た。

祓うことはできないはずだ。


「まあ、祓うプランも考えたが、止めた」


「……⁉」


「ぼくはね、こーゆう卑怯なやり方は好まない。やるなら正々堂々やれと、宣戦布告することにした」


「それって……」


「湊、そこにそのままいるなら防御結界をはれ」


「防御結界……分かった。他の結界は?」


「空間なんちゃらと人避けなんちゃらか? それはいらない。ぼくがこれから使う力は局地的な一点集中の術だ。周囲の影響はない。湊の防御結界も念のためだけだ」


「分かった」


俺は頷くと風神と雷神を使う防御結界を展開した。


「ふうーん。四日目の歌詠みにしてはやるじゃないか」


小笠原久光がニヤッと笑った。


が、すぐに表情を引き締め。右手で律の肩を掴んだ。


小笠原久光の右手からは金色のオーラのようなものが出ていた。


穢れ……呪詛に触れても、呪詛は何も反応しないし、小笠原久光にも変化はなかった。


小笠原久光は左手の拳を握ると


りん びょう とう しゃ かい じん れつ ざい ぜん


そう言うと大きく息を吸い込み


「道鏡、ぼくからの宣戦布告だ――呪詛返し」


そう叫ぶと左手の拳を律のみぞおちに食らわせた。


その瞬間、小笠原久光の左腕のすべての刻印が様々な光を放った。


そして何かが破裂したような爆風が起きた。


防御結界にいたが、俺は後ろへ一歩後退せざるをえなかった。


だが。


すぐに風は収まり、律の体からは穢れ……呪詛は消えていた。


律は目を閉じ、小笠原久光にもたれるように倒れかかった。


俺は駆け寄り律の体を支えた。


「もう、律は大丈夫なのか?」


「ああ」


「みぞおちに結構な一撃を食らっていたけど……」


「律には影響ない。だが道鏡は……相当驚いただろうな」


そう言うと小笠原久光はくっくっと笑った。


本日公開分を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


小笠原久光の登場で、紫を救えると湊の心に希望の光が灯りました。


それでは明日も11時に公開となるため、迷子にならないよう

良かったらブックマーク登録をよろしくお願いいたします。


それでは午後もお仕事、勉強、頑張りましょう!

明日、また続きをお楽しみください!

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